日本を抑え込む「シルバー民主主義」
―― 日本が変われない本当の理由

アレクサンドラ・ハーニー 前外交問題評議会インターナショナルフェロー

Japan's Silver Democracy
―― The Cost of Letting the Elderly Rule Politics

Alexandra E.Harney ロイターの中国担当特派員(special Correnpondent)。フィナンシャル・タイムズ紙記者、米外交問題評議会インターナショナル・フェロー(日立フェロー)などを経て現職。The China Price『中国貧困絶望工場』(日経BP社)の著者。

2013年8月号掲載論文

日本社会は急速に高齢化している。そして高齢者たちには、政治家が現行の社会保障システムに手をつけるのを認めるつもりはない。だが、高齢社会に派生する問題に向き合うのを先送りすればするほど、その経済コストは大きくなる。これが日本の現実だ。事実、政府の年金財源は2032―2038年の間に枯渇するという試算もある。だが、年齢層からみた多数派で、投票率も高い高齢者集団にアピールするようなキャンペーンを実施すれば、政治家はもっとも忠誠度の高い支持基盤を手に入れることができる。こうして、高齢社会が日本経済にどのようなコストを与えることになるとしても、「高齢者に優しい政策」が最優先とされている。高齢層の有権者の支持を失うことに対する恐怖が、政治家が長期的に国の未来を考えることを妨げ、これが若者に対する重荷をさらに大きくしている。1票の格差同様に、世代間の不均衡問題に目を向け、もっと若者の意見を政治に反映させる必要がある。そうしない限り、日本の経済未来は今後も暗いままだろう。

  • 超高齢社会と社会保障の重圧
  • 政治家が高齢者層を重視する構造的理由 
  • 医療保険と年金の重圧
  • 若者の立場を政治に反映させるには

<超高齢社会と社会保障の重圧>

日本ほど急速に高齢化が進んでいる国もない。1985年から現在までに、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は10%から25%に増え、2060年までにはその比率は40%に達すると考えられている。しかも、それまでに、日本の人口は現在の1億2800万から1億を下回るレベルへと低下すると予測されている。(訳注 65歳以上の人口が総人口に占める割合によって、7%―14%が高齢化社会 14%―21%が高齢社会、21%以上が超高齢社会と区別されている)

高齢化という人口動態上の変化は比較的最近の出来事だが、すでに日本の財政に大きな重荷を作り出している。2014年には日本が抱える公的債務がGDPの240%に達すること、この対GDP比債務比率がギリシャのそれよりもはるかに高いことは広く知られている。だが、日本が抱える債務の一部が、年金財源の収支ギャップに派生していることはあまり認識されていないようだ。

医療費、年金、介護を含む日本の社会保障関連支出は、教育、防衛、そして公共事業を含む他のすべての歳出項目の合計を上回っている。そして社会保障関連支出の多くを飲み込んでいるのが、高齢者介護コストだ。65歳以上の高齢者のための公的支出は2004年までの20年間で3倍に増え、その後も急速に増え続けている。一方、家族や若者への政府支出はそれほど増えていない。

非常に重要な問題であるにも関わらず、日本では、これらの問題が世論の場で議論されることはほとんどない。特に選挙前になると、政治家たちは、過度に手厚い年金システム、過剰で効率に欠ける医療、低い出生率をさらに抑え込んでいる若者たちの経済的苦境など、対策をとれば、高齢者の利益と衝突しかねないセンシティブな問題を避けようとする。

有権者の人口動態・構成に目を向ければ、その理由がわかる。この30年にわたって、日本社会の高齢化が進むにつれて、60歳を超える人々が有権者に占める比率は倍増し、すでに44%に達している(アメリカの場合、2012年11月の時点で有権者に占める65歳以上の人々の比率はわずか21%)。一方で日本の有権者に占める20代の若者の比率は、1980年の20%から14%へと減少している。

要するに、日本は二つの問題を抱えこんでいる。日本社会は急速に高齢化し、そして、高齢者たちは、政治家が現行の社会保障システムに手をつけるのを認めるつもりはない。だが、高齢社会に向き合うのを先送りすればするほど、その経済コストは大きくなる。日本は、今後、有権者としての高齢者集団よりも、若い家族の立場にもっと配慮すべきだろう。そうしない限り、その経済未来は今後も暗いままだろう。

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