クローズアップ現代

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No.33832013年7月23日(火)放送
検証“ネット選挙”

検証“ネット選挙”

“ネット選挙”解禁 政治はどう変わる

ゲスト山下和彦記者(経済部)

●無名に近かった人が、17万7,000票を獲得しましたが?

御厨さん:すごいですよね。
やっぱりこれ、3人見てて、この3人目の三宅さんというのは、やっぱり目線も、要するに相手方と同じ目線で、しかもそれに訴えかけて、彼らを引き込んでいこうっていう、そういう、何と言うかな、積極性があり、前のお二人は、結局ツールに使われちゃったっていうか、それで結局、感動を呼ばなかったんですね。
これだけの人数がね、やっぱ最後は参加するって、すごいことだと思いますね。
キャラがたってるという感じがするし、やっぱりちょっと、1世紀前の、われわれの世代から言うと、シンガーソングライター的な感じもあったりして、だから、古い世代にも、これ受けたでしょうし、新しい世代は、これはこれでという形で、なんか、すごい掘り起こしをやったなって感じがしますね。

●改めて、ネットのパワーというのを感じますね

佐藤さん:やっぱり、三宅さんの持ってるメッセージ、あるいは、そのライフスタイルというか、持ってるパーソナリティーみたいなものが、大変うまく調和して、特に、ネットを中心に使っている若い人に、すごい刺さったんだと思うんですね。
それが、より人々の共感を生んで、つながっていったということがあると思います。
今まで、どうしても政治と言うと、利益や、あるいは政策を中心に考えていこうというものがあったと思うんですけれども、今回、三宅さんの取り組みを見てると、共感と言うか、感情に訴える部分がかなりあると思いますので、そういう意味では、それが成功につながった理由じゃないかというふうに思っています。

●NHKが独自に分析したビッグデータ 三宅さんの場合

山下記者:そうですね、私たちはツイッターの分析とともに、ネット上のさまざまな動きを、この1か月、見続けてきました。
その中で最も目立った存在が、三宅洋平さんだったんです。




その三宅さんのツイッター分析の結果が、こちらです。
選挙期間中に、三宅さんが投稿した選挙関連のツイートは、978件。
1日あたり50件以上で、候補者全体の平均のおよそ5倍です。
また、投稿をほかの人が紹介する、リツイートの件数は3万4,000回。
これは、すべての候補者や党首の中で、最も多い数なんです。
投稿1件あたり、どれだけリツイートされたかを表した拡散力で見ますと、34.8になりまして、三宅さんのツイートは、平均30回以上、紹介されていたことになります。
こうした拡散が、さらに関心を呼び起こしまして、三宅さんのフォロワーは選挙期間中、1万8,000から、3万6,000へと倍増しました。
三宅さんは、こうしたネットの特性を生かして、多くの人にメッセージを届けていたことがデータから分かります。

●三宅さんの情報が、これほど広く速く拡散した理由は?

佐藤さん:そうですね、もちろん戦略的にリアルな活動、フェスのような活動と、ネットでの活動をうまく融合的にやったということ、あとはヴィジュアルイメージを大変重視した選挙戦を行いましたので、映像のクオリティーが大変高いということも大きな要因だと思います。
ですけども、それ以上に三宅さんの政治に対する態度であるとか、そういったものが既存の大手政党が、どうしてもよっている、なんか日本の政治文化みたいなものを大きく揺さぶるような、もっと若い人はそういう政治を求めているんじゃないんだ、ということを、うまく形にしたようなところがあって、そういったところのメッセージが若い人に受け入れられたんじゃないかなというふうに考えています。

●各党の党首の発信力の比較

山下記者:各党党首の拡散力を比較してみます。
こちらです。
最も大きいのは、共産党の志位さんで、234。
次いで、安倍総理大臣の195となっていまして、この2人が、ほかの人に比べて、ぬきんでています。
共産党の志位さんは、リツイートされた件数が非常に多く、組織をあげて情報の拡散に取り組んだことが、データからも見て取れます。
一方、安倍総理大臣は、リツイートの回数は志位さんに比べて少ないものの、15万のフォロワーを持っていますので、自分のメッセージを効率的に拡散することができたと言えます。

