ストーム値:『ラヴニカ』と『ラヴニカへの回帰』

更新日 Making Magic on 2016年 5月 2日

By Mark Rosewater

Working in R&D since '95, Mark became Magic head designer in '03. His hobbies: spending time with family, writing about Magic in all mediums, and creating short bios.

 2月のこと、私は「ストーム値」というものについての記事を書いた。ストーム値とは、そのメカニズムがどれぐらい再録される可能性があると私が考えているかを表すために用いる道具である。その記事で扱ったのは、『タルキール覇王譚』ブロックのメカニズムだった。今回は、ラヴニカ世界を舞台にした2つのブロックを見ていこう。

 記事に入る前に、諸君に理解しておいてもらいたいことが2つある。1つ目が、ストーム値はそのメカニズムがスタンダードで使用できるセットに再録される可能性について1~10で表したものであるということ。2つ目が、その値のそれぞれが意味するのは以下のとおりであるということだ。

レベル1:間違いなく再録される。おそらく次のセットにも。

例:飛行、接死、占術

レベル2:間違いなく再録されるが、すぐにとは限らない。

例:キャントリップ、混成マナ、両面カード

レベル3:再録される可能性が非常に高く、何度も再録される可能性も。

例:サイクリング、フラッシュバック、上陸

レベル4:再録される可能性は非常に高いが、それを保証できなくなるような問題がある。

例:変異、キッカー、刻印

レベル5:再録する場所を必要としていて、私が楽観視している。

例:進化、怪物的、陰鬱

レベル6:再録する場所を必要としているものだが、あまり楽観視してはいない。

例:貪食、忍術、生体武器

レベル7:再録はされないと思われるが、環境が整えばあり得る。

例:氷雪マナ、回顧、刹那

レベル8:再録はされないと思われるが、もしかしたらあり得る。

例:マッドネス、エコー、待機

レベル9:ありえないとは言わないが、ちょっとした奇跡が必要。

例:フェイジング、スレッショルド、激突

レベル10:ありえないとは言わないが、かなりの奇跡が必要。

例:ストーム、発掘、親和(アーティファクト)

 メカニズムのストーム値を求めるにあたって、私は以下の5つの観点を使っている。

人気

 プレイヤーがこのメカニズムを好きだったかどうか。プレイヤーが好きなものは、再録される可能性が高い。そうでなければ、再録される可能性は低い。これは「楽しかったか」という質問が大きな基準になる。この評価は以下の4段階になる。

  • 大好評 ― 市場調査で、史上すべてのメカニズムの中で上位25%に含まれているメカニズム。なお、これらの評価は現在のメカニズムと史上すべてのメカニズムとの比較になる(市場調査はずっと以前から始めていたのだ)。
  • 好評 ― 市場調査で、平均以上で上位25%には至らなかったもの。
  • 普通 ― 市場調査で、平均以下で下位25%には至らなかったもの。ただし平均としてかなり好かれているものなので、平均以下といってもプレイヤーの多くが嫌っているわけではなく、それ以上に好かれているメカニズムがあるというだけである。この分類に入ったからといって再録の可能性が下がるわけではない。
  • 不評 ― 市場調査で、下位25%のメカニズム。この区分に入ったものは、再録の可能性は低くなる。

デザイン空間

 このメカニズムで作れるカードの枚数にどれぐらい余裕があるか。カードを作れる枚数が限られていれば、どれだけのプレイヤーが好んでいようと、どれだけデベロップしやすかろうと関係ないので、デザイン空間は重要である。この評価は以下の3段階になる。

  • 広大 ― このメカニズムには非常に広大なデザイン空間がある。何度でも再録できて、新カードを作る上での問題はない。
  • 中等 ― このメカニズムにはいくらかのデザイン空間があり、簡単に再録はできるが何度でもというわけにはいかない。
  • 狭小 ― このメカニズムはこのセット内でデザイン空間の限界に来ている。再録したときに充分なカードをつくるのは難しい。

