(引用:http://honvieew.com/business/1613)
かるび(@karub_imalive)です。
ここのところ、「読書」に力を入れています。
人生80年として、今ちょうど40歳である自分の、後半生の血肉になって世界を広げてくれるような知識や教養を一杯身につけたい。そのために、いろんなジャンルを読んでいきたいなと思っています。
元々読書は大好きで、小学校の時などは暇さえあれば図書室へ通っていた位本の虫だったのですが、社会人になってから可処分時間が減ってからは、がくっと読書量が減りました。20代後半~30代前半にかけては、自己啓発書や仕事の実用書は結構読みましたが、それは厳密な意味で「読書」と言えるものではなく、今振り返ってみると、そこからはあまり本質的な学びはありませんでした。読書、という観点だけで見ると、自分の社会人生活は「失われた17年間」だったな・・・と(笑)
そこで、今年の3月頃から、1日1冊を目標に、知識・教養を補強するため、あらゆるジャンルの本をとりあえず乱読・多読することに決めました。小説やエッセイからノンフィクション、人文・社会科学系から自然科学系まで、古典・新刊を問わず、目についたものを片っ端から試しています。
特に、高校時代で選択必修の際に選ばなかった「世界史」やそれに続く「現代史・時事ニュース」については、非常に知識が弱く、このあたりは入門書から入っています。
そこで、見つけたのが「池上彰」の一連の本。図書館に行っても、古本屋の100円コーナーにも大量に転がっています。その膨大な流通量の割には、HONZなどの書評では、あまりレビューされてなくて、きっと適当な本を粗製濫造してるんだろうな、と思って、最初はスルーしていました。というか、最初見た時芸能人だと思ってた(笑)
でも、世の中に大量に流通しているということは、必ず売れている理由があるということです。きっと何かしら良い点があるのだろう、食わず嫌いはよくないな、と思って、思い直して古本屋で何冊か軽い気持ちで買ってみたのですが、これが意外によかったのです。それ以来、本屋や図書館での試し読み・立ち読みを含め、20冊ほど固め読みしてみましたが、読めば読むほど硬派でしっかりしたジャーナリストなのだということが分かりました。何が芸能人だ・・・
ということで、前置きが長くなりましたが、今日はこのエントリで、池上彰の何が凄いのか?書いてみたいと思います。
どんなジャンルの本を書いているのか
池上彰は、元NHKの政治記者で、2005年にNHKを退職して独立。現在はフリージャーナリストとしてテレビ・講演活動・大学教授・著作家とマルチな活躍をしています。池上彰氏の著作をAmazonで調べると、5月1日現在、共著も含めると364冊も出てくるほど、大量の著作を残しています。
主なジャンルは、「近現代史」「時事ニュース」「国際情勢」から「教養論」「コミュニケーション論」「自己啓発」「マスコミ論」など、人文/社会科学系の主要論点であれば、ほぼ百貨店的に全領域でほぼ網羅されています。中でも一番得意なのは、ジャーナリストとして長年積み上げてきた膨大な知見が売りである「時事問題」「国際ニュース」「近現代史」といったところでしょう。
逆に、「サブカル」「科学系」「IT系」「芸術・文化系」はそれほど強くない印象です。未だにTwitterアカウントや公式ブログを持たない所や、新聞のクリッピングを日課にするなど、デジタル系サービス・機器には疎いところが垣間見えます。(参考文献:『学び続ける力』)
池上彰の本がすごい3つの理由
ここ2週間ほど、20数冊一気読みしてみて自分が感じた池上彰の凄さは、一言で言うと「信頼感」です。ジャーナリスト・評論家として、この人の言っていることは信用できるのか?と考えた時に、内側から滲み出る安心感みたいなものが常に醸しだされている。
その安心感はどこから来ているのだろうか?と考えたのですが、その理由は主に以下の3つに集約されると思います。
1、わかりやすく伝える力を極めている
池上彰が評価される一番の理由は、これだと思います。元々、テレビでの時事ニュース解説等で、「わかりやすさ」は評判でしたが、その自身の知見を新書にまとめて書き下ろした2007年の『伝える力』 はベストセラーになりました。
彼の著作の凄いところは、単に情報量を削って物事を安易に単純化しているわけじゃないところです。わかりやすさを優先しながらも、必要充分なレベルの分析と情報量が確保されている。
本質をつかむまで、徹底的に自身で掘り下げて勉強した上で、長年培ったコミュニケーション技術を応用して、わかりやすい文章へと噛み砕いていく、いわゆる和文和訳的な作業を、極限まで突き詰めています。
一見、簡単そうですが、やってみるとこれが非常に難しいのです。いわゆる、「NAVERまとめ」的な無料媒体の表面的なキュレーション記事なら我々素人ブロガーでもできますが、そういった無料ブログレベルとは、一線を画すクオリティです。
2、徹底した現場主義
1950年生まれの池上氏は、もう66歳。サラリーマンならもう定年です。もう充分ご老体なのに、今でも必ず年に数回は世界中のニュース現場に出かけていきます。
