Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]「殺人ロボット」が新軍拡競争を引き起こす

(2/2ページ)
2016/5/2 6:30
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

 哲学のセミナーでは、殺人ロボットに反対するこの道義的な根拠は十分明白だ。問題は、戦争の不透明さの中で見込まれるロボット使用にじっくり目を向けるほど、道徳的な境界線を見分けるのが難しくなることだ。ロボット(限定的な自律性を備えたもの)はすでに、爆弾処理や地雷除去、ミサイル迎撃システムなどの分野で戦場に配備されている。こうしたロボットの利用は今後、劇的に拡大していく。

■人的判断の有無で自律性に区別

 ワシントンのシンクタンク、新米国安全保障センター(CNAS)は、軍事ロボットに対する世界的な支出が2018年までに年間75億ドルに達すると試算している。これに対し、商業・工業用ロボットに対する支出は430億ドルと予想されている。CNASは「戦士たちが敵に対して決定的な優位性を得る能力」を大幅に高めることができると主張し、そうした軍事ロボットの配備拡大を支持している。

 軍事産業は、業界が愛してやまない無味乾燥な文章で、異なるレベルの自律性を区別している。

 業界が「ヒューマン・イン・ザ・ループ(人間が関与する)」と表現する最初のレベルには、米軍をはじめ多くの軍隊に使われている武装ドローン(小型無人機)「プレデター」が含まれる。ドローンは標的を特定するかもしれないが、攻撃するには、やはり人間がボタンを押す必要がある。映画「アイ・イン・ザ・スカイ」で鮮明に描かれているように、そのような決断は道義的に苦渋に満ちたものになり得る。標的を射止める重要性と民間人が犠牲になるリスクをてんびんにかけなければならないからだ。

 自律性の第2のレベルは、対空部隊を含め、ロボット化された兵器システムを人間が監督するヒューマン・イン・ザ・ループ・システムだ。だが、近代の戦争が持つスピードと激しさを考えると、そのような人間の監視が効果的なコントロールとなるのかどうか疑わしい。

 完全に自律的なドローンなど、3番目のヒューマン・アウト・オブ・ザ・ループ(人間が関与しない)型システムは、最も多くの死者を出す可能性があるが、恐らく禁止するのが最も容易だ。

 AI研究者は間違いなく、この議論に光を当てたことで称賛されるべきだ。軍縮専門家も、この課題を明確に定義し、対応するのを手助けするうえで、有益だが腰の重い役割を担っている。CNASのシニアフェロー、ポール・シャール氏は「これは貴重な対話だが、遅々として進まないプロセスだ」と話している。

 ほかの多くの分野と同じように、我々の社会は技術的に激変している現実の意味を理解するのにてこずっている。ましてや、この現実をコントロールするには及ばない。

By John Thornhill

(2016年4月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

監視用ドローンを操縦するカメルーン兵士。近隣諸国と共同で過激派組織「ボコ・ハラム」の掃討を狙う=ロイター

ロイター

[FT]「殺人ロボット」が新軍拡競争を引き起こす

 次のような未来のシナリオを想像してほしい。米国主導の連合軍が過激派組織「イスラム国」(IS)を全滅させることを決意し、シリアの都市ラッカを包囲する。敵を追跡して市内を飛び回る自律型飛行ロボットの群れ…続き (5/2)

イラスト Ferguson/Financial Times

[FT]米、「英との蜜月」変質 アジア重視路線 経済分野で鮮明

 英国の欧州連合(EU)の離脱派はよく、英国は離脱したら大英帝国の遺産でもある「英語圏国家連合」(編集注、英国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダからなる連合)なるものを築けばいいと主張す…続き (5/1)

モスクワの「赤の広場」でスマートフォンを持つ人。ロシア政府はこれまでインターネットを大目に見てきた=AP

AP

[FT]ロシア富豪、中国にネット検閲ノウハウの協力要請

 手に負えないインターネットの統制強化を目指す権威主義的な政府が誰かを招くとしたら、中国の検閲システム「グレート・ファイアウオール」の設計者以上にいい人物がいるだろうか――。
 これがコンスタンチン・マ…続き (4/29)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

リーダーのネタ帳

[PR]