多用途性

 このメカニズムと他のメカニズムの相性はどうか。このメカニズムには多くの前提が必要か、それともサポートはほとんどいらないか。言い換えると、このメカニズムのデザインは簡単か難しいか。この評価は以下の3段階になる。

  • 柔軟 ― このメカニズムは使用が簡単で、サポートはほとんど必要なく、他のメカニズムと容易に相互作用する。
  • 普通 ― このメカニズムは多少使用が難しく、いくらかのサポートが必要で、他のメカニズムと絡むのに問題がある。
  • 硬直 ― このメカニズムの使用は難しく、かなりの前提が必要となり、他のメカニズムと混ぜるのには明確な問題がある。

デベロップ

 このメカニズムのコスト付けがどの程度難しいか。バランスを取るのは難しいか。このメカニズムを仕上げるのが簡単かどうか。この評価では、メカニズムをデベロップする難易度を見ている。評価は3段階になる。

  • 問題なし ― このメカニズムをデベロップする上での問題は存在しない。
  • 普通 ― デベロップする上でいくらか問題は存在するが、大問題ではない。
  • 問題あり ― このメカニズムをデベロップする上で、かなりの問題が存在する。

プレイアビリティ

 このメカニズムの働きや他のメカニズムとの相互作用を、プレイヤーが理解する上で問題があったかどうか。このメカニズムを使う上で物理的な問題はなかったか。この評価はメカニズムをプレイする上での障壁があったかどうかを見るもので、2段階になる。

  • 問題なし ― プレイする上で問題はなかった。
  • 問題あり ― プレイすることに影響するような問題が存在した。

 これを踏まえて、メカニズムの評価に入ることにしよう。

アゾリウス

予見 (『ディセンション』)

人気: 不評

 このメカニズムは調査の下位25%に含まれている。実際、『ディセンション』のギルド・メカニズムは3つとも下位4分の1に入っているのだ。

デザイン空間: 狭小

 手札から何度でも使えて、そのカードを唱えたら他の効果に繋がるというのは始点とするには非常に狭いものである。『ディセンション』で充分な枚数のカードを作るのにも苦労した。新しいセットの分の一連のカードを作りたいとは思わないだろう。

多用途性: 普通

 手札に残るものなので、普通よりも多くの方法で相互作用できる必要がある。このメカニズムがあるとプレイは防御的になる傾向にあり、白や青の他のカードの種類に影響を及ぼす。ただしアゾリウスは防御型のプレイを志向しているので、他の色に存在するよりは問題が小さいということになる。

デベロップ: 問題あり

 デベロップは反復使用可能な効果を好まず、手札から作用する効果も事実上黒でしか対策できないので、嫌っている。

プレイアビリティ: 問題あり

 カードを手札で起動できるようにすると、対戦相手はその戦場に出ていないカードを覚えておく必要がある。

ストーム値: 8

 このメカニズムは好かれているものではなく、デザイン空間も埋まっていて、デベロップは眉をひそめ、使うのも難しい。これは成功への秘訣とは言えない。しかし、非常に独特な機能を有するので、もしかしたらいつの日か特定の環境下では必要になるかもしれない。私は再録されるとは思っていないが、再録がありえないとは言えない。


留置 (『ラヴニカへの回帰』)

人気: 好評

 この記事を書くにあたり、私は各メカニズムが市場調査でどうだったかを見なおした。このメカニズムが一番の驚きだった。問題ないというレベルだったと思っていたが、実際は50%~75%の「好評」に入っていたのだ。

デザイン空間: 中等

 留置はキーワード処理なので、一般的に言って柔軟に使うことができる。最大の限界は作れるカードの枚数にではなく、同時に使えるカードの枚数にあるのだ。

多用途性: 柔軟

 どのセットにも留置を使って1ターンの間タップして無効にできるパーマネントがあるので、留置はどのセットでもうまく働く。

デベロップ: 問題なし

 このメカニズムを再利用可能にすると鬱陶しいことになる可能性はあるが、パワーレベルに問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 この能力を使うと効果がターンを超えて残るので多少記憶しなければならないことは増えるが、非常に単純な効果(「使うな」)であり把握するのも非常に簡単である。

