- 1)「3店方式」を廃止できれば…。
本文で引用した調査結果から、現行の換金システムで問題がないと思っている者は少数であることがわかった。こうした点を重視し、換金システム、つまり「3店方式」を変更していくことが必要であると考えられる。もし、「3店方式」を変えることができれば、パチンコ運営企業の株式上場を阻害していた要因の解決につながり、株式上場の可能性が高まる。株式上場を通して、財務諸表の一般公開などを実施し、世間に対して開かれた会社運営を実現することができる。こうして、パチンコ業界は世間の信用を勝ち取ることができると考えられる。上場企業として信用を得ることが現状を変える大きな一歩となることは間違いない。
さらに、「3店方式」自体がパチンコ業界の存在をグレーゾーンにしていた元凶であったので、この方式を断ち切ることで様々な圧力を回避して、クリーンな会社運営が可能になる。
- 1-1)「3店方式」の改善案
具体的に、「3店方式」をどうするかであるが、調査1に挙げられていた「買取所の公的機関化」「業法を設け不正を排除」「公営競技化」などの方策が考えられるであろう。
ここで、私が考える最も効果的な方策は、「パチンコ業法」などの法律を新たな策定し、パチンコを遊技ではなく、公営競馬などを同じギャンブルと定義することが必須であると思う。このようにパチンコをギャンブルと位置付けて、法律的にグレーゾーンである陰のある産業ではなく、健全なギャンブルと再定義することが重要であると考えられる。
例えば、競馬のJRAはテレビCMなどを多く放送し、最近では年齢層を問わず幅広いファンが競馬場に出かけている。また、イメージとしても、ハルウララやディープインパクトの人気などを追い風にして、健全なイメージが高まってきていると考えられる。このように、ギャンブルと位置づけることで、非合法的なイメージを払拭して、健全なものとして周知させることが可能になるであろう。
このように「3店方式」を廃止させ、パチンコの健全なギャンブル化を目指すためには、以下に挙げるようなパチンコのイメージ向上戦略、そして、業界団体から法律改正を訴える働きかけが必要になると考えられる。
- 2)市場規模の拡大(失われた1000万人のパチンコへの回帰)について
調査1において(調査回答者3000人)、パチンコを「たまに、よくやる」層は22%、「機会があればやってみたい」という層は12%で、パチンコに無関心な層は66%と半数以上であった。このようにパチンコにそもそも無関心な層を取り込むことは非常に大きな労力を必要とすると推定されるが、前述のような「3店方式」の廃止、そしてパチンコの健全なギャンブルへの転換を通して、少しずつこのような層を取り込むことが期待できると考えられる。
しかし、やはりイメージ戦略で無関心層を取り込むのは、個人の信念(ギャンブルを嫌いだという思い)にまで影響を与えて行動を変容させることが必要となるので、困難が大きいであろう。そこで、パチンコファンのうちこの直近の10年間で失われた約1千万人を再びパチンコへと取り込むという対策は実現可能性が高く、パチンコ市場規模の拡大という観点から重要な課題であると考えられる。
すでに述べたように、現在のパチンコファンはヘビープレイヤーに支えられていることが推定される。そのような現状がある中で、この10年間にパチンコをやめてしまった1000万人以上をパチンコに復帰させることができれば市場規模は30兆円を軽く超える水準まで拡大することができるであろう。
- 2-1) 失われた1000万人のパチンコ回帰の方策について
この失われた1000万人のパチンコ回帰の具体的な方策をこれから述べる。まず、その根拠となる調査結果を挙げる。前述の調査1では、パチンコファンの今後パチンコ継続意向として、「現状維持」が67%、「増加派」が4%、「抑制減少派(今後パチンコをやめたい、または回数を減らしたい)」が30%であった。パチンコの回数を抑制・減少させる理由として「お金がかかり過ぎる」が63%、「あまり勝てなくなった」が46%であった。
さらに、調査1において、パチンコを一度やめた者に対して再開意向に関する調査を行っている。その再開条件の中で最も多かったのが「お金をかけないで遊べれば」が58%であった。
この調査から失われた1000万人のパチンコ回帰への具体的な方策が示唆される。それは、「お金をかけないで遊ぶことができる」パチンコ台の設置数を増加させるという方策である。
この方策に関しては、すでに、PCSA会員の株式会社ダイナムが「遊べるコーナー」として、比較的低料金で遊べる機種を集めパチンコ本来の楽しさを体験することができるコーナーを40都道府県全211店舗に設置するという対策を採っている。業界最大手がこのような方策を行うことで、社会に与える影響は非常に大きいものになるであろう。
また、大胆な対策として、現在のようにパチンコ1玉4円という交換レートから、1玉2円という半額に変更するという対策を提案したい。この方法なら、既存のパチンコ台をそのまま使用することができるためコストがほとんどかからない。既存の台を半額で遊ぶことができるようになるため、「お金をかけないで遊ぶことができる」という理念に叶うものになる。
- 2-2)具体的な投資金額について
調査1では、レジャーとしてパチンコの適正投資額(金額は全て平均値)として、世間一般が見るパチンコの適正投資額としては5500円という結果であった。ファン(パチンコをよくやる人、たまにやる人)が考える適正投資額は8700円で、世間が考えている投資額よりも3200円高かった。
