Posted May. 03, 2016 07:32,
Updated May. 03, 2016 07:50
神奈川県川崎市の「ふれあい館」で最近会った在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さん(43)は、「今でもデモ隊と対立した踏切に立つと思わず涙が出る」と目に涙を浮かべた。
ふれあい館は、「気の合う場所」という意味で、在日人権運動家の故李仁夏(イ・インハ)牧師が主導して1988年につくった多文化福祉施設だ。職員の崔さんは、デモ隊が昨年11月と今年1月、コリアンタウンに進入しようとした時、全身で阻止した。当時の緊迫した状況を3月22日、国会で証言した。
首都圏の工業都市である川崎市で嫌韓デモが始まったのは2013年。植民地時代に韓半島から渡ってきた彼らが定着したコリアンタウンがあるからだった。今でも地域住民の20%が韓国にルーツを持つ人々だ。
崔さんは、「デモを駅付近でした時は避けて通れたが、昨年11月にデモ隊がコリアンタウンへの進入を図り、避けることができなくなった」と話した。東京の韓流タウンの新大久保に代わって、川崎のコリアタウンがヘイトデモの新しいターゲットになったのだ。
ヘイトデモの言動は想像を超えた。「韓国は敵国だ」、「朝鮮人を殺そう」という言葉もはばからなかった。在日コリアンのハルモニは、「人生をすべて否定された」と涙を流した。崔さんは「悪夢のような時間」と体を震わせた。
15人余りのデモ隊は、数百人の警官と共にコリアタウン入口に到着した。彼らに反対する「カウンターデモ隊」と住民150人余りが制止し、混乱の末、デモ隊は進路を変えた。今年1月には、デモ隊約60人が再び進入を試み、住民とカウンターデモ隊が腕組みをして道に塞いで阻止した。在日コリアンの学生たちは、「正義の味方」だと思った警察がデモ隊を護衛したのを見て衝撃を受けたという。
在日コリアンは市に対策を求めたが、「根拠となる法がない」という返事だけだった。崔さんらが団体を組織し、署名を集めて奔走したことで、嫌韓デモは日本社会の争点に浮上した。国会議員が川崎を訪れ、与野党は今月中に国会でヘイトトスピーチ禁止法を通過させることを明らかにした。しかし、ヘイトスピーチを「不法」とし、これを「禁止する」という内容がなく、処罰の規定もなかった。