次に、政党別に党首と候補者の投稿件数を見てみます。
選挙期間中、共産党がほかの党を引き離しています。
ほとんどの候補者が、毎日かなりの件数を投稿し、全体を押し上げました。
それに比べまして、民主党や日本維新の会は、数多く投稿したのが、ネットを頼りにした一部の候補者に限られていまして、共産党に及びませんでした。
大勝した自民党も、投稿件数はそれほど多くありませんでした。

最後に、党首や候補者の投稿に、どのような単語が多く含まれていたのか見てみます。
円の大きさは、それぞれの単語が書き込まれた回数を表しています。
最も多かったのは、街頭演説。
このほか、応援や写真といった単語も目立ちます。
それに比べまして、政治課題に関する単語は、20位内に原発があるくらいなんです。
今回の選挙で、ツイッターの投稿は、政策の発信よりも、日程の告知や運動の紹介に利用されるケースが多かったことがうかがえます。

●今回のネット選挙が有権者に与えた影響を どう捉える?

徳橋記者:そうですね、NHKの出口調査を、まずご覧いただきたいと思うんですが、ネットによる選挙運動を投票の参考にしたかどうかを尋ねた結果です。





参考にしたと答えた人は、合わせて16%にとどまっているんですね。
投票率が低かったことと合わせまして、全体としては、ネット選挙が有権者の投票行動に与えた影響は限定的だったと言えます。




ただ年代別に見てみますと、こちらです。
20代で28%、そして、30代で23%の人が参考にしたと答えていまして、やはり若い世代ほど、ネット選挙を活用していたことが見て取れます。
今後、選挙を重ねていくことで、VTRにあったような選挙運動の手法が浸透していって、候補者も有権者も自分なりのやり方を身につけていけば、日本の選挙でネットの影響力は大きくなる可能性は十分にあると思います。

●なぜ政治家の中では、告知にとどまる“つぶやき”が多かったのか?

佐藤さん:まず、大前提として、ネット選挙が解禁になったことで、選挙期間中に、かなり政策論議が高まるんじゃないかという期待が、かなり高かったのも事実なんですけれども、一方で、日本の、特に参議院選挙は政党選挙ですので、政党と政党の戦いですので、政党の主張する政策というのは、あらかじめ決まっておりますので、そこを改めて候補者がアピールするというよりは、自分たちは特定の政党の候補者であるということを、声高に主張する期間が、むしろ選挙期間だということなんですね。
ですので、ある程度は、既存の候補者の選挙戦のスタイルからすると、そういった告知であるとか、街頭演説のことを、みんなにお知らせするといったのが中心になることは、やむをえないと思うんです。

●ビッグデータ活用した自民党 安倍総理大臣のフォロワーは15万人

御厨さん:15万人いるんですよね。
(積極的に発信を続けているねらいというのは、どうご覧になりますか?)
これはやっぱり、安倍さんは、前に内閣を率いたときに、やっぱり、その前の小泉さんがやったようにテレビに出てきて、一種のワンフレーズで、これでワンフレーズで世論を引き付けて、党内の反対派を抑えていく、みたいな手法を取ることができなかったんですね。
だから、彼はやっぱりテレビではだめだったけれども、やっぱりその間にずっと考えて、次はネットだと。
だから、このネットを使うことによって、彼自身が今言われてるのは、とにかく、自分でツイートしてるわけですね。
そこでいっぱい、自分の言いたいことを言って、それで、その15万人いる人たちの支持、これを引き付けて、これから恐らく、党内にもちろん、反対派が出るような政策課題をやっていかなくちゃいけない。
それを抑え込むためには、やっぱり、これだけの味方がいるんだってことを、彼としては示したい。
だから、小泉さんがテレビでやったことを、恐らく、安倍さんは、このネットでやろうとしているんだろうという感じがしますね。

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