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ジョブズとマスクに共通する「卓越したブランド力」のつくり方
スティーブ・ジョブズとイーロン・マスクの基本的な共通点は何だと思いますか? どちらも独創的で素晴らしい製品を創り出したのは間違いありません。ジョブズによるAppleの新製品発表会は、期待に満ちた熱狂的なサーカスのようでした。先日マスクがおこなったテスラモーターズの低価格新型車「モデル3」の発表会も、似たような雰囲気でした。
いつ届くかもわからない(しかも価格も確定していない)モデル3に、1000ドルの予約金をポンと支払う人が27万6千人もいたのです。「Inc.com」のジョン・ブランドンは、この事態を「スターウォーズ以上の何かが登場した」と評しました。まさにそんな感じです。
しかし、もっと根本的なところで、かつてジョブズが使った顧客の信頼や興奮を信じられないレベルに上げる魔法のようなものを、マスクはどのようにして生み出すことができたのでしょう? 最近この問に対する考えさせれる答えを、テック業界の重鎮コメンテーターのベン・トンプソンがブログに投稿していました。専門家も含め多くの人が求める破壊に関する何かを、ジョブズとマスクは理解していたのだと書いています。
破壊の定説を破壊する
ハーバード・ビジネス・スクールの教授クレイトン・クリステンセンによると、昔ながらの破壊のストーリーは、弱小企業がその業界の巨大企業に不意打ちを食らわせるというものでした。同じ業界で、小さなポートが巨大なタンカーにぶつかって、成功した破壊分子は、闘いに勝った直後に安価でハイエンドな製品を市場に出します。
ジョブズは、これで十分だと考えると、自分が破壊の定説に陥ってしまうことになると理解していた、とトンプソンは言います。Appleは最初から、まったく新しいカテゴリーで高品質な製品を提供することで、業界を牽引してきました。また、マスクは同じことをするために、Appleのやり方をお手本にしました。
Appleもテスラも、競合とは完全に別次元の製品で最初から素晴らしいスタートを切った、とトンプソンは言います。サムスンの製品は携帯電話です。iPhoneはiPhoneです。シボレーの製品は自動車です。テスラはテスラなのです。信じられないほどの興奮と信頼を生み出すことで、両社ともにロケットスタートで業界に殴りこみをかけたということです。
iPhoneが発売された当時のことを、トンプソンはこのように書いています。
それまでの製品とは考え方がまったく異なり、小さな企業が不意打ちを食らわしたのではなく、これが正しいかたちだと証明しただけでなく、Appleは事実上マーケットを世界規模に広げました。今ではiPhone SEは、最高級のものから、最高級のものには手が出ないけれどiPhoneを熱望している、発展途上国の人たちも手に届くような価格帯のものまであります。
マスクの言葉を借りるなら「最高級のものから出発することで、低価格のものを生産できるレベルに成長できる」ということでしょう。iPhoneは普通の携帯電話とは別物でした。良い携帯電話というだけでなく、すぐに素晴らしい携帯電話の象徴のようになりました。
テスラは、素晴らしい成果を出しているだけでなく、シリコンバレー的な(技術的に最先端の)格好良さもあります。"妥協なき電気自動車をつくる"というマスクの主張が、最終的には27万6千人もの人が、実物を見るまでもなくモデル3を予約することにつながったのです。これがテスラです。
他のイノベーターも、このやり方を真似て市場を独占するようなことはできるでしょうか? もちろんできると思いますが、誰もが素晴らしいと認めるような本物の製品をつくるのは、当然ながらおそろしく難しいです。
しかし、もしそのような製品をつくることができたら、常識をくつがえすようなハイエンドな製品があるのはとても有利なことです。妥協のない最高のクオリティの製品をつくることができると、将来問題が起きても、持ち直すだけの余裕が持てるブランド力(その会社に対する忠誠心)を手に入れることになります。
これが、Apple製品のソフトウェアの品質が低下しても持ちこたえている理由であり、テスラはモデル3の納品時期が遅れても、予定以上の価格になっても、待ってもらえる優位性を、同じように手にすることになるでしょう。とにかく、テスラはテスラなのだとトンプソンは結論付けました。
The Secret to Insane Loyalty Elon Musk and Steve Jobs Both Mastered|Inc.
Jessica Stillman(訳:的野裕子)
Photo by Flickr
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