特に、イラクやリビア、ヨルダン、パレスチナといった中東の紛争地域にも危険を顧みずガツガツ出かけて行き、取材して一次情報を取りに行く姿勢は素晴らしい。実際に、宿泊したリビアのホテルは、その後、内乱で爆撃されて跡形もなくなったそうです・・・。
現場に行かないと決してわからないであろう、池上氏自身の五感で感じた現場での肌感覚を、著作の中で凝縮して反映することで、わかりやすさにリアル感や凄みが加わり、説得力が増しているのだと感じます。
安易にネット上などの二次情報をまとめるのではなく、一次情報の取得に余念がない貪欲な姿勢は、場末のブロガーとしても見習わないとなと思っています(笑)
3、ジャーナリストとしてのプロ意識と日本人的感性
どんなジャンルでも、一流のプロは奢ることなく技芸や知識を貪欲に追求するものですが、業界を代表するジャーナリストとして活躍する池上も、著作「伝える力」で
知ったつもりになっても、実は知らないことは、誰しも山ほどあります。謙虚になれば、それが見えてきます。逆にいうと、謙虚にならないと何も見えてこないし、成長も上達もしません。[・・・]三十数年間におよぶジャーナリスト生活を振り返って、一つ明らかにいえるのは、よけいなプライドを持っている人は、「そこまで」だということです。意味のないプライドが邪魔をして、成長できるせっかくのチャンスを自らみすみす逃してしまうのです。
このように書いています。キャリアを積み重ねても、まだまだわからないことは沢山ある、という謙虚な姿勢が非常に共感を呼ぶのです。超多忙な毎日の中、日々の取材の他に毎朝全国紙5紙に目を通し、年間300冊読書するアグレッシブな姿勢はプロそのものですね。
また、取材する際は、良い意味での日本人としての美徳や、大衆としての目線をベースとして、権力に対して物怖じせずズバッと切り込んでいく、いわばジャーナリストとしての美徳・プライドも著作からはビシビシと感じられ、読んでいて一種の爽快感ももたらしてくれます。
特におすすめの著作を幾つか紹介します
1、「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズ
2009年以来、1年に1冊ずつ上梓されている、定番のベストセラーシリーズです。最新刊は5月10日に「7」が出版されます。世界のリアルタイムでの国際時事ニュースを、極限までわかりやすく解説した本です。教科書的に事実が単に羅列されているわけではなく、近現代史や文化史や経済学的な観点から掘り下げて、ストーリー仕立てでビジュアルも交えた説明もあり、理解を促進する仕掛けが満載。アメリカやアジアだけでなく、ロシア、イスラム圏、アフリカなど、全世界での時事トピックをまんべんなく網羅していますので、これはおすすめ。
ぼくは、図書館で全部借りて、それぞれ1度ずつ読み返しましたが、このシリーズが一番役に立ちました。最新の「7」は早速キンドルでポチりました。早く読みたい!
2、「伝える力」シリーズ
いわゆる「自己啓発系」ジャンルでは一番良く出来た本だと思います。ベストセラーとなり、フォロワーとなる類似書もたくさん出版されました。2007年に出版された「伝える力」では、仕事や生活におけるコミュニケーションのあり方や姿勢について、2011年の「伝える力2」ではそれを踏まえたより詳細なコミュニケーション技術について、池上氏の長年のジャーナリストとしての経験からノウハウが語られています。ここでも、やはりキーワードは、「わかりやすさ」でしょう。如何に「わかりやすく」物事を伝えることが大切か、非常に平易な語り口で書かれています。
3、池上彰の「経済学」講義 歴史編
現在、東工大でも講義を受け持つ池上氏ですが、少し前に愛知学院大学でも教壇に立っていました。その愛知学院大学での「経済学」講義15回分を収録・編集した実況中継的な本です。20世紀の終戦直後あたりから日本・世界の現代史を踏まえながら、経済に焦点を当てて解説されています。現代史と経済について二つを一気に学べる、濃い内容の本でした。東工大の講義本よりこちらの方が内容は濃いかなと思います。
さすがに濃い内容なので、かなりの学生が単位を落としたらしい(笑)授業はわかりやすくて、テストも持ち込みオール可なのですが、池上先生の授業は採点は厳しかったそうですね。
まとめ
そういえば、もうすぐ日本でも秋には衆参同時選挙が見込まれていますね。またテレ東系列では,選挙速報での「池上無双」が見れるのではないでしょうか。前回の衆議院選挙速報で見せた、時には政治家を怒らせるくらいズバッと端的に歯切れよく切り込む姿勢は、日本中の視聴者に感嘆の嵐を巻き起こしました。
池上彰の本は、書評サイトや、知識人系の書いた「読書推奨本リスト」にはほとんど挙げられることがなく、やや過小評価されているきらいがあります。恐らく、そんなの簡単すぎていまさら読まなくても・・・と思われているんでしょう。
そんな風に思っている人ほど、一度図書館などでいいから手にとってみてほしいです。読み進めると、自分が如何に理解があやふやだったか認識させてくれる良書が多いですから。
物事を難しく語るのは誰でもできますが、誰でもわかるよう簡単に説明するのは、一見易しそうに見えて、実は奥が深く修養を必要とするのです。そんなわかりやすく伝えるプロである池上氏の本は、実務的にも、教養を広げるための第一歩としても、幅広く仕えるんじゃないかなと思います。
それではまた。
かるび