ストーム値: 3

 留置は再録されると思われる。人気があって、柔軟で、フレイバーに富んでいる。


ディミーア

変成 (『ラヴニカ:ギルドの都』)

人気: 普通

 このメカニズムは下半分の最上位あたりに位置していた。特に嫌いだという人もいないが、多くのプレイヤーのお気に入りというわけでもないメカニズムの1つである。

デザイン空間: 中等

 変成はあらゆるカード・タイプが持ちうる。最大の問題は、その能力がカードの価値の中で大きな部分を占めてしまうので、見た目でも好まれるような変成カードを作るのは難しいということである。

多用途性: 柔軟

 変成には様々な点数で見たマナ・コストのカードが必要だが、マジックにはそもそも幅広いカードが存在している。

デベロップ: 問題あり

 デベロップは何年もの間、教示者を否定してきた。教示者があるとゲームの展開は同じようになり、コンボ・デッキが強化されることになる。我々は教示者を作り続けるとは思うが、教示者的なメカニズムを計画することはないだろう。

プレイアビリティ: 問題あり

 変成を使うためには、自分のデッキに入っているカードすべてのコストと、その時に必要な特定のカードがライブラリーに残っているかどうかを把握しなければならない。

ストーム値: 9

 教示者的メカニズムは今後使われることはないだろう。つまり、変成の再録は非常に疑わしい。10でない理由は、このメカニズムそのものが壊れているわけではないからである。


暗号 (『ギルド門侵犯』)

人気: 普通

 一般にプレイヤーはこのメカニズムのコンセプトは気に入っていたが、実装は少しばかり理想と違っていた。

デザイン空間: 狭小

 暗号には多くの制限がある。ソーサリーにしかつけられないし(インスタントだと混乱が生じる)、その効果が発生する時期に関係なく一般に有用な効果を持たなければならない。何度も使えるので、効果を大きくしすぎるわけにもいかない。そしてその効果は青や黒のものに限られる。結果、これはギルドのメカニズム20個の中で一番デザイン空間が小さいメカニズムであろう。このブロックで充分なカードを作ることにさえ苦労したのだ。

多用途性: 硬直

 暗号そのものがデザインしにくいのに加えて、さまざまなサポートも必要である。例えば、有効に使うためには通常よりも多くの回避能力が必要になる。

デベロップ: 問題あり

 これはデベロップが推したがらない類のメカニズムである。何度も働くのですぐに制御不能になるし、ゲームを支配してしまう。特にその効果によって次のターンも攻撃が通りやすくなるようなものであればなおのことだ。

プレイアビリティ: 問題あり

 これは誘発型能力に変化するソーサリーで、しかもその影響を受けるクリーチャーに物理的につくわけでもない。さらに、いくつものタイミングの問題で混乱も生じる。

ストーム値: 9

 近いうちに暗号が再録されることは想像できない。デザインもデベロップも難しく、その障壁を飛び越えなければならないほどに人気が高いわけでもない。


ラクドス

暴勇 (『ディセンション』)

人気: 不評

 プレイヤーは手札にカードを持っておきたいものなので、手札を空にしなければならないというメカニズムに人気が出るわけがない。

デザイン空間: 中等

 このメカニズムを持つカードには、弱体版と強化版の2つのモードが必要となる。これによって作れるカードの枚数は限られてくることになる。一方、暴勇はどのカード・タイプにも持たせることができる。

多用途性: 普通

 暴勇には、手札を空にすることができる環境が必要であり、そのための手段がいくつか必要になる。

デベロップ: 問題なし

 暴勇にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 このメカニズムは非常に直感的で、こういった閾値メカニズムは今どちらの状態なのかは非常にわかりやすい。

