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STAY MINIMAL

決めた1点に全力集中で突っ走る。あらゆる視点から僕なりのまとめや雑記を全力投球でお届け

”マチネの終わりに”読書感想 ー 大人の恋愛小説って悪くない

本・書評

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こんにちは、STAY MINIMALです

今回は本のレビューいきます。

平野啓一郎の「マチネの終わりに」

という本を読みました。いわゆる「恋愛」本です。

感想?

大人の恋愛ってものを見せつけられました

恋愛ってやっぱ誰もが感心のあるテーマ。今回は大人の恋愛メインです。

僕は普段はそんなに恋愛系の本って読まないんですが、この著者が前らか単純に好きだったていうのと本のレビューが抜群に良かったので気がつくとkindleでポチっとクリックしちゃってました。ワンクリックで買えるのって便利だけどちょっと恐ろしかったりしますネ。

平野啓一郎ってどんな著者?

著者紹介はあまり長くはしたくないのでサクッとwikipediaから紹介文を・・・

蒲郡市で生まれたが1歳で父親(享年36)を亡くし、2歳から18歳まで母親の実家があった福岡県北九州市八幡西区で育つ。私立明治学園中学校を経て福岡県立東筑高等学校京都大学法学部卒業。高校時代に80枚の処女長編を執筆。大学では小野紀明ゼミ(政治思想史)に所属し、バーでのアルバイト、軽音サークル、小説の執筆などに重点を置いた生活を送る。

在学中の1998年、執筆に1年を費やした『日蝕』を『新潮』に投稿。15世紀フランスを舞台に神学僧の神秘体験を明治期の作家を思わせる擬古文で描いた作品で新人としては異例の一挙掲載がなされ、「三島由紀夫の再来」と喧伝されるなど華々しいデビューを飾る。翌1999年、『日蝕』により第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞(ただし月数も考慮すると、平野は丸山健二より約6か月年長)。同年、泉鏡花風の幻想譚『一月物語』(いちげつものがたり)を発表。 
参考URL:平野啓一郎 - Wikipedia

福岡育ちってことでこの時点でかなり勝手に親近感湧いてるんですけど(笑)ちなみに僕が初めてこの人を知ったのは雑誌のモーニングに連載されてた「空白を満たしなさい」っていう作品。これも面白くて、妻と子供を置いて死んだはずの主人公が3年後に生き返ってその3年間の空白を埋めていくっていう話。

空白を満たしなさい

空白を満たしなさい

マチネの終わりに あらすじとレビュー

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

まずはじめに内容をそれとなく紹介していくので若干のネタバレも含まれてることをご理解ください。大まかな内容と見どころ、僕なりの感想を書いてみます。

マチネの終わりに 登場人物とあらすじ

特設サイトにも詳しく載ってるのでこちらを参考にしてみるといいです。読者の感想、著者がどういう想いでこの本を書いたのかが記されてます。

『マチネの終わりに』特設サイト|平野啓一郎

<登場人物>

蒔野聡史

38歳、天才ギタリストで数々のコンサートをこなす人気アーティスト。独身。

小峰洋子

40歳、海外の通信社に勤務するジャーナリスト。アメリカ人のフィアンセがいる。

三谷早苗

30歳、蒔野のマネージャー。もともと蒔野の大ファンでその熱い想いから彼のマネージャーを務める。

はじめは蒔野と洋子の二人の恋愛に発展していく。お互いの共通点も多くて、とにかく会って話をした瞬間からお互いに惹かれあっていく。やがて洋子は蒔野と一緒になることを決断しますが、そこにマネージャーの三谷が割って入っていき二人の想いに揺さぶりをかけます。

単なる恋愛だけではなく、お互いの仕事、<ヴェニスに死す>症候群、洋子がある出来事で引き起こすPTSD(心的外傷後ストレス障害)という病気、家族、人種、嫉妬、すべてが絡んで複雑に物語が進行していきます。

近づいたはずの2人の関係を三谷が蒔野と偽ってメールを送ります。そこから2人の関係は壊れ、時が経ちそれぞれ結婚し別の道を歩み始めます。5年が経ったあと、お互いに会うことを拒否してきた二人がまた出会う。

この物語の行方はぜひ本を読んでみてほしい!

大人の恋愛模様

ここでどんな本なのかっていうのはすべて伝えきれません。でも雰囲気だけでも味わってほしいので文中からいくつか気になった表現をピックアップしてみます。

洋子も、自分を愛しているかもしれない。彼女の言動に、そうした徴(しるし)を見出すたびに彼は苦しくなり、そうではないのではと思い直す時にも、結局、苦しくなった。

蒔野がすでに婚約相手のいる洋子に惹かれていく様子。好きになれば相手がどういう状況であれ構わなくなる。たとえ、結婚していたとしても。

もし本当に妊娠しているのなら、彼女(洋子)は蒔野への愛を断念し、リチャードと結婚するつもりだった。それを、運命として受け容れるつもりだった。しかし、思い過ごしであったなら、今はもう、自分の感情に忠実でありたかった。

洋子も次第に蒔野に惹かれていく。もちろん、フィアンセのリチャードがいるにもかかわらずその運命に対して自分で決断を下す。そして深い溝にはまっていく・・・強い女性って惹かれます。

