改善に向かうのかどうか、なかなか方向感が定まらない。それが今の日中関係である。

 岸田外相がきのう、北京で中国の王毅(ワンイー)外相と会談した。国際会議を除けば、日本の外相の訪中は実に4年半ぶりだった。

 隣国の政府間の往来と対話がこんな乏しさでは、堅牢な互恵関係がいつ実現するのか、両国民も期待するのは難しい。

 今年は9月に杭州で主要20カ国・地域(G20)首脳会議があり、安倍首相が訪中する。日中韓による首脳会談の年内の日本開催も予定されている。

 日中両政府は地域と世界での責任を自覚し、対話を軌道にのせ、しっかり安定したものにしてもらいたい。

 両国間には、以前と変わらぬ懸案がある。歴史認識問題と、東シナ海の尖閣諸島と資源開発をめぐる摩擦だ。解決の難しい両問題の表面化を最近は抑えてきたが、新たに前面に出てきたのが南シナ海問題である。

 中国の一方的な岩礁埋め立てを批判する米国やフィリピンなどと、日本は自衛隊の活動を含めた連携を強めている。

 広島で4月にあった主要7カ国(G7)外相会合では、日本は海洋安保に関する声明をまとめ、大規模な埋め立てや軍事利用の自制を求めた。

 これに対し中国側は、日米ともに南シナ海問題の当事者ではない、と反発している。王外相は、とくに日本に対し「関係を改善したいという一方で、様々な場面で中国に難癖をつけている」と非難を強めてきた。

 だが外交はしばしば、協力と対立が同居するものだ。問われるのは、対立点よりも一致点の価値を高め、互いに利益を広げようとする知恵と工夫である。

 今の両政府間にはその十分な努力の跡がみられない。逆に、少ない対立点が関係全般に悪影響を及ぼしている。今年1月の北朝鮮の核実験後、外相間の電話会談を2カ月以上、中国側が拒んだのは子供じみている。

 南シナ海は世界屈指の海上交通路であり、日本と周辺国が関心をもつのは当然だ。相手の行動に不満があるからといって対話を滞らせるようでは、責任ある大国の態度とは言えない。

 日中両政府はもう一度、一昨年の首脳会談で確認した「戦略的互恵関係の進展」の目標に立ち返ることが求められる。

 ハイレベル経済対話の開催と、防衛当局間の海空連絡メカニズムの実現を急ぐべきだ。安保上の対立を防ぐ交渉を進めつつ、経済、環境といった喫緊の課題で協力の成果を積みあげてゆく工夫を紡いでほしい。