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「ひとみ」失敗 連鎖ミスの徹底究明を

 交信途絶が続いていたエックス線天文衛星「ひとみ」の運用を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が断念した。電力を供給する太陽光パネルが機体から全て外れており、機能回復はできないと判断した。

     日本のエックス線天文学は、銀河中心部に超巨大ブラックホールが存在する可能性を突き止めるなど、これまで数々の成果を上げてきた。ひとみは世界的にも注目を集めていただけに、極めて残念な結果だ。

     衛星の姿勢制御ミスが重なって機体が異常な速度で回転し、太陽光パネルの取り付け部などに想定外の力が加わったことが、機体分解の原因だという。JAXAはなぜミスの連鎖が起きたのかを徹底的に究明し、再発を防がなくてはならない。

     ひとみは今年2月、H2Aロケット30号機で打ち上げられた。日本のエックス線天文衛星としては6代目で、約310億円が投じられた。

     ひとみとの交信が途絶えたのは3月26日だ。JAXAによれば、制御システムの誤作動でひとみが自らの姿勢を把握できなくなり、回転を始めた。回転を止めようと小型エンジンを噴射したが、地上から送っていた噴射手順のデータに誤りがあり、逆に回転を速めてしまった。その結果、機体が分解したらしい。

     制御システムの誤作動や、噴射手順のデータの誤りを事前にチェックできなかった理由は、まだ分かっていない。他の衛星でも同様のトラブルが起きないか点検が必要だ。

     日本のエックス線天文衛星は、2000年2月にアストロEの打ち上げに失敗した。05年7月に打ち上げた5代目の「すざく」も、観測装置のトラブルで予定通りの観測ができなかった。これで3基連続のトラブルで、日本の衛星運用への信頼が揺らぎかねない事態である。

     世界の研究者に与える影響も大きい。ひとみには最新鋭のエックス線望遠鏡とエックス線検出器が搭載され、米航空宇宙局(NASA)をはじめ世界の研究者200人以上が開発に参加した。本格運用開始後は、他国の研究者からも観測テーマを公募して運用する「公開天文台」となるはずだったからだ。

     3月までの試験観測では従来にない高解像度の観測データが届き、研究者の期待は高まっていたという。

     ひとみの次のエックス線天文衛星は、欧州宇宙機関(ESA)が28年に打ち上げを計画しているだけで、研究に12年間の空白が生じる可能性がある。ひとみの後継機の開発に期待する声も出るかもしれない。同じ設計なら、開発期間は短く、費用も削減できるだろう。

     だが、まずはミスの原因究明を最優先すべきで、議論はその後だ。

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