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【首都スポ】

藤岡麻菜美生き残る 筑波大出身女子バスケ

2016年5月3日 紙面から

リオ五輪に向けて気合が入るバスケットボール女子日本代表候補の藤岡麻菜美=東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで(岩本旭人撮影)

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 バスケットボール女子で、昨年度に筑波大を大学日本一に導き、今年3月、日本代表候補に初選出された藤岡麻菜美(22)=JX−ENEOS。メンバー発表時はまだ筑波大に在学中で、五輪を目前に控えた日本代表候補に大学生が選ばれたのは、女子では初めてのことだった。大学時代の故障、病気を乗り越えて最終メンバーに残り、本大会出場を狙っている。 (藤本敏和)

 4月11日に行われたバスケットボール女子日本代表候補の公開練習。日本バスケットボール史上最多という100人以上の報道陣が詰め掛けた体育館に、たったひとりの初選出がいた。筑波大を卒業したばかりの藤岡麻菜美だ。

 「ミーティングから五輪ではどうする、という具体的な作戦と対策ばかりで、本当にこのチームが五輪へ行くんだ、というのがはっきり伝わってきて圧倒されます。東京五輪は目指していたんですが、リオ五輪の代表候補に選んでもらえるとは思っていませんでした。しかも18人しか選ばれていなくて、本当にびっくりしましたけど、すごくうれしいです」

 現在、この女子日本代表は高い注目を集めている。吉田亜沙美と渡嘉敷来夢(ともにJX−ENEOS)を両輪としたチームは2013年、15年とアジア選手権を連覇し、早々に五輪出場権を獲得。1996年アテネ五輪は同選手権3位で出場権を獲得し、本大会は7位、04年北京五輪は世界最終予選で出場権を獲得し同10位。現実的には入賞が目標だった両五輪とは異なり、メダルが視界に入ってきた“日本史上最強チーム”だからだ。当然、代表候補のメンバー構成も本気だ。昨年のアジア選手権優勝メンバー12人全員に加えて招集されたのは6人だけ。うち5人は代表経験がある。それが逆に、大学生ながら初選出された藤岡への期待を表している。

 それだけの実績も残してきた。昨夏はユニバーシアード代表の司令塔として活躍。準決勝で米国と再延長までもつれる激戦を演じた末、史上最高の4位入賞に大きく貢献した。そして筑波大では、昨年11月の全日本大学選手権(インカレ)を制覇。名実ともに若手最高のポイントガードとなっている。

 ここまでの道のりは、試練の連続だった。筑波大では1年からチームの主力となったが、2年の夏に行われたU−19世界選手権で腰椎分離症を起こした。完治が難しいけがで、1年以上も満足のいくプレーができなかった。4年になった昨年にようやく復調し、ユニバで全試合に先発。だが、大学へ戻ると体調不良が続く。不整脈だと判明したのは10月。すぐに心臓へカテーテルを入れる緊急手術を受けた。インカレ開幕は医師から運動再開の許可が下りてわずか3日後、インカレ優勝と大会MVPを勝ち取った。

 不整脈はなかなか完治せず、その後2回も心臓にカテーテルを入れた。本人は「3回もやったのでもう慣れました」と笑うが、ひとつ間違うと心臓を傷つける可能性のある手術。かなりの痛みがともない、不安も大きかった。

 だが、年が変わって3月1日に受けた最後の手術で、症状もようやく収まった。代表候補合宿開始とともに、腰にも、心臓にも、不安のない状態でのプレーができている。「よかったです。3月の手術は初めてシーズンオフに受けた手術で、やっと段階を踏んでリハビリしていくこともできました」。今、万全の体調で五輪メンバー入りに挑んでいる。今春からリーグ戦8連覇の女王JX−ENEOSに加入した。大きな動機となったのが、代表でも主将を務める、同じポイントガードの吉田の存在だ。

 「高校でも大学でも1年から主力として出してもらえて、自分より明らかに上、という選手と一緒にプレーした経験がないんです。間近で見て学びたいと思っています」

 課題のロングシュートも身に付け、いつか吉田を乗り越えるのが目標だ。ただ、リオ五輪までに、というのは現実的ではない。12人の最終メンバーに入るためには、吉田のバックアップとしてどういうプレーができるかにかかっている。

 「インサイドへ切り込んでいっての自分での得点、そこからのパス、といったプレーが持ち味なので、そこを出していきたいです。同じパスでも、吉田さんは裏(逆サイド)へ通すことが多いですが、私はもっと近いところで渡すタイプ。そういったところでメリハリをつけられたら」と、藤岡は分析する。女子日本代表の内海知秀監督も「藤岡は能力があることは間違いない。あとは代表メンバーとのコンビネーションや、海外の選手たちを相手にどれだけできるか」と期待を寄せた。

 「合宿の最初はめちゃくちゃ緊張しましたし、実業団を経験していないので『私でいいの?』という気持ちもあるんですが(笑)。チャンスをもらえた以上、やっぱり五輪は出たい。できる限りのことをしたいと思います」。まずは7日に開幕する国際大会出場が最初の目標。体調不良を乗り越えて、たくましく、強くなった22歳は、リオ五輪へ照準を合わせている。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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