毎日新聞は主要121社を対象に働き方改革に関するアンケートを実施した。それによると、在宅勤務について「導入している・導入を決めている」と回答したのは48%(58社)とほぼ半数に上った。「検討している」の25%(30社)と合わせて7割を超える。実施企業からは子育てや介護中の社員の意欲向上や離職防止に役立っているとの意見が出ている。
政府は「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)の観点から在宅勤務の拡大を目指しており、昨年6月には、在宅勤務の導入企業の割合を2020年度には12年度(11.5%)の3倍にするとの方針を閣議決定している。主要企業では既に政府目標の水準を超えていることがうかがえる。
住友化学は「育児、介護で短時間勤務を行っていた社員が、在宅勤務でフルタイムで働くなど、就業機会の拡大につながっている」と評価。導入を検討中の企業の多くも「通勤時間の削減による効率の改善」「交通費やオフィス代のコスト削減」など企業と社員の双方への利点を期待している。
ただ、多くの企業が社員の労働時間の管理の難しさを課題として指摘し、「在宅勤務の始業と終業時にメールで上司に報告する」(金融)などの解決策を検討している企業もある。
一方、政府が実現に向け検討している「同一労働同一賃金」については「定義があいまいだ」(製薬)などとして賛否を明らかにしたのは12%(14社)にとどまった。政府は正規と非正規社員の待遇差を縮め、賃金の底上げを図る狙いだが、「責任の重さや経験の差をどう数値化していくのか」(鉄鋼)などと、政府側の議論を見極めたいとする企業が多かった。【熊谷豪】