ストーム値: 5

 暴勇にとって望ましい環境は、充分な頻度で存在している。わざわざ取り立てて暴勇を使うつもりはないが、作りたいデザインのために暴勇がふさわしいことはいずれあるだろう。


解鎖 (『ラヴニカへの回帰』)

人気: 不評

 プレイヤーは全体として、欠点のメカニズムである解鎖のことが好きではない。一度プレイしてみれば実際はいくらか有用なのだが、それでも評価の一番下のブロックを抜け出すには至らなかった。

デザイン空間: 中等

 解鎖はクリーチャーにしか持たせられないが、組み合わせられるクリーチャーのデザインはいろいろと存在する。

多用途性: 普通

 解鎖には、+1/+1カウンターだけでなく、パワーやタフネスを強化することがメカニズム的に妥当である環境が必要である。

デベロップ: 問題なし

 解鎖にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 解鎖は+1/+1カウンターを用いるが、非常に直感的でルール問題は存在していない。

ストーム値: 4

 このメカニズムの人気が不評でなかったなら、ストーム値は3だろう。プレイ感は良く、デザインやデベロップは簡単で、フレイバーにも富んでいる。これが輝く環境を見つけることが鍵になるだろう。


グルール

狂喜 (『ギルドパクト』)

人気: 不評

 このメカニズムは、ほとんどの諸君が予想していたよりも人気がなかったことだろう。これはおそらく、条件が実際よりも難しく見えることからだと思われる。

デザイン空間: 広大

 このメカニズムはクリーチャーにしか持たせられないが、そのメリットはほとんどどんなクリーチャーに持たせても働く。パワーを参照することによるさらなるデザインもあるが、それが大量に必要というわけではない。

多用途性: 柔軟

 このメカニズムに必要なのは、攻撃するクリーチャーである。マジックでは、ほとんどの場合にその条件を満たしている。

デベロップ: 問題なし

 狂喜にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 このメカニズムはカウンターを用いるが、それ以外は非常に直感的である。

ストーム値: 3

 このメカニズムの問題点を挙げるなら、最初の登場時の第一印象だけである。このメカニズムが『基本セット2012』で再録された時には比較的好評だった。これは常磐木でないクリーチャー・メカニズムの中で比較的使えるものである。まず間違いなく再録されるだろう。


湧血 (『ギルド門侵犯』)

人気: 普通

 湧血は人気で言うと下半分の上の方に位置していた。これは、多くのプレイヤーがコストとしてカードを捨てることを好きではないからだろう。

デザイン空間: 狭小

 最初は、このメカニズムはクリーチャーだけに持たせるもので、パワーやタフネスを強化するものに限られていた。美学的に、またフレイバー的に、クリーチャーのパワーやタフネスを強化するカードも作ったが、デザイン空間は非常に狭い。

多用途性: 普通

 湧血が存在する色ではパワーやタフネスを強化する他の効果を減らさなければならないが、それ以外は普通の環境で働く。

デベロップ: 問題なし

 湧血にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 湧血にはルール、記憶、実装上の問題は存在しない。

ストーム値: 6

 湧血が再録されるには、それにふさわしい環境かどうかにかかわらず、多くの障壁がある。デザイン空間が狭く、人気も足りていないということは、つまり再録したくて仕方ないというわけではないが、いつか再録されうると思う程度にはうまく行っていた。


セレズニア

召集 (『ラヴニカ:ギルドの都』)

人気: 普通

 狂喜同様、前回再録した時には人気が上がっていたメカニズムである。狂喜と違い、これは最初に登場した時から充分人気があった。

デザイン空間: 広大

 これはあらゆるタイプのカードに持たせられるコスト低減メカニズムであり、多くのカードを作ることができる。

多用途性: 柔軟

 このメカニズムにはクリーチャーが必要だが、上述の通り、マジックには既にクリーチャーが存在している。

デベロップ: 問題なし

 一般に、コスト低減メカニズムにはデベロップ上の問題があるが、召集は必要なコストのせいで悪用するのが難しい。

プレイアビリティ: 問題なし

 召集を用いて有色のカードを唱えるために、どの色のクリーチャーが使えるかという計算をしなければならないが、全体としては把握が簡単なメカニズムである。

ストーム値: 3

 召集は広いデザイン空間を持ちデベロップ上の問題が少ない、安定したメカニズムである。間違いなく再録することだろう(既に1回再録している)。


居住 (『ラヴニカへの回帰』)

