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兄が好きすぎる妹と異世界へ行ってハーレムを築くお話 作者:鶴屋
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帰宅した兄を優しく出迎えるできた妹

「流行のご都合主義の話を作ったらどれくらい見てもらえるか?」という実験作です。お付き合いくだされば幸いです。
 
「お帰りなさい。にいさま」
 柔らかな、そして嬉しそうな声音。
 疲れて家に帰ると、妹が待っていた。ダンジョンからの帰りだ。その話は後に述べるとして、まず彼――九条晶(あきら)が思ったのは、
(可愛いなぁ)
 だった。
「ただいま」
 頭に手を置いて撫でると、妹は嬉しげに目を細める。
「お疲れ様です」
 彼女は、腹違いの妹だ。小学校をあがるまでは別々に暮らしていた。そのせいか、それとも王族の末裔の家系として受けた厳しいしつけのためか、ごく自然に兄に対して敬語を使う。
 そう、王族だ。
 妹の名前を、沙夜香・フェリシア・アークライトという。
 沙夜香は晶の父親がつけた名前で、フェリシアは妹の母親がつけた名前だ。その名前から察せられるように沙夜香には英国の血が混じったハーフだった。
 いつ見ても、彼女は可愛い。
 背中の、肩甲骨あたりまで伸びた黒髪。それはクセがなく、いつ撫でても心地よい。ぱっちりとした利発そうな瞳と、小高い鼻。艶やかで、小さな唇。まだあどけなさの残る顔。
 ペルシャ猫のように高貴な、そして異国めいた雰囲気を匂わせるのは、少女の受け継いだ王族の血のせいだろう。
 視線を少し下げると、何より目につくのがエプロン越しでも分かるほどに大きな胸だった。かといって太っているわけではない。どちらかといえば華奢とすら言える細い、小さな体つきの中で、胸だけがすばらしく発育している。
「に、い、さ、ま」
「む」
 ぶしつけな視線に気づかれたらしい。沙夜香が少し怒ったような声を出す。
「いつでも触っていいのに」
 そういうや、沙夜香は頭に置かれた兄の手をそのほっそりとした手にとると、自分の胸の上に導いた。
 ふよん。
 柔らかい。
 逃げるどころか手をにぎにぎした晶もたいがいだが、何の迷いもなく自分の胸の上に導いた妹も、輪をかけて頭がおかしい。
「あ……」
 顔を赤らめて、沙夜香が晶の手を防ぐように添えた手に力を入れる。今さらか。
「冗談のつもりでしたのに」
 少し、にらむ。何がしたいのだ。
「いやここは普通触るだろう」
「断言されましても」
「何を言うかこんなにけしからん身体をしおって」
 プロポーションのいい、しかもまだ成長途上の身体を上から下までねめつける。
 ちなみにこのとき、晶は十八歳。沙夜香は十五歳。どちらも若い。
「にいさまのえっち」
 エプロンに包まれても大きさが分かる胸を、手で隠しながら沙夜香。
 頬が、ゆるんでいる。嬉しそうだ。
「ご飯にします? お風呂にします?」
「風呂でさっぱりする」
「はい。少しお待ちください」
 笑顔で言った。


