メーデー 「働く」をもっと考える
連合系のメーデー中央大会がきのう、東京・代々木公園で開催された。「労働者の祭典」に、改めて働くことについて考えたい。
低賃金の非正規雇用が全体の4割になる一方、長時間の過酷な労働で過労死する正社員も後を絶たない。劣悪な労働条件で若者を食い物にする「ブラックバイト」も横行している。多様で切実な課題が労働に関して持ち上がる時代になった。
メーデーは1886年に米国の労働者が低賃金と長時間労働の改善を求めてゼネストを行ったのが始まりとされる。連合のメーデーのリーフレットに「8時間は労働に、8時間は眠りに、そしてあとの8時間はわれわれの自由に」の言葉が掲げられているのはそのためだ。
ところがスローガンとは逆に、日本では1990年代から長時間労働による労災や過労死が増え続けてきた。経営者がコスト削減のため低賃金の非正規雇用を進め、それに伴って数が減り続けている正社員に仕事が集中するためだ。経済のグローバル化で24時間の企業活動が求められ、消費者のニーズに応えるため土日や深夜の営業が増えていることも業務量の増大をもたらしている。
労働基準法は働く人を守るための法律だが、政府は経営者側の要求に応えるかたちで同法を改正し、労働時間規制を緩和してきた。連合は長時間労働の改善を主張してきたが、残業代が減ることを懸念する現場の労働者からは賃上げを優先する声が強いというのが現状だ。
その間、労働組合は加入者が減って衰退の一途をたどってきた。連合が発足した89年には労組の組織率は25・9%、組合員数は1223万人だったが、2014年には17・5%、985万人にまで減少した。
春闘でも大企業の正社員の賃上げ要求が中心で、賃金以外の労働条件や組合に加入していない非正規雇用の労働者の待遇の改善に関しては対応が遅れてきた。労組にかつてのような社会的存在感や政治に対する影響力が見られなくなった一因とも指摘される。
ただ、今年の春闘では政府の賃上げ要請を受けながらも、大企業の労組は要求水準を抑えめにし、下請け企業へ利益を適正に配分するよう経営側に求めた。その結果、多くの中小企業で大手を上回る賃上げ回答が見られている。非正規のパート職員の労組加入も増えている。
現政権は同一労働同一賃金の導入を目指している。非正規社員の賃金を上げようとすると、正社員の働き方や賃金水準にも影響する可能性がある。働く人全体の利益のためにどのような運動を展開するかは労組にとっても試金石になるだろう。