未知の新粒子を探せ 巨大装置で実験開始へ

1周が27キロある巨大な実験装置で、宇宙が誕生した直後の状態を再現し、人類にとって未知の新たな粒子を探そうという実験が、今月からスイスで、日本も参加して始まることになりました。これまでに人類が発見した物質は宇宙全体の4%にすぎず、残る96%は謎のままで、新たな粒子が発見されれば、その正体に迫れると注目されています。
実験が行われるのは、スイスのジュネーブ郊外にあるCERN=ヨーロッパ合同原子核研究機関で、1周27キロという東京の山手線と同じくらいの、加速器と呼ばれる巨大な実験装置を使って行われます。
この中では、物質のもとになる陽子を光に近い速さまで加速して正面衝突させ、宇宙誕生直後の状態を再現して、生み出されたさまざまな粒子の中から、人類にとって未知の新たな粒子を探します。
宇宙を構成する物質を巡っては、20世紀の物理学の「標準理論」では、物質のもととなる「素粒子」が17種類あると予言され、4年前に最後の1つ「ヒッグス粒子」が発見されて、そのすべてが確認されました。ところが、このようにして人類が発見した物質は、17種類すべてを合わせても宇宙全体の4%にすぎず、残る96%は謎のままになっています。
こうしたなか、CERNでは去年、実験装置の性能を高めて、より大きな力で衝突実験を行ったところ、これまでに知られていない新たな粒子が存在する可能性を示すデータが得られたということです。
このためCERNでは、今月から本格的に実験を開始し、日本からも東京大学などの研究者およそ100人が参加して、新たな粒子の発見を目指すことになりました。実験には少なくとも数か月かかる見込みで、発見されれば、宇宙の残る96%の謎に迫れると注目されています。
研究グループによりますと、新たな粒子が見つかった場合、その粒子は、まだ正体が分かっていない暗黒物質や、私たちが知っている4次元を超える5次元や6次元の存在を示すものになる可能性があるということで、世界の研究者がさまざまな仮説を立てて議論しています。

日本の研究者「国際競争 一番最初に見つけたい」

新たな粒子の発見に挑む日本の研究グループの代表を務める、東京大学の浅井祥仁教授は「新たな粒子が見つかれば、今後100年間の物理学の方向性を決めるくらいの大きな結果になると思う。新粒子の発見は国際競争で、世界から集まった3000人の研究者の中で日本人は100人くらいしかいないが、それでもみんなで一生懸命に努力し、ぜひ一番最初に見つけたい」と話しています。