「中国当局者は私を頻繁に殴り、蹴りました。当初は木の棍棒でよく殴られました。肋骨が折れ、膝の関節が脱臼したこともあります。また、体のいろいろな部位に電気ショックを起こす器具を押し付けられました。両手を背中で縛られ、天井のフックから宙釣りにされたこともあります。
中国当局はいつも『中国に拷問はない』と否定しますが、私自身が拷問を受けた体験者です。チベットの伝統的な宗教や習慣を守ろうとする多数のチベット人が今も不当に逮捕され、拷問を受けている証拠が多数あります」
3回逮捕され拘束されたジグメ氏
ジグメ氏は地元チベットでは、宗教面だけでなく貧困層の救済や天災被害者の支援などでも指導的な役割を果たしてきた。しかし、前記の映画製作への関わりを理由に2008年に逮捕され、7カ月間ほど拘束された。2009年後半にも「国家機密を暴露した」という理由で数カ月拘束された。
さらに2012年にも中国当局に逮捕された。このときは、当時チベット全土で頻繁に起きていた、中国当局の弾圧に抗議する焼身自殺の「主要な扇動者」という容疑をかけられた。そして逮捕後すぐに肉体の不調を理由に特殊な病院に入院させられることになった。過去の事例からこの種の病院では殺される危険があると判断し、脱出を図って成功したのだという。ジグメ氏はチベットに1年半ほと潜伏し、2014年5月にインドに脱出。その後、スイスへの亡命を認められた。
このようにジグメ氏は2008年から2012年の間に中国当局に3回逮捕され拘束されている。その悲痛な体験を基に、今回、米国の公聴会で初めて証言したのである。
中国当局による人権弾圧の実態、そして正面からその弾圧を非難する米国の姿勢など、今後の中国との関係のあり方を考えるにあたって、日本にとっても貴重な材料となるだろう。