検索流入を眺めていたら,「高専 理学部 編入」という検索ワードがちらほらと.
そうか,理学部の編入試験何気に近づいてきてますもんね.
そろそろ,危機感を感じ始めるころですな.おつかれさまです.
高専から大学に編入学するときって,だいたいは工学部に行くものなのですが,
まぁ,理学部でも編入学を募集しているところってわりとあって,
そういうところに入りたいときって,情報発信してる先輩が少なかったりで
けっこう困ったりすると思うんですよね(僕もそうだった).
今でこそ, twitterとかありますから,先輩探せばいないこともないんだと思うんですが,
せっかくなので,検索でも辿りつけるパブリックなところに
「僕が高専→東北大理学部数学科」というルートで「編入」をしたときに
いったいどういう勉強をしたのか? ということを書いてみたいと思います.
見出し
東北大の理学部数学科の編入試験
まず,東北大の理学部数学科は編入年次が2年次(通常は3年次)なので,
試験問題がなんかちょっと簡単でした.
科目は数学と英語. 数学は「頑張ればけっこういける」感じで,
(ただし,工学部では出題されない内容もいくつか出題されてました)
英語は「数学系の英文を訳するだけ」なので意外と簡単でした.
本格的な数学の勉強自体は,高専3年くらいからやってた
ふつう,高専から大学編入を狙う時の試験勉強というのは,
せいぜい高専3年後半〜4年前半くらいから始めれば十分間に合うのですが,
僕は高専3年前半で,とある先生からがっつり影響されて数学に興味を持ってたので,
「受験勉強!」とは特に思わずに,知らぬ間に編入試験に使える数学を学んでました.
そのとき読んでいたのが,「線形代数学大全」という本の1部と2部です.
「数学を頑張ろう!」と決意をして最初に読んだ本にしちゃ,少々難しかったんですが,
まぁ,この本をヒィヒィ言いながら読み進めたことが,今に繋がっている感じはあります.
線形代数の知識はもちろんですが,「数学の本を読むというのはどういうことか」というのも,
この本から教えてもらったと思います. 大変で辛いときもあるけど楽しいみたいな.
あ,あと,書籍出版まで出来たのはこの本のおかげだったと思います.
線形代数は,「理論を固める本」1冊と,ひたすら過去問
線形代数に関しては,「線形代数学大全」で学んだ理論の知識と,
過去問演習をひたすら繰り返すことにより何とかなった感じがあります.
ちなみに,「線形代数学大全」は分量も多く時間がかかるので,
基礎的な知識を絞ってきっちり身に着けたい方には,以下の本もおすすめです.
理学部の編入試験の線形代数で頻出の内容といえば,
- 固有値と固有ベクトル, 対角化
- 線形写像の像と核(の次元)
あたりが思い当たるのですが, ぶっちゃけ,過去問見てやりかた覚えれば得点はできます.
しかしながら,「理論の概要」をきちっとおさえているかどうかで,
答案の的確さが全然違ってきます.
理論をしっている人の答案って
「ちゃんと分かってる感」がものすごく出るもんなんですよ.
で,それが採点官の目に触れるので,ダイレクトに印象が良くなると思います.
なので,理学部受験する人は,必ず「理論をまず理解」して,その後に「過去問演習」.
過去問を解く際には,「バックグラウンド」を常に意識しながら解きましょう.
微分積分はマセマが意外といい
で,微分積分学については,高専の教科書+マセマの微分積分をとにかくまじめに読みました.
「なんだよマセマかよ」と思うかもしれませんが, マセマ侮っちゃダメ.
かなーり読み応えがあり,力も相当付きました.
で,あとは過去問演習. 重積分が出題される確率がかなり高いです.
以下の2冊の「編入試験対策本」もかなり役立つ
僕の母校の釧路高専の先生が編入試験対策本を出しているのですが,
これらもかなり役立ちました. 豊富な問題量と分かりやすい解説で,
「ダイレクトに編入試験につながる勉強」ができます.
