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【首都スポ】

W杯戦士不在ラグビー・ヤングジャパンで初キャップ 児玉勝負

2016年4月30日 紙面から

日本代表デビューに闘志を燃やす児玉健太郎。右はリザーブ入りしたFW坂手=ニッパツ三ツ沢球技場で

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 チャンスをつかめヤングジャパン! ラグビーのアジア選手権は30日の韓国戦(ニッパツ三ツ沢)で開幕する。昨年のワールドカップ(W杯)で南アフリカを破るなど3勝をあげた日本代表だが、今大会はスーパーラグビー組や海外組、セブンズ組は不在。W杯代表はゼロだが、新鋭にとっては千載一遇のチャンスだ。初の代表入りを勝ち取ったWTB児玉健太郎(24)=パナソニック=らが、19年W杯の代表入りを目指し、ライバルたちの不在中に、代表定着へ勝負をかける!(文・写真=大友信彦)

 「最初のチャンスのもらい方がどうかなんて、どうでもいいんですよ」

 児玉は快活に笑った。

 「どんな形であれ、チャンスが来るってことは運に恵まれているってこと。それをつかむだけです」

 30日開幕のアジア選手権。昨秋のW杯で快進撃を見せた日本代表にとっては待望の凱旋(がいせん)試合のはずだが、今回の日本代表に昨秋のW杯組は一人もいない。今春はスーパーラグビーのサンウルブズや海外チームでプレーする選手が多い上にリオ五輪に向けた7人制日本代表候補も除いた、いわば留守部隊だ。

 児玉のポジション、WTBはその象徴だ。W杯組の山田章仁(パナソニック)はサンウルブズ、松島幸太朗(サントリー)はオーストラリアのレベルズでプレー。福岡堅樹と藤田慶和(ともにパナソニック)は、W杯から漏れた松井千士(同志社大4年)とともに、リオ五輪の切符を争っている。

 「でも、複雑な思いなんて何もありませんよ」

 児玉はそう笑い飛ばす。慶大時代はルーキーイヤーから快速WTB兼ロングキッカーとして活躍したが、3年のシーズンは首脳陣の構想から外れて出場ゼロ。パナソニック入りした14年は、トップリーグ歴代最多トライ2位の北川智規、3位の山田という両ベテランWTBの壁に阻まれ公式戦出場ゼロだった。そんな不遇の時代を知っているから、チャンスの見栄えはまったく気にしない。

 「運も実力のうちですから。どうチャンスをもらうかじゃなく、チャンスをもらうにふさわしいヤツだったな、と思ってもらえるプレーをしたい。それに、もう24歳。そんなに若くないですから」

 何しろポジション争いは激しい。昨秋のW杯に出場した松島、福岡、藤田、セブンズ代表の松井は全員年下。福岡と藤田は今春パナソニック入りした。先輩には日本代表の山田、サンウルブズの笹倉とひしめく。めぐってきたチャンスをより好みする余裕はない。

 「この試合も代表のセレクションマッチという思いが強い。ガツガツ行きますよ」

 走ってトライを取ることだけではない。

 「ミーティングではヘッドコーチの考えをしっかり理解してグラウンドの練習では率先して実行します。いまいち分かってない選手がいたら、声をかけてあげたり(笑)」

 チームを機能させる働きに選手の価値はある。それもトップリーグ王者パナソニックで学んだことだ。

 そして楽しむこと。2〜3月の2カ月間はニュージーランド(NZ)のハイランダーズに留学。スーパーラグビー昨季王者と一緒に練習し、2軍ながら試合も経験した。

 「日本人は決して劣っていないな、自分も十分勝負できるなと思った。あと、NZの選手はラグビーを楽しんでいる。これは自分も取り入れたい」

 勝負を楽しむ。努力を楽しむ。19年W杯をかけた代表サバイバルへ、24歳のトライゲッターは、あくまで楽しく、勝負に出る。

 <児玉健太郎(こだま・けんたろう)> 1992(平成4)年1月28日生まれ。福岡県出身。小1のとき北九州市の鞘ヶ谷ラグビースクールでラグビーを始め、小倉高3年で高校日本代表。慶大では1年生時からWTB、FBで活躍。14年パナソニック入社。183センチ85キロ。

◆「最高の準備」中竹HC

 「この短い期間で最高の準備ができた」

 29日、前日練習を終えた日本代表の中竹HC代行は自信をみせた。韓国は世界ランキング26位だが、昨年もシーズン初戦で対戦して56−30の乱戦になるなど、日本相手には実力以上の力を発揮する。03年W杯後の初戦となった04年の秩父宮では19−19で引き分けている。内田啓介主将は、「予期せぬ状態になってもパニックにならないよう、最悪の状況を想定して準備しています」と胸を張った。

 ▼大量初キャップ 30日の日本代表の韓国戦先発メンバーにキャップ保持者は内田主将とSO山中、CTB中村、FW宇佐美の4人のみで、初キャップが11人。W杯翌年の初戦では毎回新人が大量起用され、4年前、エディージャパン初戦となった12年4月のカザフスタン戦も10人の初キャップが誕生した(先発6人、途中出場4人)。

 初キャップが10人以上誕生したのは他に、日本代表の初期から1960年代までに7回あった。なお今回は、リザーブ8人のうち6人がノンキャップ。中竹HC代行はリザーブの全員起用を示唆しており、1試合で17人の初キャップが誕生するかもしれない。

◆中村「エディーさん見返す」

 「これ以上ないチャンスをもらいました」

 CTB中村亮土(サントリー)は表情を引き締めた。児玉と同じ社会人3年目の24歳。今回は14年5月のサモア戦以来ほぼ2年ぶりのテストマッチだ。帝京大2年のシーズンから日本代表合宿に招集され、4年時は学生王者の主将と日本代表のハードな日程を両立した中村だが、肝心のW杯イヤーは代表に呼ばれなかった。

 「でも、W杯を見ていて『僕には実力がなかったんだな』と気づきました。それまでは『学生だから』『サントリーで出てないから』とか、理由を外に求めていたところがあった。でもW杯の戦いを見て、自分の弱さを認めることができた」

 以来、トップリーグではひとつひとつのプレーのレベルアップに専念。練習でも試合でも、受け身だった自分の姿勢を変えた。

 「エディーさんには『やる気がない』と言われて悔しかった。見返したいですね」

 帝京大時代は無敵のラグビー人生だった。2年間の社会人生活で悔しさを学んだ24歳が、新たな思いでピッチに立つ。

 ▼アジア選手権日程

 日本と韓国、香港の3カ国がホーム&アウェーの2回総当たりで対戦する。日本は30日にホームで韓国と対戦した後、5月7日に香港で香港とアウェー戦を、同21日に仁川で韓国とアウェー戦を行い、同28日に秩父宮ラグビー場で香港と最終戦を行う。女子アジア選手権も並行して行われ、日本と香港、カザフスタンの3カ国が2回総当たりで対戦する予定だったが、カザフスタンが財政の事情で出場辞退。いったん代替出場の決まったシンガポールも辞退し、日本と香港の2カ国によるホーム&アウェー戦となった。いずれも男子の前座で行われる。

  ◇

 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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