韓国のある男性会社員は第1子の娘が産まれた後、2人目は絶対に息子がほしいと思い、評判の韓方(韓国の伝統医学)医院で産み分けのためのタイミング指導を受けた。だが、緊張のあまり指定された日時に性交することができなかった。超音波検査で胎児が女児と分かると妻は中絶手術を受け、再び苦労を重ねた末にようやく息子を授かった。
小説のような話だが、今の50代半ばから後半の人が若いころには、こうしたことが珍しくなかった。超音波検査を受けると、医師が男児なら「将軍さん」、女児なら「暮らしの元手」などと言って、それとなく胎児の性別を教えてくれたりしていた。1984年に超音波検査装置が国産化され、安価な装置が全国に普及したことで、男児を選んで出産するケースが本格的に増え始めた。
韓国で男児が女児を初めて10%上回ったのは86年だ。このとき産まれた男児は今、なかなか結婚できない状況にある。86年から2002年までの17年間に産まれた女児は、男児より62万人も少ない。婚姻件数がここ数年減少を続け、昨年には人口1000人当たりの婚姻件数が過去最低を記録したのは、その後遺症だ。今年は結婚適齢期の女性(26-33歳)が適齢期の男性(28-35歳)よりも37万人少ない。自然の摂理に反した妊娠に対する報いだ。米国や日本など多くの国は、男児が女児より約7%多い程度だ。
80年代後半から2000年代前半にかけて産まれた男児は、跡取りとして大切に育てられた。だが学校のクラスでは女子が男子より4-5人少なく、ガールフレンドをつくるのも大変だった。ある大学生は「大学、それも文系の大学に入って初めて女性の方が多いという状況を経験した」と語る。