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こじらせ男子による、こじらせ男子のための、こじらせ男子をもっとこじらせる本,
2014/12/11
レビュー対象商品: 男子の貞操: 僕らの性は、僕らが語る (ちくま新書 1067) (単行本)
男性にとってのオナニーや性風俗利用の際の後ろめたさを説明しようとしていて、それは確かにある程度成功している。
しかし、解決法や筆者の説く「あるべき姿」にはなかなか同意できなかった。
まず、モテない男性はメディアの性産業を利用して性欲の処理をしているのだが、それは良くないのだそうだ。
女性の蔑視につながるし、男性自身の自尊心も傷つける。
では何を利用してオナニーすればいいのかというと、「過去の豊かな性体験」を思い出せばいいのだそうだ。
豊かな性体験というのは、本当に絆を感じる愛する女性との性体験とのこと。
「パンがないならケーキを食べればいいじゃない」とでも言われた気持ちになるが、豊かな性体験を得るのはとても簡単なことだそうで、「自分の共同体でみんなのために一生懸命頑張れば、その中で誰でもすぐに性体験の相手は得られる」のだそうだ。
この理屈に「その通り!」と同意できる男性は少ないだろう。
そもそも「共同体」に自分の好みの女性がいるとは限らないし、その女性が性体験をさせてくれるとも限らない(当たり前だが、させてくれる方が少ない)。
この手のフェミニストの方々は「好みの女性」などというと、「女性の素晴らしさを分かってない!」と反論されそうだ。
しかし翻って女性による男性の好みにに対しては「女性のフェチは実に様々なのです」などと、認めるどころか昇華すらさせてしまう。
この先は本に書いていないことで、ある程度筆が滑ってしまっているかもしれないが、この手の男性フェミニストは大抵ナイーブな学生時代に同世代の女性の性に対する奔放さへの深刻な当惑と疑問、それをもてあそぶ男性への怒り(と嫉妬)を説明付けようとしてこういう考えにたどり着くのではないか。
この本の内容をじっくり考え、実践しようとすると、この本を手にとっている時点ですでに女性に対してこじらせているだろう多くの男性読者は余計に女性に対して身動きがとれなくなってしまうだろう。
「フェミニズムをきちんと考えていて、女性に優しいです。豊かな性体験をさせて欲しいです」などという男性を女性はどう思うだろうか。気持ち悪いと思うのではないだろうか。
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