暴行被害男性「社会を壊す」
今年3月、川崎市川崎区のJR川崎駅前で、特定の民族への差別を扇動するヘイトスピーチに口頭で抗議していて襲われ、けがをした東京都内の男性(46)が毎日新聞の取材に応じた。首にコルセットを装着し、「痛みが続く」と話す男性は人種差別的な言動が白昼堂々と行われていることに対して「社会を壊すものだ」と訴え、ヘイトスピーチ対策の法整備の必要性を強調した。
男性は約1年前からヘイトスピーチに抗議する活動に参加している。3月20日の日曜日、ネットでそうした言動をする団体の集会があることを知り、JR川崎駅前に向かった。政治団体の街宣車を使った演説を道路を挟んで反対側の歩道で聴いていると、登壇者の一人が「今からヘイトスピーチをします」と言い始めた。
男性らがハンドマイクを使い、「ヘイトスピーチやめとけ。デマを流すな」などと抗議の声を上げたところ、街宣の参加者とみられる男らに突然襲われたという。顔や腹を殴られた男性は警備の警官に被害を訴えたが、警官は男らを男性から引き離すだけだったという。
男性は「後の世代にヘイトスピーチを聞かせないようにしたい」と語る。
神奈川県警は同月、右翼団体構成員4人を傷害容疑で逮捕。横浜区検は4月15日、4人を暴行罪で略式起訴した。横浜簡裁は同日、それぞれ罰金20万円の略式命令を出した。
ヘイトスピーチをめぐっては、自民・公明両党が4月、対策法案を提出。与野党で協議が続いている。一方、国連人権理事会が特別報告者に任命したデビッド・ケイ米カリフォルニア大教授は同月、日本の人権状況を調査した中で、雇用や住居に関する人種差別を禁止する法制定を急ぐべきだと主張した。【後藤由耶】