崩壊が懸念される市道。右が八幡プール、左は不知火海=水俣市
八幡プールは水俣川河口左岸にある。水俣病発生当初、水俣湾に排水を流していたチッソは1958年、排水を八幡プールに一時貯蔵した後に不知火海に流すようになり、汚染が拡大。その後、チッソが埋め立てた。
市道は、不知火海と水俣川河口を隔てるように八幡プールの周囲を走っており長さ約1・2キロ、幅2~7メートル。もともとチッソの管理道路で市が譲渡を受けたが老朽化しており、現在立ち入り禁止になっている。
市は昨年度まで市道を調査し、幅数センチのひび割れや鉄筋の腐食、護岸のゆがみなどを確認。「今すぐ崩壊する恐れは低い」としながらも、市道の全面改築を計画し、環境アセスメントや設計の費用約5500万円を本年度予算に計上した。
ところが、熊本地震が発生。市土木課が見回りを強化したところ、新たなコンクリートのはがれやひびの拡大が見つかった。活断層の日奈久断層帯に近く、同課は今後の強い地震を懸念している。
一方、チッソの事業会社JNCは14日以降、現在所有する廃棄物処分場跡の約20万平方メートルを調査。「異常はない」としている。
同プールの一部は86年に市が購入し、下水処理場とごみ処理施設を建設した。市が87~88年度に2施設の土壌を調査した記録によると、土壌1キログラム当たり最大で総水銀11・80ミリグラムを検出。ヒ素、鉛などの重金属も含まれていた。
熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は「地震で液状化を起こす恐れもある。行政が調査し、リスクの再評価を急ぐべきだ」と指摘している。(隅川俊彦)
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