過去問演習を再優先でやって,補充問題にこの本を使うと良いです.
あと,理学部数学科の「線形代数」に対応するためには,
これらの本だと少し内容が足りません.
なので,僕の著書の「線形空間論入門」の「線形写像」くらいまでを読んでもらえると,
理解が深まって良いのではないかと思います.
(ここだけの話,かなりこの本は理学部編入学を意識して書きました)
「写像」とか「集合」とか,高専ではあんまり教えてくれないんですよね.
だから,是非この本で補ってください(宣伝).
「定義」をとにかく大切に!!
数学をやるときにもっとも大切なのが「定義」です.
どんなものにでも「定義」があります.「定義」からすべてが始まります.
でも,かなりの割合の人が「定義」を蔑ろにしています.
「なんかしらないけど計算が出来ればいい」ならそれでもよいのですが,
少なくとも理学部数学科で「定義」を蔑ろにしていると,すぐに先生にバレます.
例えば,3本のベクトルが線形独立かどうかを判定する問題があったとして,
通常,高専などでは「ベクトルを縦に並べた行列式を計算→ノンゼロなら線形独立!」
と教わります.
しかしながら,これでは「線形独立,線形従属」を理解したことにはなりません.
この問題の核心には,線形関係式があるのです.
この「線形関係式」を満たす係数の組
のとき,
3本のベクトル は線形独立であるというのです.
これが,「定義」です. 「ベクトルが線形独立」であることの定義はこれ.
「ならべた行列式がノンゼロ」ではありません.
ではなぜ,ベクトルの組が「線形独立」であることは,
「ベクトルを縦にならべて行列式を計算してノンゼロかどうか」で判定できるのか?
それは,線形関係式が「ベクトルを縦にならべた行列」を係数行列として持つ
右辺がゼロで未知数 の連立方程式になり,
このような連立方程式は
「係数行列が正則ならば,自明解 しか持たない」という
性質を持つからなのです.
だから,「ベクトルを縦に並べた行列式を計算→ノンゼロ」を示せば,
係数行列が正則となり,ただちに が得られる,
ということなのです. ここまで分かって,初めて理解をしたことになります.
なんにしてもとにかく「定義」.「定義」をひたすら頭に入れましょう.
そして,困ったときにはとにかく「定義」を思い出しましょう.
英語は先生の横で過去問をひたすら訳しまくる
で,英語は先生の横でひたすら過去問の英文を翻訳しまくりました.
数学系の問題は,現れる言葉が限られるので,実はふつうの英語より楽です.
こればっかりはひたすら経験でしょう.
あと,これはさりげないコツですが,
数学の勉強をしているとき,ノート作るじゃないですか.
そのノートに「重要語句」が出てきた時,必ず横に「英訳を調べて書く」というのは
かなり効果がありました. 知らない間に数学用語の英訳を覚えられます.
「数学英語」と「数学」は連動させて時短しちゃいましょう.
こんな感じで勉強しまくってました
こんな感じで,ひたすら勉強をしまくってました.
研究室とかでも,編入試験をかなり考慮してくれていたので,
学校でも家でも,ひたすら勉強,勉強…
1日多分,7〜8時間くらいやってたと思います.
まぁでも,普通の大学受験生は平気でもっとやってると思う.
「先生にくっつく」のはすごく大事
あと,すごく大切なのは「面倒見てもらう先生」をひとり決めて,
ひたすらその先生にくっついて,勉強をしまくるということ.
これをやっていた学生は,合格してる率高かったような気がする.
んで,試験当日は体調を万全にして,受けたらなんとか受かりました.
編入試験は運みたいなのも大きい(やっぱり,出題内容はランダムだから)のだけど,
やったらやった分だけ報われる部分も大きくて,やりがいがありました.
あと,やっぱり「入ったあとにダイレクトに役立つ内容」だから編入試験はオトク.
高専→理学部編入 を狙っている学生さん, よかったら参考にして頑張ってくださいね.
(質問があったら連絡いただければ答えられる範囲で答えます)