情報の自由な流通を G7情報通信相会合で共同宣言

情報の自由な流通を G7情報通信相会合で共同宣言
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高松市で開かれていたG7=主要7か国の情報通信相会合は、インターネットを基盤に国境を越えて情報が自由に流通できる環境を確保するなどとした、2日間の議論の成果をまとめた共同宣言を採択し、閉幕しました。
29日から高松市で開かれていたG7情報通信相会合は、2日目の30日、議論の成果をまとめた共同宣言を採択し、閉幕しました。
共同宣言では、ロシアや中国などで、治安維持などを理由に国境を越えた情報のやり取りを規制する動きがあることを念頭に、データの安全やプライバシーを確保しながら、インターネットを基盤に国境を越えて情報が自由に流通できる環境を確保するとしています。
また、工場の生産設備や製品などあらゆるものをセンサーとインターネットでつなぐ「IoT」や、「人工知能」などの最新技術に関する研究開発を促進し技術革新につなげるとともに、情報通信技術を活用して医療や防災などの地球規模の課題解決に各国が協力して取り組むとしています。
会合のあと開かれた合同記者会見で、議長を務めた高市総務大臣は、「大所高所から、最新の情報通信技術を巡る議論を深めることができた。成果文書は今後のG7の行動指針になるものであり、国際機関などとの連携を通じ、積極的に取り組みを進めたい」と述べました。

世界で広がるネット規制

インターネットを巡っては、世界各地で自由な通信を規制する動きが広がっています。アメリカのシンクタンクによりますと、自国の経済の保護などを理由にインターネットの自由な通信を規制しようという動きは、中国やロシア、ブラジル、ベトナムのほか、フランスやノルウェーなど、少なくとも23の国や地域に広がっています。
規制には、企業などにサーバーと呼ばれる中核的なコンピューターなどを国内に設けるよう義務づけ、事実上、海外のサーバーを通じた情報のやり取りを禁じるケースや、特定のビジネス分野について国外へのデータ送信を禁じて、事実上、その国では、国外の企業がインターネットを活用したビジネスを展開しづらくするケースがあるということです。
専門家によりますと、さらに国によっては、市民が利用するSNSの内容を検閲したり、サービスに接続できないようにしたりするところもあり、こうした国では、国の体制維持の思惑があるとしています。

専門家「G7の危機感の表れ」

今回の共同宣言の背景には、自由な情報のやり取りを前提に発展してきた「インターネット」を巡り、産業保護やテロ対策、国の体制維持などの理由から各国の考え方の違いが表面化するなか、通信の規制が過剰に進めば、今後のインターネットの利用に大きな影響を与えかねないというG7の危機感があると、専門家は指摘しています。
専門家によりますと、インターネットの自由な通信の規制は、自国の経済の保護や国の体制維持などの理由から、この5年ほどの間に、新興国などで急速に広がっています。さらにことしに入り、相次ぐテロ事件を受けてフランスなどヨーロッパで通信の監視に関する議論が高まっているほか、アメリカでもテロ事件の捜査で情報の監視を可能にすべきだという議論も出るなど、先進国でもさまざまな考え方が出てきています。
一方で、自由な通信が規制されれば、民主主義の実現に大きな障害となるおそれがあるほか、世界各地でビジネスを展開する企業の活動にも大きな制約となるおそれがあると懸念が広がっています。
こうしたなか、今回のG7の情報通信相会合で採択された共同宣言について、IT政策に詳しい野村総合研究所の桑津浩太郎主席コンサルタントは、「インターネットは大きな転換点にさしかかっていて、今後、さらに問題が多発するおそれがある。各国の考え方の違いが表面化するなか、少なくともG7の各国間では、インターネットは本来、自由であるべきだという原理原則を確認したうえで、現実的にどこまでの規制が許されるのか、今後、統一した考え方を探っていかなければならないという危機感が表れている」と指摘しています。