中学生の頃にドハマリしていた「エリーのアトリエ」というゲームの話をしたいと思う。
「エリーのアトリエ」はプレステのソフトとして1998年に発売されたRPGで、ざっくり言うと錬金術師の卵・エリーの錬金術アカデミー学生としての4年間を追体験する、といった内容のゲームだ。
冒険して素材を入手しアイテムを調合、そのアイテムを依頼主に届けてお金をゲットする、というようなことをひたすら繰り返しながら、アカデミー卒業を目指すといういわゆるお使いゲー。舞台となるのは城塞都市ザールブルグで、そこには中世ヨーロッパを思わせる世界観が広がっている。
地味なゲームだが、体験版をプレイして調合システムの虜になった私は梅田ヨドバシに出向いてまでベスト版を入手したのだった(中学生にとっては大変な遠出)。
早速プレイを開始、さあどんどん調合するぞと意気込むまではよかったが、調合レシピが載った教科書を買おうにも、街の外へ出かけるのに冒険者を雇おうにも、とにかくお金がなかった。
そこで目をつけたのが酒場で請け負うことのできる好事家たちからの依頼。通常の依頼と異なり具体的な品目が指定されていないのをいいことに、やりたい放題だった。
中でも役に立ったのは、病弱な娘を思う親(たぶん金持ち)からの「疲労回復の薬」を求める依頼。私はこの依頼に対して、近場で簡単に採取できるアイテム「へーベル湖の水」を納品したのだった。それも、依頼があるたび大量に。加えて「滋養強壮の薬」の依頼には、安価に購入できる「ほうれんそう」を横流しして利ざやを手にした。
通常なら錬金術で調合した何らかの薬品が求められるところに近場で汲んできた水を差し出すのだから、当然酒場のマスターからは嫌な顔をされるしいわんや依頼主をや、である。
途中からさすがに申し訳なくなって、娘さんの体調が少しでもよくなりますように…という願いを込めながら納品をしていたのだが、ゴミアイテムを押し付けること自体はやめなかった。
このゲームには戦闘能力や錬金術の腕前を表すパラメータのほかに、「名声」「人気」という、ザールブルグ内でのポジションを示すパラメータが存在する。
湖から汲んできた水を高値で押し付ける悪行を繰り返していた私の人気は地に落ち、ゲーム序盤にも関わらず気がついたときにはほとんど街の鼻つまみ者のような存在になってしまっていた。
アトリエ前に産業廃棄物を打ち捨てられるなどの嫌がらせを受け、よそ者とはいえひどい扱いだった(両パタメータの積によって起こるイベントのひとつ)。ま、中世の民度なんてこんなもんよねと気にもとめなかったが、街に出るたびに飛び交うウワサ話にアトリエのことが登場するたび、少しドキリとはしていたのだ。
見ず知らずの人間だらけの閉鎖空間で孤立した私は、心を許せる友人を求めた。
フローベル協会のシスターは善人然としていて詰まらないし、アカデミー受付のどんくさい美人も違うんだよなぁ…と思っていたところに現れたのが、アイゼル・ワイマールだった。アカデミー同期の彼女は中流貴族の出身で、高慢さがちらつく美しさが目にとまる勝気な15歳だった。「大人しくしているなら仲良くしてあげてもいいのよ」とかなんとか初対面でのたまい、シンデレラの姉よろしく意地悪地方貴族娘を地でいく感じなのだ。
アイゼルとどうにか仲良くなりたかった私は彼女のもとに足繁く通い冒険に誘い出し、交友値を上昇させようと躍起になった。
「…外に? 私が? 何であなたと?」
なかなか心を開こうとせず私のことを下民扱いしてくるところがこれまた良くて、私は加速度的に彼女に惹かれていったのだった。
後から知ったのだがアイゼルは全キャラクター中もっとも攻略が難しく、初期の交友値はMax50で(通常は100)、イベントをこなす中でふさわしい選択肢を選ばなければ彼女との友好関係は頭打ちになる仕様だった。お高い…。
そんな中、どうしてアイゼルが私に対してそこまで冷たい態度をとっていたのかが氷塊する出来事が起きる。
ある日アカデミー寮の彼女の部屋を訪ねると、いつもと違いおずおずとした様子でアイゼルは口を開いた。
「ねえ、あんまり大声では言えないんだけど…」
「あのね、実は私、今悩んでいるの」
「……その、私…、ノルディスのことが、す、好きなんだけど…」
「何度かノルディスに言おうとしたんだけど…どうしても告白出来なくて…。ねえ、どうしよう?」
ついに心を開いてくれたのね!?と嬉しくなり応援するコマンドを連打する私。
「あ、ありがとう!…何だかノルディスってどちらかというとあなたとばかり話しているような気がしたから…」
「私、ノルディスが何を考えているかよりあなたがどう思っているのかの方が気になっていたのよ」
「そうよね…。何だかもう胸がドキドキしてきたわ」
「ありがとう。私、ダメかもしれないけど告白してみるわ。…あなたに話してよかった。勇気が出てきた気がするわ」
私の本命はイケマッチョ王立騎士団員ダグラスなので男の棲み分けもできて丁度よかったわ、いよいよ女の友情に華が咲く楽しいザールブルグライフの幕開けねうふふ…と明るい心持ちでその日もヘーベル湖の水を汲み帰路についたのだった。
数日後、事の顛末が気になり彼女の部屋を訪ねた。私たちもう友達よね、とノリノリで話しかけたところ
「あんまり馴れ馴れしくしないでよね」
とのお返事。
多少仲良くなったところでベースの貴族根性はみじんも変わらないアイゼルが愛おしく、私はその後もせっせと交友値上げに勤しんだ。
後日山の向こうの港町カスターニェへの同行を拒まれた私は、アイゼルは他の街へは連れて行けないというデータ設定など知るよしもなく、何か条件があるはずと彼女を誘い続けているうちにアカデミー卒業のときがやってきて、見事「ザールブルグの嫌われ者」エンディングを迎えアトリエライフにピリオドを打ったのだった。
かようにプレイスタイルの広いアトリエシリーズ、ハマる人はかなりハマると思う。機会があれば遊んでみてね。
[参考]
・アトリエシリーズ - Wikipedia
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なおアトリエシリーズはBGMが非常にいいです。エリーだとおすすめはこのへん(↓) 試聴してみてね
・オルコットを読みながら
・街角錬金術師
・翔べないカモメの物語
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