訳あってカワウソ(特にニホンカワウソ)に関する情報を必要としている。
(訳についてはこちら)
web上の情報(主にwikiとかになるだろう)ではあまりに心許ないと思い、こういう本を買った。
ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学 (National History Series)
- 作者: 安藤元一
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2008/11
- メディア: 単行本
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目次を書き出してみる
第1章 ニホンカワウソと人間の関係史ー古くからのつきあい
第2章 カワウソという生きものー形態・分類・生態
第3章 日本のカワウソー絶滅の過程をさぐる
第4章 韓国のカワウソー自然保護の象徴種へ
第5章 世界のカワウソ保全活動ー教育と啓発
第6章 再導入を考えるー教訓に学ぶ
カワウソについて知りたいだけだったので、主な興味は1章と2章にしかなく、自然保護とかは正直どうでもいい。まあ小ネタにはなるかもしれない。
一冊本を買って、ざっと読んでみて、ネタがわんさか見つかったり、何かとてつもないアイデアが浮かぶというのは、あまりに都合のいい話だから、こんなものなんだろうと思う。
いや、そう思っていた矢先、灯台もと暗しとは古人はよく言ったもので、web上に、というか、はてなブログに、カワウソについてたくさん書いているブログがあった。
ブログの著者は東大カワウソ同好会というところに所属しているんだそうだ。で、こういう記事があった。というか、この記事を見て、びっくりしてまったわけだが。
ん?京急? 日本だよねこれ、日本に、カワウソがいるのか!?
いや、つまり動物園や水族館にいるってことなんだね。(この記事のタイトルは、ほぼ釣りでした。もしだまされた人がいたら申し訳ない)
あなたは知ってました? あ、ご存じでしたか。すみません。私は知らなかったもので……。まあ、パンダだって日本にいるんだから、海外のカワウソが日本の動物園にいてもいいわけだ。
(さすが東大だな。さすがなのか? あ、でも読んだカワウソ本も東京大学出版会だ)
とにかく、ニホンカワウソではないカワウソならば、日本全国津々浦々……は言い過ぎか。しかし北は北海道から、南は九州(沖縄にはいないぽい)まで、全国の動物園、水族館にカワウソは飼育されているらしい。(知ってました? ほんとに?)
「カワウソ 動物園」で検索すると、こういうカワウソ・ファンサイトもあった。
かわうそ専門サイト カワウソス(´・ω・) [カワウソはペットではありません] | カワウソを展示している動物園・水族館の紹介や写真・動画の公開
(´・ω・`)カワウソス
私がものを知らない人間であったとして、しかし、こんなにたくさんのカワウソが全国の動物園、水族館にいるにしては、メディアでの露出があまりに少ないように思う。だって、カピバラとそんなに変わらんよ?
カピバラの中でかなりカワウソに似てるカピバラと、カワウソの中で最もカピバラっぽいカワウソを並べて置いてたら、たぶん、面倒くさがりや、投げやりな性格の人間は「ああ、こいつら同じ仲間ってことでいいや」って気分になるくらいには似てるよ?
レッサーパンダが立った立ったって大騒ぎしてたけど、カワウソは普通に後ろ足で立ち上がりますよ。
思うに、絶滅した動物には、特有のロマンチシズムとか、センチメンタリズムを引き起こす作用があって、人は(メディアは)ニホンカワウソは絶滅してしまったのだから、(ほとんど見分けがつかない海外種の)カワウソがわらわら動物園にいて元気に生きている姿を見てしまうと、そういった情緒のさまたげだと感じるのではないか。
トキが(野生)絶滅したとか、中国のトキとかけあわせて繁殖に成功したとか失敗したとかいうニュースは、わが国にトキがぜんぜんいないから人々の関心をひきつけるのであって、どこの動物園にいっても中国生まれのトキがいたり、中国産のトキがペットとして普通に飼われてたり、スズメやカラス並みに中国産のトキが空をとんでいたなら、日本のトキの絶滅は、それほどの大ニュースにはなっていなかったろうと思う。
上記のニホンカワウソ本には、最終章の6章に「再導入を考える」とある。再導入というのは、絶滅した地域に、別の地域のカワウソをもってきて、繁殖させてもう一回増やそうという試みについていっている。
トキは(中国産と種としての違いがないことも大きな理由ではあるのだろうが)中国のトキのつがいを譲って貰って、再導入をやっている。
カワウソ本には、類例として、トキのほかにコウノトリとニホンカモシカの再導入についても簡単に触れられている。ニホンカモシカについては、頭数が増えて『特別天然記念物でありながら害獣駆除される状況になっている。』という記述がある。
皮肉で面白い。(ということはつまり、聞いてやるせない気持ちになるということである)
カワウソの再導入は行われていない。
しかし、オランダやアメリカでは行われている。
とはいえ、コウノトリやトキのように人工的に繁殖させたものを、野生に返すのではなくて、別地域に棲息するカワウソを罠でとらえて、絶滅地域に放つというものだから、捕まえる際に怪我をしたり、死んだりする。当然、慣れない環境に適応しきれなくて、子孫を残せずに死んでいく個体も多くある。
なんか話が暗くなってきてしまった。(´・ω・`)カワウソス
カワウソを再導入することが、自然環境の保全、回復と合わせて決定される未来があったとして、日本ではさほど大きな支持を集められないだろう。それは、環境問題への意識の高さ低さ、という問題はひとまず後回しにして、まず、われわれの情緒が、われわれのロマンチシズムが、夢見がちな感傷主義が、「滅びたものは、滅びたままにしておいてほしい」と望むからである。お涙頂戴が大好きな、われわれの「美しい」情緒が。
作者:葦原葭彦
Kindle小説著作リスト(http://www.amazon.co.jp/-/e/B00GLSC9DQ)
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