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真顔日記

三十六歳女性の家に住みついた男の日記

雨の連休は、文豪でドラクエのパーティを組む

上田の日常と妄想

本日の京都は雨。

それで思い出したんだが、昔、唐突な雨に降られてカバンが濡れたことがあった。カバンには黒のメガネケースと夢野久作の『ドグラマグラ』(角川文庫)を入れていたんだが、染み込んだ雨水でメガネケースの合皮が剥がれ、本の表紙に貼りついてしまっていた。

あれは最悪だった。

というのは、ドグラマグラという文字が「ドグラマ」になっていたのである。ベギラマの出来損ないみたいなタイトルになっていたのである。指でカリカリこすって落としたものだ。本当に最悪だった。あの事件からしばらく、ドグラマグラという文字を見るたびにドラクエのベギラマを連想していたし。

余談だが、夢野久作はドラクエだったら絶対に魔法使いである。やたらとMPがある。無尽蔵である。派手な呪文もたくさん使えるし、ドグラマどころか、ドグラゴンすら使えるかもしれない。しかしHPは低いから、殴られるとすぐ死ぬ。

夢野久作は後列に置いたほうがいいだろう。

 

夢野久作 (文藝別冊)

典型的な魔法使い顔である。絶対に勇者ではない。

しかし小説家というのは、どれも魔法使いみたいなものかもしれない。今、夢野久作を後列に置くなら誰を前列に置けばいいのかと考えていたんだが、とくに思いつく名前がなかった。三島由紀夫だろうか。

三島由紀夫の見た目には、たしかに武闘家っぽさがあるが、生まれついての肉体派という感じではない。あれはあくまで後天的な筋肉だろう。魔法使いから武闘家に転職した感じと言えばいいだろうか。ダーマの神殿で武闘家に転職し、ちからの種をバクバク食べて、無理やり筋肉を手に入れた男、それが三島由紀夫である。

なんだか、だんだんどうでもいい話になってきた。いや、私の書く話は基本的にどうでもいい話ばかりな気もするが、それにしても、この流れのどうでもよさは我ながら凄い。三島由紀夫がちからの種を食べているから何なのか。食べてないし。

昔の小説家というのは大抵ジジイだから、魔法使いに見えてしまうのかもしれない。もちろん、年を取ってからの写真が後世に残っているだけなんだが、どうしてもイメージはジジイになる。

たとえばトルストイなど、完全に魔法使いである。むしろ大魔道士とすら呼びたいほどだ。絶対にレベル75はある。

 

Complete Works of Leo Tolstoy (Delphi Classics) (English Edition)

マヒャドとか使いそうだ。ロシア寒いし。

ガリガリでひげもじゃの小説家が多いのが問題なのかもしれない。ドストエフスキーなんかも大魔道士に見えるし、探しても探しても後列のコマばかり増えてしまう。もう魔法使いはいらん。あんなものはパーティに一人いれば十分だし、魔法使いしかいないパーティなど、とても長い冒険を乗り越えられるものではない。

そう思っていたら、バルザックの画像を見つけた。

 

Collected Works of Honore de Balzac with the Complete Human Comedy (Delphi Classics) (English Edition)

素晴らしい戦士っぽさだった。

こいつなら前列を任せられる、とはじめて思えた。しかも三島由紀夫のような、ちからの種でドーピングした雰囲気もない。根っからの戦士であり、はがねの剣と鉄の鎧がものすごく似合うはずだ。バルザックを先頭に置こう。次に三島由紀夫を置いて、それから夢野久作で、最後はトルストイ。

これでバランスの取れたパーティになる。

ちなみに馬車にはプルーストがいる。

 

Delphi Complete Works of Marcel Proust (Illustrated) (English Edition)

こいつは補助魔法ばかり使う。

とにかく敵を弱体化させようとするタイプの男である。マヌーサで命中力を下げ、ルカニで防御力を下げ、ボミオスですばやさを下げ、さらにバイキルトとスカラでこちらの能力を限界まで上げてから、ようやく攻撃しはじめる。味方ですら引くほどの性格の悪さである。ねちねちねちねち補助魔法をかける。

それにしても、この話は本当にどうでもいい。過去に類例のないほどにどうでもいいし、連休なのに他にやることないのかと思われても仕方がない。まあ私の場合、そもそも連休など関係のない生活だから、普段からこんなことばかり考えているわけではあるが。

雨の連休に、文豪でドラクエのパーティを組む。金のかからない遊びとは言える。ここまで費用は0円だし、今後も1円も発生する予定はない。みなさんもやってみればよろしい。自分のしていることを冷静に振り返らないなら、えんえん楽しめる。

最後にもう一人だけ。

旅の途中まで、馬車にはプラトンもいたんだが、こいつは中ボスに石化させられて死んだ。

 

Six Great Dialogues: Apology, Crito, Phaedo, Phaedrus, Symposium, The Republic (Dover Thrift Editions)

くだらないですね。

小人閑居して、クソしょうもないことを考える。

不善をなすよりはいいかもしれません。

みなさんもやりましょう。