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日中、関係改善へ努力で一致 「南シナ海」は平行線
岸田外相、李首相と会談

2016/4/30 20:58 (2016/4/30 22:40更新)
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 【北京=秋山裕之】岸田文雄外相は30日、中国ナンバー2の李克強首相や王毅外相ら要人と相次ぎ会談した。李首相とは停滞している日中関係の改善に向けて双方が努力することで一致。不透明感を増す世界経済の安定と発展へ協力を申し合わせた。外相会談では対立する南シナ海問題や東シナ海の問題で改めて懸念を伝えたが、平行線をたどった。

会談を前に中国の李克強首相(右)と握手する岸田外相(30日、北京の中南海)=共同

会談を前に中国の李克強首相(右)と握手する岸田外相(30日、北京の中南海)=共同

 外相の訪中は、国際会議を除くと民主党政権下の2011年11月以来。岸田氏は一連の会談を終え、記者団に「日中間の歯車を回す端緒になったと思う」と語った。

 岸田氏は中国外交トップの楊潔篪国務委員(副首相級)とも会談した。昨年4月以来となる日中首脳会談の早期実現に向け、外相らハイレベルの対話を積み上げていくことで一致した。

 李首相は会談で「改善の勢いを保ち、両国関係をもう一度、正常な軌道に戻れるようにともに取り組んでいくことを望んでいる」と強調。一方で「関係改善の基礎はまだ確固たるものではない」とも指摘した。

 外相会談は昼食会も合わせると約4時間20分に及んだ。王氏は今年後半に日本で開く日中韓首脳会談の地ならしとなる3カ国外相会談に合わせて来日する意向を示した。

 岸田氏は日中の協力関係を深めるため、当面力を入れるべき分野として(1)マクロ経済・財務・金融(2)省エネ・環境(3)少子高齢化(4)観光(5)防災――を提起。3つの課題としては北朝鮮、国連での協力、テロ対策・中東情勢を挙げた。日中の人的交流拡大に向け、中国人に対する査証(ビザ)の発給要件を緩和することを伝え、王氏は歓迎した。

 中国外務省によると、王氏は会談で「二度と中国脅威論や中国経済衰退論をまき散らすべきではない」などとクギを刺した。一方で「17年は国交正常化から45周年、18年は平和友好条約から40周年。中日関係を改善させる重要な時期だ」とも指摘したという。

 一方、日本側は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮への対応をめぐって、日中両外相が深刻な懸念を表明したとしている。北朝鮮を制裁する国連安全保障理事会決議の厳密な履行を含め、緊密な連携で一致した。

 日中関係は14年11月の安倍晋三首相と習近平国家主席による会談を踏まえ、関係修復に向けた機運が生まれていた。しかし、中国が人工島造成で軍事化を進める南シナ海などの海洋安全保障をめぐる対立から、昨秋以降は足踏み状態が続いている。今回の会談では、両国とも南シナ海問題についての具体的なやりとりは明らかにしていない。

 日中がこれまでに合意している東シナ海のガス田協議の再開や、偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の運用開始については、いずれもメドが立っていない。

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