12/164
十一話 初討伐
パスタを食べる夢から覚め、そういえば麺類も食べたいと渇望しながら目が覚めた。
今日は遂に奴を、あの憎っくきスライムを討つ時が来たのだ!
まあ、討伐予定では有るが気持ちは大事だろう。
早速、朝飯を取り身支度を整える。
マジックバッグから総ルーンメタル製の、投げ槍を取り出し点検をする。鉄より重い鉱石から作った槍は、ずっしりと質量を感じて、レベルが上がったスキルの肉体強化の恩恵を受けていなかったら、持ち上げる事も出来なかっただろう。
先日研ぎ直した刃が朝日を浴びて鈍く光っている。
「うむ、問題ないな」
これ以外にも最初は追加でハンマーでも用意しようかと考えていた。槍が核まで届かなかった時に槍の石突を殴って突き破れないかと思ったのだが、近づきたくないので廃案にした。
失敗したらまたやり直せば良いのだ。時間と可能性は幾らでも有るのだから。
一先ず槍をしまい、既に何度も行き来しているスライムへの道を進む。ストレス発散を兼ねたスキル上げで何度も対峙しているので、緊張感が全くと言って良い程無い。
程なくして何時も通り同じ場所に、同じ様子で揺らめくスライムを目に捉えた。
これから殺そうとしているのに本当に何の感慨も無い。今迄割れなかった風船を今日割るだけ。その程度の気持ちしか沸いてこない。
スライムの色は相変わらずな赤黒い色なのだが、大量に投げつけたナイフのお蔭か若干サイズが大きくなっている気がする。何百回と投げ続けた青銅の分だけ増えてても可笑しくは無いだろう。
その分、俺の投擲術も確実に強力になっている。
どうすれば飛距離が伸びるか。どう投げれば力が籠るのか。どう狙えば正確に狙った場所に飛ぶのか。数百回の投擲がスキルの力とは違う自分に対する信頼という力になっている。
それもこれも全てこの日の為にだった。
そう考えると少しは体に力が入るが、もはやこの十メートルを外す事は無いので大したプレッシャーにもならない。
さあ、そろそろ殺そう。
マジックバッグからルーンメタルの槍を取りだす。
槍の柄の中ごろを持ち、今日は助走を付けて投げるので、何時もナイフを投げている場所から少し下がった。
目を閉じ深呼吸をして気合を入れる。
何百回と繰り返した動作を思い出し、その中でも最高の動きを導き出す為の一歩を踏みしめる。
足を進めながら体を引き絞り、三歩目で溜めた力を解放し投擲する。
俺の腕から放たれた槍がスライムの核へと向かってビュッと風を切り裂きながら進む、レベル3の投擲ならばこの距離などほんの一瞬で到達し、スライムの体へと何の抵抗も無しに吸い込まれていく。
瞬く間に槍はスライムの核へと到達をして核に突き刺さり、そのままスライムの体を突き抜けて後ろの地面へと突き刺さった。槍に貫かれた核が砕け地面にきらびやかに散った。
核を失ったスライムは一度激しく震えると、その身を一気に溶けるかのように崩し、その姿を消していた。
「うおぉぉ!やったぜえ!」
俺は勝利の雄たけびを上げ、その場で飛び上がり拳を突き上げる。
地面に足を付けたその次の瞬間に、体に猛烈な力が沸き上がる。
「なんじゃこりゃああ」
つい叫んでしまう程の体の変化。まるで今まで何十キロもある重石を背負っていたかの様な解放感に包まれる。その感覚に思わず飛び上がってみると、物凄い高さまで足が上がった。
「うわぁっ! 怖わっ!」
ここ最近の生活では声を出す事も余り無いのだが、驚きの連発に数十日分の声が口から発せられる。それ程驚くべきジャンプ力だった。
着地はうまくでき、衝撃も全く感じないで試しに何度かその場で飛び跳ねてみた。自分の身長が今何センチなのか分からないが、自分の肩位の高さは飛んでいるっぽい。
スライムを倒した直後に飛んだ時の倍以上の高さを飛べる様になった。
このスキルのレベルアップに似た肉体の劇的な変化は、今回はレベルのアップだよな。
そう思った俺はステータスを開き確認する。思った通りレベルが上昇していた。
以下、ダイジェスト
レベルは一七も上がっていた。目覚ましい身体能力の向上が見られた。
消えたスライムがいた場所には、数点のアイテムが落ちていた。
この世界では生き物は死んだらアイテムに変わるらしい。
スライムを倒したことで、通路の先に進めるようになった。
その先にはまた開けた場所があり、そこには木の化物、トレントがいた。慎重を期すため今回は一度戻り、大鳩から情報を得ることにした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。