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第二十話 別荘
モンスター討伐を終えて街に戻ると、歓声に迎えられた。とはいっても、住んでいるのは百人かそこらであり、それほどの人数というわけでもないのだが。
そしてチトセたちは彼らに別れを告げて、バスによって少し離れたところにある別荘に向かう。
申し訳程度についている道。そしてそこを通り過ぎると、小さな湖が見えてきた。そして湖畔にはロッジというにはあまりにも大きすぎる建物。
そこでバスを止めて降りると、ヨウコとカナミが湖へと走っていく。
チトセは二人の様子を眺め、そしてアオイを見る。彼女はインベントリから鍵を取り出して見せる。
湖を覗き込んでいる二人に声を掛けて、ロッジの中に入る。
定期的に掃除など手入れをしてもらっているそうで、埃っぽさもなく、木造の家はどこか涼しささえ感じさせる。
一階は広いリビングに、風呂キッチンなど。そして二階に上がれば、寝室の他、いくつかの部屋。
そのどれもが一般家庭の数倍の広さがあるため、十人で生活したとしても十分だろう。
「ねえねえ、せっかくだから泳ごうよ!」
カナミは早速浮き輪などを取り出していく。
まだ暗くなるほど時間は経っていないから、それもいいかもしれない。
アオイによれば、この湖にはモンスターもいないため、泳ぐことも可能だそうだ。
チトセは彼女たちの水着姿を思い、妄想を膨らませた。
一緒に風呂に入ったとはいえ、さすがに着替えを一緒にするのは羞恥心もあるだろうということで、チトセは一人、別室にて着替えを済ませる。
ブーメラン型のをはくのもどうかと思ったので、ショートスパッツ型の、水泳の授業で使うような物を買ってある。長くだぼっとしたようなものも、ちゃらい気がしたのだ。
そして部屋を出て、サンダルを履きロッジを出る。
やはり男の方が着ている枚数が少ないこともあって、一番乗りであった。
砂浜のところに行き、ビーチパラソルを立て、テーブルといすを用意する。
そしてカナミの私物らしきいるか型の浮き輪に空気を入れていく。
「ご主人様ー、こっちにも入れて?」
真っ先に出てきたヨウコが、浮き輪を差し出してくる。ご主人様なら、普通立場としては逆じゃないのか。そんなことを思ったものの、目の前にいるのはただの幼女である。
チトセはそれを受け取りながら、空気を入れていく。
ヨウコは子供用の水着であり、胸もぺったんこである。チトセは見てもあまり楽しくないのだった。
そしてヨウコが浮き輪を抱えて湖に駆けていった頃、他の少女たちもやってくる。
「あ、チトセくん空気入れてくれたんだ。ありがとー!」
フリルの付いた可愛らしい水着を着たカナミが隣に来て、イルカの浮き輪を取っていく。あまり露出は多くないものの、健康的な腰回りは魅力的である。
そしてカナミの後を追っていくメイベル。
シンプルな水着であるが、その後ろ姿は引き締まった尻が見えて実に良い眺めである。
「チトセくん、変じゃないかな?」
煩悩に任せて行動していたチトセは、一瞬身を強張らせる。声を掛けてきたのはアリシア。
水色のビキニタイプの水着の上に、ワンピース。透けて肌が見えるのは、一層扇情的であった。
「ああ、似合ってるよ。アリシアはいつも可愛いな」
「ほんとほんと? 嬉しい」
でれっとしたアリシア。彼女は隣りに腰かけてチトセの手を取った。
それからアオイがナタリの手を取ってこちらに来る。アオイはパレオを付けており、とても上品な感じがする。均整のとれたスタイルは、見ているだけでぐっとくるものがある。
そして対照的に、ナタリはぽよんぽよんと揺れる立派な物を持っていた。気だるげな彼女も、あんな重いものを下げていたら疲れるのも仕方がないだろう。
チトセは勝手に納得しながら、ナタリを眺める。