この調査結果を基にして考えると、5500円〜8700円程度で遊ぶことができる台を増やすことで、多くの者の理解を得られるということが考えられる。そして、多くの者をパチンコに回帰させることができるのではないかと考えられる。
調査1ではパチンコ1回の平均遊技金額が11500円というデータがあるので、前述のように1玉2円にすることで、単純に遊技金額を半分にするということはできないが、平均的には世間が考える適正投資金額である5500円〜8700円の幅に収まると考えられる。
- 3)パチンコ依存症への対策
依存症の調査において、「パチンコ依存症だと思ったことがある」と回答した者が29%と約3割であった。さらに、自らを「パチンコ依存症だと思う」3割の者のうち、約3割が治療(回復)を必要だと感じていると回答していた。また、治療(回復)を必要だと感じている者のうち8割弱が、治療機関を知らないと回答している。
パチンコ業界団体である全日遊連が「パチンコ依存症」を問題視し、その問題意識からこのような実態把握のための調査を行ったことは、依存症対策として非常に大きな一歩であったと考えられる。ここで私が提案したいことは、さらにもう一歩進めて、パチンコ店などに治療(回復)に関する啓蒙ポスターやパンフレットを設置するなどの対策をすることを挙げたい。パチンコに依存・はまっている客がいるために、パチンコの売上が上がるという面があるために、パチンコファンを減少させるような対策をすることには非常に困難が伴うことが予想される。しかし、長期的な視野に立った場合、パチンコへの病的な依存状態に対してパチンコ業界が対応をしているという事実が社会的に認知されてくることで、パチンコ業界への社会の認識が変化し、結果的に健全なギャンブルとしての認知が広がる影響があると考えられる。そうしたことで、長期的には、イメージの良いパチンコというギャンブルに新規ファンを取り込む一因となると考えられる。
また、パチンコ依存だと思われる客に対して声をかけることは非常に困難であるが、ポスターやパンフレットを置くという受身の対策ならば実現可能性があると考えられる。また、この方法については、自分が依存症などと思っている人だけがポスターを見たり、パンフレットを注視したりするだけで、その他の普通にパチンコに興じている客にはそれほど影響がないと考えられる。タバコでは、パッケージに肺ガンのリスクなどについて記述がなされるようになったが、パチンコでもそのようなリスクの提示が必要だと考えられる。
- 4)「パチンコ店ができると地域環境が良くなる」イメージ転換戦略
財団法人社会安全研究財団のパチンコに関する世論・有識者調査では、パチンコに関するイメージとして「不健全な感じがする」(30.4%)、「社会に悪影響を与える」(27.7%)といった好ましくない印象が強い一方で、「社会に貢献している面が大きい」という好ましい印象はわずか5.7%であった。
その一方で、パチンコホール運営の業界1位のマルハンでは、社会貢献事業として、スポーツ協賛、教育・芸術・文化支援活動、災害などの義援金の寄付などの活動を行っている。また、業界2位のダイナムも同様に、中越地震被災地への義援金の寄付などを行っている。また、PCSA会員の企業においても数十万円〜数百万円規模の災害義援金などの多額の寄付を実施している。このように社会貢献活動を行っているにも関わらず、好ましくない印象が強いという現状がある。
こうした現状を打開するためには、社会貢献活動をより強く世間にアピールすることが重要である。例えば、マスコミなどを通じてこの社会貢献活動を周知させることで、一般の人々の意識が変わり、少しずつパチンコに対する認識も変化していくと考えられる。
しかし、現時点では、パチンコに対する悪いイメージが強すぎるため、こうした社会貢献活動に関しても、社会に浸透するまでには長い時間がかかることが予想される。
そこで、こうした社会貢献活動をアピールするだけではなく、さらにこの方針を進めて、「パチンコ店ができると、地域社会が良くなる」というイメージに転換させるような対策が必要ではないかと考えられる。
例えば、パチンコ店を新規に出店する場合には、必ず店舗の近くに花壇を作ったり木を植えたりすることで周辺環境に配慮することや、空き缶の再利用ボックスを設置するなどでエコロジー拠点を作ることなどが考えられる。また、パチンコ店は一般的に繁華街にあるという立地の利点を活かして、繁華街でのトラブルの際の相談所や警察官の立ち寄りスペースとするなどの案が考えられる。パチンコ店を新規に出店する場合には、このような環境配慮型や治安保全型の店舗設計を義務化することで、社会のパチンコに対する印象は劇的に変化するのではないだろうか。
営業スペースの確保等の理由で、前述の対策は困難な現状にあると考えられるが、こうした「パチンコ店ができると、地域社会が良くなる」といった強烈なイメージ転換戦略は、パチンコという産業が今後好ましくない印象を払拭し、健全な印象を持ったまま長期的に発展していくためには必須の戦略であると考えられる。
これまで述べたような、「3店方式」の改正、そこから派生するホール運営企業の株式上場、社会的信用の獲得、そして「お金をかけずに遊べるパチンコへの方針転換」「依存症への対策」「環境配慮型、治安保全型の店舗設計」などの対策を採りながら、複合的に「パチンコ店ができると地域環境が良くなる」というイメージが広く社会に浸透していくことを強く願う。