単に自身の興味で宇宙関係の資料を閲覧していたら、うんちに関するエピソードを見つけたので、ここで紹介します。
遡ること50数年、1961年4月12日、人類初の有人宇宙ロケットが旧ソ連によって打ち上げられました。
乗員は、かのユーリ・ガガーリン氏。氏の「地球は青かった」というフレーズは誰でも聞き覚えがあると思います。
その後、米国のアポロ計画では月面着陸が果たされ、スぺースシャトルでは地球と宇宙を地球行き来できるようになり、さらに大規模な国際宇宙ステーション(ISS)が開発されたりと、現在も宇宙開発の歩みは止まることなく進んでいます。
ここで、宇宙飛行士の日常に注目すると、宇宙空間といえども、そこには人の生活があります。
当然、睡眠をとったり、食事をしたりするわけですが、かつての宇宙飛行で何よりも大変だったのは、うんちとおしっこの後始末だったようです。
実際、初期の宇宙飛行士は、宇宙服の下に常時オムツをしていたといいますから、その苦労がわかりますね。
そもそも、宇宙飛行士がどのように用を足すかというと、現在はトイレで排泄しますが、アポロ計画の頃までは、ロケットにトイレがなかったそうです。
ではどうしていたかというと、おしっこは管のついた採尿袋に放出・収集し、溜まったら宇宙空間に捨てていたんです。
捨てたおしっこは、真空・低温の世界で細かな氷の粒となり、そこに太陽光が当たると、まるでダイアモンドダストのように輝いて見えるといいますから幻想的ですね(笑)。
一方、うんちは、接着剤のついた袋をおしりにあてがって排泄し、袋に詰めて地球に持ち帰っていました。
排泄行為中は、なにせ無重力空間なので、踏ん張りがきかず、やっと出したものがプカプカと遊泳するわけですから、宇宙飛行士にはたいへん不評だったようです。
うんち袋破裂事件発生!!
米国は、1959年~1963年にかけて、初の有人宇宙飛行計画であるマーキュリー計画を実施し、それに続くジェミニ計画では、1965年~1966年の間に10名の宇宙飛行士が地球周回軌道を飛行しました。
ジェミニ計画の目的は、その後実施された、月面着陸を目標とするアポロ計画において必要とされる宇宙遊泳による船外活動やランデブー、ドッキングなどの、より発展的な技術を開発することでした。
ところで、ジェミニ宇宙船は2人乗りでしたが、スぺースを切り詰めた船内にトイレはありませんでした。
でも、人は宇宙においても排泄する必要があります。
前述した通り、おしっこは掃除機のような機器で吸い取り、うんちはお尻に防腐剤入りの排泄用袋をあてがって、その中に排泄し、その後は袋をよく揉んで内包されている防腐剤と混ぜ合わせ、収納箱の中に入れておかなければなりませんでした。
1965年12月4日、ジェミニ7号が2週間の宇宙滞在予定で打ち上げられました。
そして、打ち上げ後1週間ほど経ったときに、事件が起きたんです!
最初は、収納箱がある棚のから異臭が漂ってきたそうです。
不審に思った乗員が箱を開けると、格納してあった排泄袋の中身が飛び散りました。
おそらく、排泄物と防腐剤との混合が弱くて、袋の中で発酵が進みガスが発生し、膨らんで穴が開いてしまったのでしょう。
宇宙船の中は、うんち臭が充満したことは想像できますよね。
異臭の中、残りの1週間を過ごした2人の宇宙飛行士は地上に帰還した後会見に臨み、ある記者がこの件に関してコメントを求めたとき、「君は、トイレの中で1週間過ごしたことがあるか」と、ムッとした顔で言い放ったそうです(苦笑)。
現代の宇宙船のトイレ事情
現在、国際宇宙ステーション (ISS)への往復やステーションからの緊急時の脱出・帰還用として使用されているソユーズ宇宙船の船内にはトイレがあります。
ただし、そのトイレはあまり使われていないかもしれません。
というのは、ソユーズ宇宙船は打ち上げ後、国際宇宙ステーションに2日ほどで到着するのですが、乗員は宇宙船に乗り込む前に、肛門にパイプを突っ込まれて、強制的に生理食塩水を注入され、うんちを出し切っているんです。
なので、2日間くらいはトイレに行かなくて済んでいるんではないか、と想像できるわけです。
でも、トイレが近い、遠いは個人差があるので、なんともいえませんが(笑)
それから、国際宇宙ステーションにももちろんトイレがあります。
形式は洋式トイレ風で、無重量状態で体が浮かないように固定してから、掃除機のような機器で吸い込む方式で、吸い込みロの直径は10cmくらいといいますから排泄し損ねることはないのでしょうが、飛行前の地上訓練ではトイレの使い方もしっかり練習するそうです。
ちなみに、宇宙遊泳の最中は現在も紙オムツを使用しています。
2008年5月には、国際宇宙ステーションの唯一のトイレが故障するというハプニングが起きました。ちょうど第17次長期滞在が実施されている期間だったため、乗員は一時ドッキングされたソユーズ宇宙船のトイレを使って難をしのいだそうです。
その後故障したトイレは、新しいものに置き換えられました。
2009年から、国際宇宙ステーションはそれまでの3人体制から6人体制に変更されたため、トイレの増設が必要になりました。
NASAはアメリカ側モジュールに新たなトイレを設置するため、ロシア側に1900万ドル支払ったということです。
トイレを1基増設するのに19億円以上もかかるなんて、規模が大きい...いや大き過ぎる話です(苦笑)
2009年~といえば、日本人として初めて若田宇宙飛行士が第18次、第19次、第20次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに長期滞在しました。
ということは当然、若田さんも新設されたばかりのトイレで用を足したということになりますね←どーでもいい話でスミマセン(汗)
国際宇宙ステーション内で排泄されたうんちは、真空状態でで水分を飛ばしてから、地球との往復に使うプログレス輸送機に保管し、プログレス輸送機が地球に戻るときに容器ごと宇宙に放して摩擦熱で燃やしてしまうそうです。
それから、おしっこはというと、以前は宇宙空間に放出して消滅させていましたが、現在はリサイクルして、なんと飲料水に再利用しているんです!ちょっと驚きですよね?!
最後に、排泄ついでに、宇宙でのおならの話です。
地上でおならをすると、たとえ相当臭いものでも周りの空気と混じって薄められて、スグににおわなくなりますが、宇宙空間でおならをすると、空気の対流がないので宇宙船内の1ヶ所に漂い続けることになり、それが鼻腔を直撃すると「気絶するほどの悪臭」に見舞われるそうです。
また、おならには水素やメタンという可燃性のガスが含まれているため、電気系統との接触や静電気などで引火して、事故に発展する可能性もあります。
さらに、無重力状態では、放屁の反作用で体がおならロケット状態になり、前方へ飛んでいってしまうことがあります。
なので、宇宙船内や国際宇宙ステーションでおならをするときには、必ずトイレでする決まりになっています。
華々しい活動状況ばかりがクローズアップされる宇宙飛行士ですが、見えないところで多大な苦労をしているんですね。脱帽。