「天冥の標」(てんめいのしるべ)は、小川一水によるSF小説(シリーズ)です。
このブログが漫画感想ブログでありながら、小説を紹介したくなるぐらい、この本は面白いです。
以下、このシリーズの魅力を8つに分けてお伝えします。
なお、致命的なネタバレは避けるようにしています。
(タイトルは、おおげさですが、「~の○個の理由」というタイトルを一回やってみたかっただけです。)
1. 壮大なストーリー
このシリーズは、いまだ完結していませんが、全10巻で完結の予定です。
10巻といっても、1巻が複数冊に分かれることもあり、現時点で、9巻の前編までの13冊が刊行済みです。
それぞれの巻では、舞台となる時代、場所が異なっており、その時代は、千年近くの広がりを見せています。
(一部のエピソードに至っては、数千年前のものもあります。)
時や場所を違えども、それぞれの巻のストーリーには、因果関係や血縁、宿命、登場人物によるつながりがあり、シリーズ全体を通して壮大なストーリーを楽しむことができます。
イメージとしては、手塚治虫の「火の鳥」が近いかもしれません。
シリーズを読み進めて、壮大な歴史を追体験できるのは、非常に刺激的な経験です。
2. SF初心者にも分かりやすい
この「天冥の標」シリーズは、SF小説です。
1巻からして、舞台は、惑星メニー・メニー・シープという地球から離れた惑星。
シリーズ中には、人間そっくりのロボットや遺伝子レベルで身体を改造した人類、恒星間を移動できる宇宙船なども登場します。
このようなSFについては、そのジャンルというだけで腰が引けてしまう人もいるかもしれません。
ただ、このシリーズは、決して難解なものではなく、また、後に述べるように、キャラクターやストーリーが魅力的なため、SF初心者でもすんなり入っていけると思います。
ところどころ、やや小難しい話もあるにはあります。
それでも、なんとなくで読んでいって雰囲気を楽しむには、全く支障はありません。
私自身、SFは平易なものを読んだことがあるだけで、ハードSFといわれるような難解なSF作品は読んだことがありません。
そんな私でも、このシリーズについては、何の問題もなく楽しむことができました。
3. 魅力的なストーリー展開
作者いわく「できることを全部数え上げた上で、できるかどうかわからないことや、やったことのないことをさらに盛り込ん」だというこのシリーズ。
その言葉にも納得のストーリーの面白さで、ページをめくる手が止まりません。
4. 張り巡らされた伏線
ネタバレを避けて語るのが不可能なので、多くは書きませんが、シリーズを通して伏線が張り巡らされており、読んでいくなかであっと驚く瞬間が何度もあると思います。
伏線が回収された後に、振り返って最初からもう一度読む楽しみも味わえます。
私は、自宅で読んでいる最中、驚きのあまり、声を上げてしまったこともあるくらいです。
いまだ完結していないので、ラストがどうなるかは分かりませんが、もしかしたら、もっと大きなサプライズがあるかもしれません。
5. 深遠なテーマ
作品中では、様々なテーマが示唆されています。
その中には、人間とは何か、生きるとは何か、といった深遠なものも含まれます。
それが端的にあらわれたのが、第9巻のタイトル「ヒトであるヒトとないヒトと」でしょう。
人間ではあるが、その身体を改造した者、人間ではないが、外から見ると人間にしか見えない者、かつて人間であったが、人間ではなくなった者。
それぞれを区別するものは何か、そもそも区別するべきなのか。
様々なことを考えさせられます。
6. 多彩で魅力的なキャラクターたち
人間・非人間含めて、多彩な性格・気質を持ったキャラクターが登場するのも魅力の1つ。
彼ら彼女らが運命に翻弄され、時に運命に抗う姿には、読んでいて心を揺り動かされます。
非人間キャラクターもユーモアにあふれていたり、人間らしさがあるところも良いですね。
7. 未完であること
これまで述べてきたように、このシリーズは未完結。
「今すぐ読むべき」と書きましたが、完結してから一気に読みたい、という人にとってはまだ読むべきタイミングではありません。
ただ、未完結だからこそ、ラストのネタバレを恐れることなく、他の人の感想・考察も読めるというものです。
また、続きをやきもき・わくわくしながら待つのも楽しみのひとつ。
完結なんて待たずに今すぐ読み始めましょう。
8. 読み始めるタイミング
読み始めるのは、連休の今がおすすめ。
それは、読み始めたら止まらなくなる可能性があるからです。
シリーズ既刊12冊と大部なので、読み通すには、それなりに時間がかかります。
連休を利用して読んでしまいましょう。
終わりに
致命的なネタバレを避けると、私の表現力では、魅力の100分の1くらいしか伝えられていない気がします。
騙されたと思って、最初の1巻だけでも読んでみてください。
きっと、その面白さにはまるはずです。
最後にマンガブログらしいことも書いておくと、完結した際には、ぜひ漫画化してほしい作品です。