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【いま読む日本国憲法】

(1)前文 はじめに非戦誓う 自民草案では「国家」前面に

 今、憲法が問われている。夏の参院選では、改憲問題が大きな焦点となる。安倍晋三首相らは改憲を訴えるが、憲法は本当に変える必要があるのか。守らなければならないものではないのか。施行から六十九年となる憲法を今こそ読み、主な条文の意味や価値を考えてみたい。

 戦争は国家権力が引き起こすもの。国民が主権を持って国家権力の暴走を抑えることで、戦争を二度と起こさせない−。

 日本国憲法全体を貫くこの思想を、最初にはっきりと宣言したのが前文です。第一段落の「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」「主権が国民に存することを宣言」というくだりに、端的に表現されています。多大な犠牲を生んだ先の大戦への反省が込められています。憲法によって権力を抑える「立憲主義」を言い表した文章とも言えます。

 第二段落の「日本国民は、恒久の平和を念願し」以下は、軍事的手段ではなく、諸国民を信頼することで自国の安全を保つという決意を示しています。戦争放棄や戦力不保持を定めた九条につながる考え方です。「全世界の国民」以下は、日本国民だけでなく人類全体に平和が保証されるべきだとうたっています。

 ちなみに憲法は連合国軍総司令部(GHQ)が起草(きそう)を進めたため、前文は英文を直訳したような表現が多いです。「そもそも国政は」以下は、十六代米大統領リンカーンの演説「人民の、人民による、人民のための政治」を引いたと言われます。

 自民党は前文を「翻訳調で違和感がある」「ユートピア的発想による自衛権の放棄」と批判。二〇一二年四月に決定した党の憲法改正草案(改憲草案)では全面的に書き換えました。

 草案には国民主権という言葉はありますが、政府が戦争を起こさないように国民が抑えるという考え方は見当たりません。諸国民への信頼によって安全を保つという決意も削られ、国民が国と郷土を自ら守ると定めています。

 現行憲法より短い割に、「国家」という言葉や、歴史・文化を誇る表現が目立ちます。総裁の安倍首相は前文について、敗戦国の「わび証文」のような宣言があると自著で評したことがあります。

◆自民党改憲草案の関連表記(抜粋)

 日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家。

 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。

 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

《用語解説》

協和=心を合わせて仲良くすること

恵沢=恩恵、喜ぶべきこと

主権=国家の意思を最終決定する最高権力

詔勅=天皇の出す公文書

隷従=服従すること

偏狭=偏った考えにとらわれ、度量が狭いこと

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