学んでおくと何かと役立つ学問分野
どんな分野で仕事をしていても、研究していても「他の分野の壁」というものに必ずぶつかります。ぶつかったとき、「ここからは自分の担当分野ではない」と逃げてしまうのか、「ここからはあの分野を応用すればわかりそう!」とチャレンジできるか、という選択の違いで結構変わるものです。
具体的には、「他分野の表面情報だけでも追っておける」ということで、これができるかどうかの違いがそのまま情報収集の量、質の両面へ影響を及ぼします。
ということで、まだまだ僕も勉強中ですが、「概論だけでも知っておいたほうが役立つ学問分野」を少しばかり紹介します。
「概論だけでも知っておくべき学問分野」
あくまでも主観ですが、選んだ理由は明記します。決してほかの学問分野やその下層の分野が「必要ない」というわけではありません。
(1)哲学
哲学はこれといって「どこに役立つのか?」がほぼ見えない学問です。かといって、宗教のように、ここぞというときに救ってくれるわけでもありません。しかし、究極的に自分が迷ったときの行動基準としては、哲学者の言葉が最もふさわしいと思います。
(2)心理学
心理学は、臨床、行動、知覚、学習、認知、知能、性格、発達心理学と様々な分野がありますし、応用分野としては、教育、犯罪、社会心理学などもあります。
範囲が広いので、すべてを包括的に学ぶことは不可能ですが、範囲が広い分、「自分に一番関係がありそうなところ」を選んで学ぶと、論文や仕事にそのまま使うことができなくても、その意味付けや理由、根拠を示す際に有効な情報が得られる確率が上がります。
(3)経済学
いわゆる「文系」の方は、社会科学の中でも経済学に関する意識の有無は明暗がはっきり分かれている分野ではないでしょうか?
理論モデルを学ぶ学問は、本腰を入れるときにするとして、経済学を知るという目的でいえば、「経済史」「世界史」などと一緒に「世界と経済の関係」を学ぶような形で勉強するのがお勧めです。
たとえば「1970年代のスタグフレーションの時代はハイエクやフリードマンが~」のような学び方です。
(4)社会学
社会学は、心理学と同じくらい範囲が広く、中心となる理論があるのかないのかわからない広い学問です(だと僕は感じています)
たとえば、ジェンダー、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトというものは社会学で頻繁に使われます。メディア、社会福祉、地域社会など、様々な観点でそれぞれ社会学の知識は応用され続けているので、自分の関心のある分野から、社会学的なアプローチがとられているのかを探すところから始めましょう。
また、絶対に読んでおくべきなのは、マックス・ウェーバーの『プロテスタントの倫理と資本主義の精神』です。
(5)物理学
たとえば、ヒッグス粒子の発見や、量子コンピュータの話題など、ありとあらゆるところで物理に関する情報は多いです。しかし、ほとんどは情報源を含めて難解であり、専門家の方々の解説を理解するのがやっとです。
しかし、「系譜」をしっておくとそういった話(専門家の解説)を聞くときにとても楽になります。具体的には、古典力学と量子力学の違いや、アインシュタインの「相対性理論」がその後の研究に与えた影響を知るだけでも、「あ、じゃあ大体今の新発見はこのくらいのフェイズなのね」と感覚でつかめるようになります。
(6)生物学
18~19世紀の西欧は、「博物学」の全盛期で、ダーウィンの「進化論」で頂点まで行きました。この進化論は、社会思想の分野でスペンサーが「社会進化論」を唱える根拠になるなど、社会科学と自然科学の垣根を超えて影響を与えました。
それ以降、この博物学には、顕微鏡の発明や、戦時中の物理、化学の発展によって進展し、生物学となります。最近は、バイオテクノロジーや遺伝子工学などの発展過程で、臓器移植や体外受精など倫理的な問題をはらむ課題に立たされているのが現代社会といえます。
そんなときこそ、生物学の発展の「歴史」を知っておくことや、生物学が生物学となり、どのように分化していったのかを知っておくことで、今の課題の解決策も見えてくるのではないでしょうか。(類比的な意味で)
「学問の系譜」を体系化しておくだけでもいい
その分野のプロフェッショナルになるならば、すべてを覚えて応用できるレベルにならないといけません。しかし、メインの担当分野ではないけれど、知っておくべきだなと感じたら、難しい専門書から入るのではなく「図で分かる」や「専門用語をなるべく避けて~」といった入門書や、概説書に触れるだけでも効果があります。
もし、その入門や概説程度の情報しかもっていなかったとしても、「とっかかり」になるのです。「そういえばあの分野のあの本にこんなこと書いてあったな…使えるかもな…」と思うタイミングがあれば、こちらの勝ちです。その「勝ち」はまさしく「教養の価値」といえるのではないでしょうか。
特に、根拠を求める人や、説明や具体例を求める際にうってつけなのが今回ご紹介した学問と学ぶ方法です。中身の詳しい理論モデルや数式がわからなくても、系譜をたどるだけで効果があります。
あとは自分のアナロジカルな思考と、あとから情報の引き出しを開けることができるような体制を整えておくことが重要です。