企業用ソフトウエア世界第2位のドイツ企業、SAPは11年から全てのソフトウエアをビッグデータ処理技術「HANA」のプラットフォーム上で作成している。この技術は従来のハードディスクドライブ(HDD)よりも読み書き速度が数百倍速い半導体メモリに大半のデータを乗せて処理する。おかげで、以前は想像もできなかったようなスピードで大容量のデータを処理することが可能になった。SAPが昨年「HANA」を適用したビッグデータ処理用ソフトウエアで稼いだ金額は10億ユーロ(約1300億円)を超える。SAPにこのように大きな利益をもたらした技術も、元はといえば韓国で生まれたものだ。2000年にソウル大のチャ・サンギュン教授が、研究室の大学院生らと共同でデータベース(DB)処理技術を研究する過程で、この技術を開発したのだ。
■すぐに利益が出ないものには関心がない韓国
「HANA」の技術も初めからSAPの手に渡ったわけではない。チャ教授は当時、この技術を韓国で常用化しようとさまざまな努力を重ねた。韓国の大企業への接触を試みたり、自らスタートアップ(起業したばかりの企業)を立ち上げたりした。チャ教授は「当時、韓国ではITブームが起きていたが、みな即座にカネになる技術にしか関心がなかった」「『HANA』 のようなソフトウエア技術に興味を示す投資家や企業はなかった」と話した。
結局チャ教授たちは2002年、韓国を離れて米国シリコンバレーへと移った。そこでSAPに出会った。SAPは韓国からやって来た見慣れない技術に期待以上の関心を示した。近い将来ビッグデータ時代が幕を開ければ、既存の技術よりはるかに高速なデータ処理技術が必要となることを、同社は予測していたのだ。結局、チャ教授の開発した技術はSAPに売却された。
世界最大級の石油企業の一つ、フランスのトタル社が活用する最先端の地下油田探査技術も、韓国で生まれたものの残念ながら自国で確保できなかった技術だ。この技術はソウル大のシン・チャンス教授チームが08年に開発した。地価に埋蔵されている原油を、地震波を利用して探知するもので、同様の原理を利用した従来の技術よりも解像度がはるかに高く、油田探査の成功率を大幅にアップさせた。