 九条晶と沙夜香・フェリシア・アークライトがこの異世界クアドフォリオに迷い込んでから、数ヶ月が経っていた。
 持っていたお金も使えず、知人もいない。携帯電話は当然のように電波が届かず、おまけにバッテリーが切れて使い物にならないといったありさまである。
 着の身着のまま、食料も水も住む場所もない状態だったが――。
「ま、なんとかなるさ」
「はい。にいさまと一緒なら大丈夫です」
 兄妹はタフだった。
 で――。
 何とかなった。
 怜悧かつ美貌と名高い騎士団長サフィーリアに、晶が見初められたからである。
 一目惚れ、だったらしい。
 話はこうだ。
 異世界クアドフォリオ。その世界にある国の一つ、魔法国レブナント。
 その国に、兄妹は迷い込んだ。
 海に接し、豊かな穀倉地帯があり美味い葡萄酒がとれることが有名で、餌場が豊富な事から魔物も多い。だから自然と、魔物に対抗する為の騎士団や自警団が結成されることとなる。
 サフィーリアは王国付きの名家の家系であり、生まれつき異能の力――魔力――を備えていた。騎士団に入って実戦経験を積むにつれて能力に磨きがかかり、わずか二十四歳という年齢にして団長の地位まで上り詰めた。
 乱世であった。実力主義の世界である。
 能力があるならば若くても取りたてられるし、人材の発掘も盛んである。
 この世界に異世界からの人間が迷い込む事はままあるらしい。どこからか迷い込んできた人間を、この世界の人々は、「過客(かきゃく)」と呼ぶ。
『過客は魔道、超能力、知識のいずれかに長け、世界の危急を救うべく現れる』
 そんな言い伝えがある。
 迷い込んだ当時、学校の制服を着ていた彼らは明らかにこの世界の住人とはいでたちが異なり、「過客ではないか?」ということで、役所へ通報された。
 さて、そこでたまたま役所に出向いていたサフィーリアが興を覚え、出向いてみると。
 ひと目見て、動けなくなった。
 何故かは、彼女にも分からない。
 ただ、初めて見るこの男の顔から目が離せず、見つめると心臓の鼓動が早鐘を打つように激しくなり、それでいて気持ちが悪いわけではない。むしろ、心地よいほどに高揚している。
 手強い魔物と相対し、仕留めるに至ったときは独特の高揚感があるが、それとはまた別ものだ。
(ああ……)
 心の中で、サフィーリアは呟いた。
(私は、この男と出会う為に産まれてきた……)
 確信する。
 名門の家に産まれ、文武両道で育てられた。
 魔力の素質を伸ばすべく鍛錬を続け、戦術論と各種教養を叩き込まれた。
 そんな彼女だから男という生き物と親しく交わった事はなく、恋をする機会などは当然なかった。
 切れ長の瞳は海を思わせるアイスブルー。豪奢な金色の長髪をポニーテールに束ねている。魔力を効率よく扱うために胸元の開いた特殊な鎧。身体にぴったりとフィットした胸布は、彼女の大きな胸をよりいっそう際立たせていた。
 胸が、苦しい。
 甘く、切なくうずいている。
「サフィーリア。サフィーリア・フォン・スティグラント。貴殿の名前は? 私の言葉がわかるか?」
 尋ねた。
 軍人として躾けられた無骨な言葉遣いが、今さらになって忌々しい。
 こんな時、恋愛の手練手管に長けた同年代の女ならどのように受け答えするだろうか。
「九条晶。名前が晶で苗字が九条だ。こっちは妹の沙夜香」
 男が名乗った。
「アキラ。アキラか。うむ。承った」
 賢い男だと、サフィーリアは思った。名前と服装から察するに異世界から来た過客であろう。となれば目にする何もかもが元に住んでいた国とは違い、しかもその変化は突然訪れたはずだ。それなのに落ち着き払っている。
 ぎゅっと、男が沙夜香と呼んだ少女が晶の手を握った。
「ここはクアドフォリオという星のレブナントという国だ。知っているか?」
「いや。……どこかの映画のセットかと思ったが、違うのか?」
「えいが? ふむ。よく分からぬ。やはり晶殿達は異世界から来た客人らしい」
「異世界?」
「順を追って説明しよう。付いて来い。なに、とって食いはせぬ」
 そういうわけで、晶と沙夜香はサフィーリアの庇護下に入った。
 住みやすい一戸建ての家を用意され、兄妹二人暮らしの生活が始まった。
 晶には地下に魔王が住むというダンジョン探索の仕事があてがわれ、沙夜香には兄の身の回りの世話をする仕事が割り当てられた。給金は、騎士団から出る。
 騎士団でひとしきりの戦闘訓練を受け、ダンジョンを探索して宝物を探り、切りのいいところでマジックアイテムを使って帰る。
 そんな暮らしをするうちに数ヶ月経ち、異世界での生活にも慣れてきた。
 しかし何故か、晶の周りには美女、美少女が付いて回る。
 それはおいおい語ってゆくとして。


 風呂である。
 家には、彼と妹しかいない。
 ダンジョンの埃と汗で汚れた服を手早く脱ぎ、洗濯籠に入れる。
 素っ裸になると、そこには魔物との戦いでつけられた生傷がいくらかついていた。
「今日もしみるだろうなあ」
 呟くが、探索で傷つけられることは日に日に少なくなっている。経験値をつみ、少しずつレベルアップしているためだろう。
 木座に座り、湯をとって浴びる。やはり、しみた。
 少し、遅れて――
「お背中流しますね、にいさま」
 長い髪を紐でまとめた妹が、入ってきた。
 大きな胸、その頂にある桜色のつぼみがあらわになっている。
 一糸まとわぬ姿であった。

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