人気: 好評

 これは全ギルド・メカニズムの中でもっとも人気の高かったものの1つである。

デザイン空間: 中等

 居住のデザインにおいて一番難しいのは、デッキ全体をこのテーマに染めることなく組み合わせられるカードを作ることである。

多用途性: 硬直

 平均よりも多くのクリーチャー・トークンが存在しなければ居住は存在できない。

デベロップ: 問題なし

 デベロップはセットに存在するクリーチャー・トークンを制限する必要があるが、それはいつもやっていることである。

プレイアビリティ: 問題あり

 このメカニズムはトークンを使う。たくさん使う。

ストーム値: 5

 このメカニズムの再録の機会はあると思う。特別なセットのスタイルが必要ではある。


オルゾフ

憑依 (『ギルドパクト』)

人気: 不評

 このメカニズムは最下層だった。

デザイン空間: 狭小

 このメカニズムは非常に多くのバランスがある。いろいろなメカニズム的な条件や(例えば、2度起こって欲しいような小さな効果が必要で、そのうち1回は戦闘終了時に起こることが多い)いろいろなフレイバー的な条件が課せられる(憑依しているように思えるものでなければならない)。結局、デザインするのが非常に難しいことになる。

多用途性: 普通

 憑依はどんな呪文に持たせるかについて非常に頭を使わなければならないメカニズムではあるが、幸いにもその内容は白や黒がしたいことと一致している。

デベロップ: 普通

 このメカニズムにはパワーレベルの問題は存在しないが、複雑さの問題がある。また、デベロップがカードを調整するのにちょうどいい手がかりが存在しない。

プレイアビリティ: 問題あり

 私が「貼り付き」と呼ぶメカニズムの性質がある。そのメカニズムを持つカードを読んでそれを覚えることができるか。憑依は全く貼りつかない。プレイヤーはこの働きをいつも忘れることだろう。この能力を持つものがパーマネントであるか呪文であるかによって処理が異なるという事実も問題である。

ストーム値: 9

 旧『ラヴニカ』ブロックの中で、これは私を最も失望させたものの1つである。このメカニズムの潜在能力と実際の出来との差が非常に大きかったのだ。素晴らしいものになるべきだったと思うが、実際のプレイ感は最悪だった。再録はまずないだろう。


強請 (『ギルド門侵犯』)

人気: 好評

 これもかなり人気の高いギルド・メカニズムである。特に多人数戦で強く、そのことは賛否両論である。

デザイン空間: 中等

 強請はあらゆるタイプのパーマネントに持たせられる。この能力だけを持つクリーチャーでもうまく働くので、非常に柔軟だといえる。

多用途性: 普通

 強請は、使える環境において存在させたい。その環境とは、大量の軽い呪文を使う環境ということになる。

デベロップ: 普通

 強請は多くなると制御不能になりうる効果である。マナの支払いが必要なのでそれほどではないが、デベロップは注視する必要がある。多人数戦での問題にはさらなる注意が必要である。

プレイアビリティ: 問題あり

 強請は、その後で呪文を唱えるたびに思い出さなければならないという点で記憶上の問題がある。

ストーム値: 6

 このメカニズムは好かれていて、プレイ感も充分良いが、デベロップ上の問題や多人数戦での問題があるので使用には注意が必要である。


イゼット

複製 (『ギルドパクト』)