見れば見るほど立派である。メロンというまではいかずとも、桃程度にはとどまらない。それでいて形も良く、張り艶も素晴らしい。
「……何?」
「ナタリは可愛いなーって。水着、似合ってるよ」
「ありがと」
彼女はそっぽを向く。
最近、ナタリはあまり蔑んだ目で見てくることはなくなった。それはそれで寂しくもあるが、少し顔を赤らめる彼女もまた素敵である。
それからリディアとエリカ、サツキが出て来る。
リディアの全裸は何度か見ているが、だからといって飽きることはない。美しい金の髪に彩られて、晒された素肌は一層美しさを増す。
そしてエリカは見事としか言いようのないプロポーションを誇っていた。面積の少ないビキニ。豊かな胸に、きゅっとしまった腰、長く伸びた手足。
(……これは文句の付けどころがないなあ)
チトセはじっくりと堪能する。
一方で、最後に出てきたサツキは何故かスクール水着を着ていた。
尋ねてみれば、どうやら伝統的な衣装らしい。おそらく、ゲーマーたちが根付かせたのだろう。
チトセはあまりそういった趣味はない。けれど比較的小柄なサツキはなんだかんだで似合っているのだから、それもいいかもしれない。
これほど多くの少女たちに囲まれているのは、なんと幸せなことだろうか。チトセはつい頬が緩む。
それからアリシアに手を引かれて、湖のところに行く。
波打ち際でちゃぷちゃぷと浮かんでいるヨウコとは対照的に、カナミとメイベルは競争しているらしく、こちらに全力で向かって来る。
互いに有り余っている体力を使うことができるから、いい関係なのかもしれない。
アリシアと手を繋いで二人が上がるのを待つ。
そしてカナミが先についた。
「やったー! 一番乗り!」
カナミが両手を伸ばして、勝利を宣言する。
途端、水着の紐がするりと解ける。そもそもレジャー用の水着で全力を出すのは無理があったのだろう。それに加えて、引っかかる部分が少ないためずれていったというのもあるのだろう。
小さな膨らみが、曝け出される。
その先端には、綺麗な色をした小振りな蕾。
チトセはじっくりとカナミを眺める。彼女もすぐにそれに気が付いて、顔を赤らめ両手で押さえた。
それから恥ずかしそうにチトセの方を見る。
「チトセくん、見たいの?」
隣のアリシアが、少し恥ずかしそうに、しかし確かな期待の籠った目で見てくる。
「見たくない男がいてたまるか」
「じゃあ――」
「いや、脱がなくていいから」
紐に手を掛けたアリシアを制止する。
見せてくれるのならありがたく見るが、それは変な雰囲気になってしまいそうだ。今はとりあえず皆で遊ぶのが良い。
チトセはビーチボールを取り出して、手持無沙汰にしているナタリの方に投げる。
ナタリはそれに気が付くと、軽く打ち返す。
トン、と軽い音がしてボールが浮くと共に、彼女の二つの果実がぷるんと揺れる。
そしてそれを見てメイベルが飛び込んできて、思い切り打ち込んでくる。
すっかり別のボールに気を取られていたチトセは、それを打ちかえすことができなかった。
それからビーチバレーをしたり、ビーチフラッグをしたりと、時間を過ごす。
日が沈み始めると、さすがに水着では冷えるということで、彼女たちは軽く上着を羽織る。
水着の上に着ていると分かっていても、隠されることで却ってちらちらと見える素肌が気になってしまう。
「チトセ様、そろそろお夕飯にしましょう」
少しぶかぶかのパーカーを着ているサツキが告げる。彼女はこういった簡素な私服を持っていなかったため、それはアオイのものである。
それは何だか可愛らしく、そして丈は股下数センチといったところなので、曝け出された素足が気になる。先ほどまでずっと見えていた部分なのだが、どうにも超ミニのワンピースのようにも思われて、何ともそそる格好である。
それからチトセは外でバーベキューをすることにした。
日が沈んでいく中、じゅうじゅうと肉が焼ける。
そして遊び疲れたカナミやメイベルは、実に美味しそうにそれを頬張る。
