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【神奈川】

9条とあゆむ(中) 平和願うデモに飛び込む

愛用のギターを持つエドワード・ライル・マースデンさん。胸には憲法9条を示すバッジ=川崎市多摩区で

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◆川崎市英会話講師・エドワード・ライル・マースデンさん(25)

 日本で英会話教室の講師をするため二〇一四年に来日した。一五年六月、東京・渋谷でデモに遭遇。安全保障関連法案に反対する若者たちだった。

 「NOT WAR(戦争はしない)」「LOVE」…。そうした英文のプラカードを見て平和を願うデモと分かり、その場で合流した。

 「正しいことをする集団の一員になること、そのパワーが好きだ」。争いを好まず、英国にいた〇三年にも、イラク戦争派兵に反対するデモに両親と参加した。

 高校の歴史で日本の平和憲法を学び、日本は「英国と対極のピースフル・カントリー(平和な国)」と憧れた。英国のニューカッスル大学で言語学を学び、交換留学で日本とも関わりが深いオランダ・ライデン大学へ。そして日本で英会話講師となった。

 日本で平和を願うデモに足を運ぶのは、参加者が外国人の自分を見て「平和への願いは世界に共通する」と笑顔になってくれるから。勇気づけている実感があるという。

 昨年八月、国会前で、憲法九条を守ろうとする人々のデモに参加して新たに覚えた日本語がある。安全保障関連法案の成立に向かって突き進む安倍晋三政権の動きに「ノー」の意思表示をする、「やめろ」という言葉だ。日本語はまだまだだが、「やめろ」コールは覚えた。法案が成立した九月十九日も国会前で、同僚と憤りを共有した。

 川崎市内の英会話教室で教えているが、日本人の生徒から逆に教わることもある。安倍政権や軍需産業の関係者だけではなく、一般の国民の中にも九条を変えたいと考える人たちがいると聞き、驚いた。

 「九条を守りたい人たちを『他国の脅威があるのに平和ぼけだ』と批判する人がいる」と、同僚から聞かされた。そのとき頭をよぎったのが、ギターを弾きながら歌うこともある故ジョン・レノン氏の「イマジン」。

 その歌詞は、戦争のない平和を願う私を「夢を見ている」と言うかもしれないが、こう願うのは私一人じゃない、というもの。それを踏まえ、九条で平和を守ることを「夢を見ている」と人は言うかもしれないが、そう願うのは自分一人ではない、と考える。

 国際紛争を武力ではなく交渉で解決に導こうとする「ピースフル・アプローチ」か、武力で押さえ込む「ファイティング・アプローチ」か。「世界の人々の多くはピースフル・アプローチを求めるでしょう」

 いつか世界を巡り経験を積みたいと考える。「そのとき各地で、僕の好きな日本にはモダン(現代的)で敬愛できる九条があると伝えたい」。これからも、平和を願うデモがあれば参加したいと思っている。

  (山本哲正)

 

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