人気: 好評

 旧『ラヴニカ』ブロックの10個のギルド・メカニズムの中で、全体評価の上半分に入ったのはこれだけである(この評価は史上すべてのメカニズムとの比較である)。

デザイン空間: 中等

 このメカニズムは、複数回唱えたいと思うような効果を持つ呪文にしかつけられない。それを踏まえて、このメカニズムを持つカードはそれなりの枚数存在している。

多用途性: 普通

 このメカニズムにはマナが大量にある環境が必要だが、自然とそちらの方向に向かう。

デベロップ: 問題なし

 複製のデベロップ上の問題は多くはないが、何度もコピーできる呪文というのは歴史的に問題を起こしている。

プレイアビリティ: 問題なし

 複製は非常に直感的である。計算は少し存在するが、面倒なことは何もない。

ストーム値: 5

 このメカニズムは人気が高く、デザインも比較的容易である。ふさわしい環境は必要だが、私はいつか再び登場すると確信している。


超過 (『ラヴニカへの回帰』)

人気: 好評

 超過は好評だった。効果を広げるのは人気が高いのだ。

デザイン空間: 狭小

 超過はインスタントかソーサリーにしか持たせられない。また、それの効果は単一の対象に、そして後には全体に働くものでなければならない。青や赤のこのデザイン空間は狭い。

多用途性: 普通

 超過は、選択に意味を持たせ、ゲームを台無しにしないために、それを中心にしてセットをかなり調整しなければならない類のメカニズムの1つである。

デベロップ: 普通

 通常、メカニズムのモード間の差が大きくなるにつれ、デベロップは難しくなる。

プレイアビリティ: 問題なし

 超過にはルール上、記憶上、実装上の問題は存在しない。

ストーム値: 6

 超過はプレイ感もよく、好評だったが、デザインが非常に難しく、輝くには専用の環境が必要である。


ゴルガリ

発掘 (『ラヴニカ:ギルドの都』)

人気: 普通

 これは評価の下半分の上半分にあった。発掘には確固たるファンがいるが、それはパワーレベルと、「まったく違うゲームをする」という性質のせいであろう。

デザイン空間: 中等

 発掘はあらゆるタイプの呪文に持たせることができる。プレイヤーが何度も唱えたいようなものに制限される。

多用途性: 普通

 発掘には、墓地に送る手段が必要であるが、それほど多く必要なわけではない。

デベロップ: 問題あり

 発掘は史上でも最も問題を起こしうるメカニズム3つのうち1つであろう。マナ・コストを変更することで修正できないというのは、デベロップ的には大問題である。

プレイアビリティ: 問題あり

 発掘は、いくつもの領域を操作する必要があるので、そのすべてに注意を払う必要がある。また、プレイの方向性も大きく異なり、他のほとんどのメカニズムよりも把握するのが難しい。

ストーム値: 10

 発掘は私のメカニズムの1つである。正直に言うと、私は発掘が好きなのだ。マジックに、全く異なる視点から挑むものが好きなのだ。我々が作った中でも最も壊れたメカニズムの1つであり、二度と出てくることはないだろう。


回収 (『ラヴニカへの回帰』)

人気: 普通

 このメカニズムのファンは本当に好きだが、人数的にはマイノリティである。

デザイン空間: 広大

 回収はクリーチャーにしか持たせられないが、作れるクリーチャーの種類はかなり多い。

多用途性: 普通

 回収は他のクリーチャーを強化するので、デザイン上は2つの要求がある。1)クリーチャーを強化する手段が多くなり過ぎないこと。2)クリーチャーが大きくなることによって有利を得る方法があること。

デベロップ: 問題なし

 回収にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題あり

 回収は+1/+1カウンターを用いる。また、墓地で働く。

ストーム値: 4

 回収はデザイン空間が広く、デベロップ的に問題のない興味深い空間で働く。4止まりなのは、これが大人気というわけでもなくプレイアビリティにも問題があるからである。結論としては、私はいつかもう一度登場すると思っている。


ボロス

光輝 (『ラヴニカ:ギルドの都』)

