熊本を中心とした広い地域で4月14日から相次ぐ地震によって、J2のロアッソ熊本は大きなダメージを受けた。チームは一時活動停止に追い込まれ、被災者である選手たちは避難所や車上で暮らしたり、家族と県外に逃れたりした。
■東京にいては正しい判断できぬ
17日に予定されていた熊本のアウェーの京都戦だけでなく、16日のJ1の福岡―名古屋、鳥栖―神戸なども安全性や交通アクセスの問題で中止とした。
熊本はいつから活動を再開し、リーグ戦に復帰できるのか。Jリーグとしてどのように対応したらいいのか。熊本のために他のクラブができることはないか。
スピーディーに正しい判断を下すには、幹部が現地に足を運ばなくてはいけない。新幹線が止まっている、断水している、地震は断続的に続いている、といったことは報道によって耳に入る。しかし、東京にいたのでは肌感覚で現地の様子を理解することはできず、正しい判断はできない。
町は、人々はどのように傷ついているのか。どんな問題が起きているのか。熊本の選手やクラブスタッフやその家族の精神状態はどうなのだろう。
微妙なところまで感じ取るには現地に行くしかない。私は原博実・Jリーグ副理事長に「どちらかが行くべきでしょう」と話し、結局、原さんが18日に現地入りした。
熊本のリーグ戦復帰の時期を決める判断基準に5つの順番をつけ、原さんに託した。
(1)地元の方々の生活を最優先する。
(2)選手とその家族をおもんばかる。
(3)クラブの職員とその家族をおもんばかる。
(4)地域のサッカー界のことを考える。
(5)最後にJリーグのことを考える。
チームは早期に活動を再開する状態になかった。家族があることだから、選手に試合を無理強いできない。19日に横浜FC戦(4月23日、ホーム)の中止を決め、さらに21日には山形戦(4月29日、アウェー)、愛媛戦(5月3日、ホーム)、札幌戦(5月7日、アウェー)も中止とした。
原さんは現地で、避難所で生活している熊本の選手たちが子どもたちとサッカーをして元気づけるという話を聞きつけ、いっしょにボールを蹴った。
硬直した組織だったら、「いかがなものか」「けしからん」ということになったかもしれない。命懸けで救助活動をしている人がいるというのに、子どもと遊んでいるとは不謹慎ではないか。そんな声があがったかもしれない。
■すべての判断、現場の人間にゆだねる
しかし、現地にいる原さんが「子どもたちを楽しませたい」と感じたのなら、それが正しい判断に違いない。そういうことも含めたすべての判断を現場の人間にゆだねるべきだと思う。
原さんの口癖の「やっちゃおうか?」「やっちぇえば」というのは言い得て妙で、そこには判断のスピード感が含まれている。