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爆竹を人に向かって投げる男

コラム コラム-エッセイ

爆竹に火をつけて人に向かって投げる男がいる。そいつは無表情のまま、そっと相手の背後に近づく。

おもむろにポケットに隠し持っていたライターを取り出し、爆竹に火をつけて何事もなかったように去っていく。爆竹の音で悲鳴をあげ、驚いている姿を遠くから見て楽しんでいる。

もちろん突然爆竹に火をつけて投げることだってしてしまう。そいつはいったい誰なのだろうか。

そんなことをしたら警察に捕まりそうなんだけどさ。合法的に正々堂々とやっていい日があるんだよ。むしろ見てくれよ。爆竹で驚かせるぞ! ぐらいの気持ちで爆竹に火をつけて投げている。

決してストレスで頭がおかしくなって、そんな行動をしているわけではない。大晦日から新年に変わった瞬間にね。横浜の中華街では爆竹投げが行われる。

いろんなところで爆竹がいっせいに投げられ、凄まじい音が鳴り響く。爆竹に火をつけて投げる人もいれば、爆竹の音に驚いて悲鳴をあげている人もいるんだよ。

それを見てゲラゲラ笑っている人もいる。この日に限って無礼講で爆竹投げが許されるのだ。中華街の爆竹投げに行ったことがあってね。

爆竹を買うことができず、ただ爆竹が鳴り響く光景を見るだけで終わってしまった年もある。何としても爆竹を買いたい。火をつけて投げたい。

そんな想いで爆竹投げが行われる日を待っていたのだ。友達と中華街の近くにあるコンビニで待ち合わせてさ。さり気なくコンビニ商品の中に爆竹が売られているのかを見たんだけど売っていない。

しかたなく中華街の中に入り歩いていると、ある店に爆竹が売られていた。みんなが狂ったように買い求めているんだ。

やばい! このままではビッグウェーブに乗ることができない。爆竹が売りきれてしまう。自分と友達は刑事のように走り、爆竹を手に取り買うことに成功したんだ。心の中で、

「これで爆竹が投げられる、すごく興奮してきた。フフフ……」 

なんて、変な武者震いしちゃったよ。そりゃそうだ! 普段なら人に向かって爆竹に火をつけて投げることも驚かせることも常識で考えればやってはいけない。

しかし、新年を迎えた瞬間、無礼講で爆竹に火をつけて投げることができる。驚かせることができるんだよ。

自分はポケットに爆竹を入れて、いかにも持っていないふりをしながら新年を迎えるのを待った。時刻を見ると3分少々で新年になる。

自分はごくりと唾を飲みこんだんだけどさ。ひたすら新年になるのを待ったんだ。中華街にはたくさん人が集まりだしている。あと、もう少しでいっせいに爆竹投げが行われる。

 「ハッピーニューイヤー」 

と、ひとりが叫んだと同時に次々と、

「ハッピーニューイヤー」 

とみんなが叫びだした。いっせいに爆竹が投げられ音が鳴り響く。その中にまざって自分も友達も爆竹に火をつけて投げていた。 

爆竹は凄まじい勢いで鳴り響く。自分はゲラゲラ笑いながら夢中で爆竹を投げた。 

【花火】爆竹20連10束入×10箱

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まっぷる 横浜 中華街・みなとみらい (まっぷるマガジン)

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