人気: 不評

 光輝は好かれたメカニズムではない。ギルド・メカニズムの中でも一番好かれていないものだろう。

デザイン空間: 狭小

 カードをデザインするのも非常に難しい。

多用途性: 柔軟

 色が何か意味を持つセットでもっともうまく働く。特に多色のセットが最適だろう。

デベロップ: 普通

 やらせたいことと違うことをする可能性があるこの類の効果をデベロップが推すことはありえない。

プレイアビリティ: 問題あり

 これの一番の問題は、処理するのが非常に難しいということだろう。唱えたあとで「さて、何が起こるか見てみよう」というようなメカニズムは多くはない。また、ボロスのメカニズムとしてはフレイバー的にも全く意味が通らない(ただしこれは、もし再録する気ならラヴニカ以外で再録することができるのであまり問題にならない)。

ストーム値: 9

 問題があり、混乱を招き、好まれていないのだから当然ここだ。


大隊 (『ギルド門侵犯』)

人気: 普通

 大隊には、実際以上に大きなボーナスを得るように感じさせるために超えなければならない障壁がある。実際に触れてみたプレイヤーは気に入ることが多い。

デザイン空間: 広大

 大隊はクリーチャーにしか持たせられないが、様々なサイズのクリーチャーがあり、様々な種類の効果をこのメカニズムと組み合わせられる。

多用途性: 柔軟

 大隊は、多くのクリーチャーで攻撃したいと思うような盤面が必要となる。マジックでは、特にリミテッドでは、既にそうなる傾向にある。

デベロップ: 問題なし

 大隊にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題なし

 大隊にはルール上、記憶上、実装上の問題はない。

ストーム値: 4

 このメカニズムはプレイ感もよく、デザインもデベロップも簡単である。第一印象は最高のものではなかったが、マジックにそういうメカニズムは存在できる。


シミック

移植 (『ディセンション』)

人気: 不評

 私はこのメカニズムが大好きだったが、少数派だった。

デザイン空間: 中等

 これはクリーチャーにしか持たせられないが、その数は充分である。

多用途性: 普通

 +1/+1カウンターを使うセットでしか使えないが、ほとんどのセットで+1/+1カウンターは使われている。

デベロップ: 普通

 移植にはパワーレベルの問題はないが、『Magic Online』では非常に厄介であった。

プレイアビリティ: 問題あり

 カウンターを使い、カウンターの乗ったものに影響を与えるので、ほとんどのメカニズムよりも把握が困難である。

ストーム値: 8

 これは再録がありえないと思うほどの問題を抱えたメカニズムの1つであるが、完璧な状況というのがありえないとは言えない。


進化 (『ギルド門侵犯』)

人気: 好評

 プレイヤーは進化が好きだ。軸となるものが必要だが、充分単純である。

デザイン空間: 中等

 進化はクリーチャーにしか持たせられず、成長の余地がある小型クリーチャーに持たせることが多いが、その範囲内でも多くのカードを作ることができる。

多用途性: 普通

 進化を使う場合、高パワー/低タフネスのクリーチャーや低パワー/高タフネスのクリーチャーを増やす必要がある。

デベロップ: 問題なし

 進化にはデベロップ上の問題はない。

プレイアビリティ: 問題あり

 進化は+1/+1カウンターを用いるし、特定のクリーチャーを唱えた時に起こる効果を覚えておく必要があることも多い。

ストーム値: 5

 進化は好評で、デザインもデベロップも簡単である。問題は、使える環境が限られているということだけである。


良いメカニズムを探せ

 今日はここまで。再録がありうるかどうかという観点からギルド・メカニズムを振り返ったが、楽しんでもらえれば幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。同時に、諸君が他にストーム値で評価してもらいたいセットがあれば教えてもらいたい。

 それではまた次回、私が私の最大の誤りを検証する日にお会いしよう。

 その日まで、あなたのお気に入りのメカニズムが再録されますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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