東京五輪 新エンブレム 市松模様の「作品A」に決定

東京五輪 新エンブレム 市松模様の「作品A」に決定
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2020年東京オリンピック・パラリンピックの新たなエンブレムについて、大会の組織委員会は、最終候補の4作品の中から市松模様と藍色が特徴の作品Aに決めました。前例のない白紙撤回から7か月余り、大会のシンボルとなるエンブレムがようやく決まりました。
エンブレムの最終選考は25日午前11時から東京・港区の組織委員会のオフィスで行われ、有識者会議のエンブレム委員会が最終候補4作品について、事前に寄せられた4万件余りの意見を参考にして議論しました。そして欠席した1人を含む21人の委員による投票の結果、市松模様のチェックのデザインが日本の伝統色、藍色であしらわれた作品Aが選ばれ、直後に行われた組織委員会の理事会で満場一致で承認されました。
このあと行われた発表会で、エンブレム委員会の宮田亮平委員長と委員の1人の王貞治さんが、作品Aを新エンブレムとして披露しました。そして、作品Aをデザインした東京都在住のアーティスト、野老(ところ)朝雄さんが制作者として紹介されました。
野老さんは壇上であいさつし、「ついさっき決定を知らされたので頭が真っ白です。長く時間をかけて作成した、わが子のような作品です。いろいろな形で広がって、つながっていくことを考えています。本当にありがとうございました」と述べました。
エンブレムを巡っては、去年9月の白紙撤回のあと、選考が閉鎖的で透明性に欠けた点などが強く批判された反省から、外部の有識者によるエンブレム委員会のもと、選考が進められました。応募条件の緩和などで1万4000件余り集まった作品の中から最終決定にこぎつけ、前例のない白紙撤回から7か月余り、前のエンブレムの発表から9か月も遅れて、ようやく大会のシンボルが決定しました。

「粋な日本らしさ」を表現

作品Aは、江戸時代に市松模様として広まったチェックのデザインが、日本の伝統色・藍色であしらわれ、「粋な日本らしさ」を表現しています。形の異なる3種類の四角形を組み合わせ、国や、文化、思想などの違いを示すとともに、それを超えてつながりあうデザインに「多様性と調和」のメッセージが込められています。

作品Aをデザインした野老朝雄さんは、東京都出身の46歳。東京造形大学で建築を専攻したあと、アーティストとして美術や建築、それにデザインの分野で活動を続けてきました。
最近では、去年10月に建て替えられた名古屋駅前の34階建ての高層ビル「大名古屋ビルヂング」のビルの一部のガラスのデザインを手がけました。
野老さんは、発表会のあと記者会見し「オリンピックもパラリンピックも、同じ形をつなげることにこだわった」と作品に込めた思いを述べました。
新エンブレムは、いずれも藍色で3種類の四角形を組み合わせて作られ、オリンピック、パラリンピックともに輪のようなデザインとなっています。野老さんは「“つながる輪”を意識し、力強い形にしたかった。江戸小紋のような潔い表現がしたかった。夏の大会なので涼しげなものがよいと思い、藍色を選んだ」と作品のポイントを述べました。そのうえで、「オリンピックもパラリンピックも、同じ形をつなげることにこだわった」と思いを話しました。
また、エンブレムの募集に応募した動機について、「子どものころから『自分はアスリートにはなれないが、金メダルを作ることに関わりたい』というオリンピックへの憧れがあった。関わるとしたらデザインだと思っていた」と明かしました。

1回目の投票で過半数に

宮田亮平委員長は新しいエンブレムの発表後、投票の経緯を明らかにしました。
それによりますと、エンブレム委員会の最終審査では欠席した1人を含む委員21人によって1回目の投票が行われ、「市松模様」が特徴の作品Aが13票、「輪」を表現した作品Bが1票、「風神・雷神」をイメージした作品Cが2票、朝顔の花が特徴の作品Dが5票を獲得したということです。
この結果、作品Aが過半数を獲得し、エンブレム委員会として採用を決め、その後、組織委員会の理事会で満場一致で承認され、正式に決まったということです。
宮田委員長は作品Aが選ばれた理由について、「市松模様は古くから愛されており、使用されている藍色も日本人らしさを秘めている。今後、エンブレムが応用されていくとき、しっかりとした『藍色』というベースがあれば、さまざまな色が重なり込んだとしても、ベーシックな部分が生かされるし、デザインにはパワフルさも感じた」と説明していました。

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長はエンブレムの発表に先だってあいさつを行い、「スポンサーの皆さまにはご迷惑、ご心配をおかけし、おわび申し上げます。きょう、4つの最終候補作品から投票で1つを選んでいただき、理事会で満場一致で承認された。1万5000件近いの作品の中から選ばれた、たった1つのエンブレムです。2020年の大会のシンボルとして多くの人に親しまれるよう期待しています」と述べました。

エンブレム委員会の委員の1人、王貞治さんは、「野球一筋で生きてきて、このたび思いがけず、エンブレム委員会の委員に選んで頂き、委員会で、いままでにない経験をさせて頂いた。とても名誉に思っている。いろいろな意見があるなかで決定できたこと、その席にいられたことを残りの人生で胸の中にしまっておきたい。すばらしい作品が選ばれたと思っているので胸を張って皆さんにご紹介したい」と話していました。

海外メディアはどう伝えた?

新たなエンブレムが決まったことについて、海外メディアも相次いで伝えています。
このうち、アメリカのAP通信は、当初、佐野研二郎氏がデザインしたエンブレムが白紙撤回された経緯などを紹介し、新たなエンブレムについて、「よりカラフルだったほかの候補の作品よりも白と青のシンプルなデザインが選ばれた」と伝えています。
また、フランスのAFP通信は「新たなエンブレムは、盗作疑惑のスキャンダルで元の案が白紙撤回されたあと、7か月余りたって決定されたが、早くも『ぱっとしない』といった批判に直面している」と伝えています。
このほか、ロイター通信は「エンブレムが決まったものの、白紙撤回などのドタバタは、そつがなく効率的に大会を運営するという日本の評判を傷つけた」と伝えています。