彼女と語らい続けることで、自分が変われるという期待があった。

単純に相手のことが好きなだけでなく、自分の考えや価値観に大きな影響を与えてくれる人ってなかなかいない。そうやってたった3回の出会いで彼らは結婚の話にまで進展していく。

蒔野は、洋子が選ぶくらいなのだから、そのアメリカ人のフィアンセは、恐らく好人物なのだろうと思っていた。しかし、会えば忘れられなくなるに決まっているその男の顔を、わざわざ見たくなかった。

自分の好きな人に相手がいたとして、その人の顔、絶対見たくない。うん。

自分は一体、蒔野のために何ができるのだろうか?自分の彼への愛の実質とは何なのだろうか、と。

こういう根本的な問いになると答えるのって途端に難しくなる。人を愛するって立派な言葉だけど、じゃあ何をって言われると正直すぐに答えは出せなかったりする。

エスカレーターで大江戸線の改札へと向かいながら、三谷はただ、蒔野に洋子と会って欲しくないと思いつめていた。 

 密かに蒔野に想いを寄せるマネージャーの三谷は何としても洋子と蒔野を近づけまいとする。そして、このあと蒔野に成り代わってメールを打つ・「もう会えない」と、自分の好きな人に成り代わって洋子という自分にとって邪魔な存在を消し去ろうとする。

自分は彼を愛しているが故に、彼との愛を断念できるのではあるまいか。ーそれもまた、年齢的な変化なのだろうか?それとも元々、愛とは違った何かだったのだろうか?

考えるほど沼に落ちていくような問いに必死で答えようとする洋子。深いですなぁ。

結婚後の生活が、さほどに不本意だったというのは気の毒だったが、自分自身を省みても、まるで別人の人生を生きているかのように、笑顔の乏しい日々だった。相手のことを心から愛せないという以上に、相手と一緒にいる時の自分を愛せないというのは、お互いにとって大きな不幸だった。

結婚後のすれ違い、気づいてないけどいつの間にか埋められない大きく深い溝になっていく・・・

たとえそれが、人として間違っているとしても。正しく生きることが、私の人生の目的じゃないんです。わたしの人生の目的は、夫なんです!・・・だからお願いします。もう彼の人生に関わらないでください。

たとえ間違っていても、筋が通ってなくて相手を騙したとしても、それで自分の愛する人と一緒になれればそれでいい。いや、本当にそれでいいのだろうか?誠実でなければいけないのか?相手を思うがための葛藤と自分の罪悪感に苦しむ三谷。

本の中でそれぞれの登場人物のたくさんの苦難があります。それを乗り越えていくまでの葛藤、未練、偽りの肯定、気づき、いわゆる大人の対応とそれだけでは解決できない本心とか入り乱れて物語が突き進みます。

音楽が物語のキーワード

クラシックギターの演奏と共に、実際の楽曲も数多く出てきます。その時の情景が音楽と共に思い起こされるようになってます。正直、クラシックって自分じゃなかなか聴こうと思えないんですが、文中に出てきた楽曲をYoutubeで探して聴いてみる。

自分にとってはまた新しい音楽のジャンルの世界を見ることができました。映画化されるとすればきっと多くのメロディが物語に出てくるんだろうなぁと想像しながら読んでました。

例えばこんな楽曲が紹介されてます。

かなり大人ですなぁ。僕も40近くなるとこういうクラシックギターの味わいが分かるような大人になりたいものです。

大人の恋愛って強くて切ない

学生の頃とかは全然気にしてなんかいなかったけど、年齢を重ねると見えてくる「結婚」という言葉、お互いの人生について方向性を決断しなくちゃいけなかったりとかで自由な恋愛ってなかなかしにくくなる。そこに家族とか別の人たちもまた絡んできて、決して恋愛というものが二人の問題じゃなくなってきたりする。不倫、浮気、お金まで絡んだりとか恋愛っていう形や方法も変わっていく。

「でも、好きな人を好きで何が悪いの?」相手を振り向かせるために、どんなに非道で悪いことだって押し通す。罪悪感もなく、「好き」というただそれだけで肯定できてしまう。嫉妬で相手を蹴落としたりもする。

何が正しくて、何が間違ってるのか。お互いに自立した人間だからこそできる相手への配慮、気遣い。時にそんな理性では抑えられない感情的な衝動、そんな葛藤が鮮明に描かれてます。 

恋愛って難しいですよね。些細な一言で相手とすれ違ったりもするし、一瞬でお互いの信頼関係が崩れることもある。逆に一緒に時間を過ごしすぎることで、あんなに好きだった人が突然うっとうしくなったりもする。適度な距離感がありつつ離れすぎてもダメ。

嫉妬、不満、疑い、善意、悪意、同情とかそういう人間臭い全部をひっくるめた「大人の恋愛」が描かれてて、相手との関係性、心境の変化、過去のあやまち、苦いけど強くまっすぐな想いがある。理屈じゃ説明できないような大きな「愛」をこの本に見た気がします。

長くなりましたが、最後に文中には難しい表現も多いのですんなりと物語に引き込まれるまでは時間がかかるかもしれないけど、後半は怒涛の勢いで読めます。久しぶりにいい本と出会えたなぁ。気になった方は是非とも読んでみてください!

マチネの終わりに
▶︎マチネの終わりに

最後にお気に入りの文を本文から。

 

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