リディアはヨウコの身の回りの世話をしており、エリカもなぜかナタリの面倒を見ていた。ナタリはお疲れなのか、眠そうにしている。
「チトセ様、はい」
サツキが焼けた肉をあーん、と食べさせようとする。チトセはすっかり慣れたもので、恥ずかしがることなくそれを頂く。
嬉しそうにしているサツキを見て、チトセもまた、慕われる喜びを覚えていた。
そうしていると、その様子をアオイが見ていることに気が付く。サツキと上手くやっていることを、誰よりも喜んでいるのは彼女だろう。
チトセは彼女に微笑んだ。
食事を終えて風呂も済ませると、チトセは寝室で一人、のんびりと過ごしている。
彼女たちは皆、後から風呂に行ったため、そうなったのだ。一度とはいえ、一緒に入ったときのことを思うと少し寂しくもあったが、これが普通なのだろう。
それから暫くして、少女たちの声が階下から聞こえるようになってきた。恐らく、風呂から上がって、涼んでいるところなのだろう。
賑やかなその声を聞きながら、チトセはインベントリから一枚の紙を取り出した。それは婚姻届。そろそろ出すべきだよなあ、と思って貰ってきたものである。
この世界では男性一人をシェアするのが一般的であり、それを良しとするのが社会的、通俗的な観念である。
そのため、婚姻届には一人の男性に対して、複数名の女性の名前が書けるようになっている。女性が複数の男性と結婚する場合は、二枚に書けばよい、ということになる。
そうしていると、足音が聞こえてきたので、チトセはそれをインベントリに仕舞う。
そして扉が開くと、そこにはバスタオルを巻いただけの少女たちの姿。
ほんのりと上気した頬は艶めかしく、恥ずかしそうに俯く姿は堪らなく淫靡であった。
何も言えずにいると、アリシアがやってきて、チトセは押し倒された。
ベッドに沈みながら、彼女の重みを確かに感じる。
「アリシア……?」
彼女はいつもの少しふざけたような態度とは違った。
「チトセくんはこういうこと、するの嫌? 私たちは、ずっと、したいと思ってたよ」
少女たちに見守られながら、チトセは覚悟を決める。
彼女たちもまた、進展を望んでいたのだから。
「俺もずっと、そう思っていた」
アリシアはこの上なく幸せそうな笑みを浮かべて、抱き着いてくる。
チトセは彼女を抱きしめた。
ことが終わると、チトセはすっかり疲れてしまったので横になった。
そして自分が彼女たちと致したのだと思うと、喜びと共に責任感が起こってくる。
言うなら今しかなかった。
「あのさ……これ、君たちに書いて欲しいんだ」
チトセはインベントリから婚姻届を取り出す。そこにはチトセの名前が既に書かれている。
「チトセくん! だいすき!」
アリシアが飛び込んできて、すりすりと頬ずりする。
それから彼女はペンを取って、名前を書いた。それから次々と紙を回していく。
そしてそれがチトセの元に戻ってきたとき、そこには十の名前があった。
チトセ・スイメイキョウ
アリシア・キャロル
カナミ・セイリーン
ナタリ・アスター
アオイ・キサラギ
リディア・エイデル
メイベル・シトリン
エリカ・バークリー
サツキ・イザヨイ
ヨウコ・スイメイキョウ
「……ん!?」
チトセはもう一度上から眺めていく。
「ヨウコと結婚するのは無理だろ?」
「実はですね、戸籍を作ることができたので大丈夫なんですよ」
リディアがいつの間にか手続きを済ませていたらしい。
確かに生活していく上で戸籍がなければ不便もあるが、そこまで便宜を図って貰えていたとは。
「皆、これからも一緒にいてくれ。愛してる」
チトセは改めて、好意を口にする。
大切な少女たちを見て、口にせずにはいられなかった。
そしてそれぞれの思いが返ってくる。
チトセは、この世界での確かな居場所を手に入れた。
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