手に負えないインターネットの統制強化を目指す権威主義的な政府が誰かを招くとしたら、中国の検閲システム「グレート・ファイアウオール」の設計者以上にいい人物がいるだろうか――。
これがコンスタンチン・マロフェーエフ氏の考えだった。クレムリン(ロシア大統領府)およびロシア正教会と密接な関係を持つ億万長者で、ウェブを統制し、デジタル世界における米国の影響力を制限しようとするロシアの活動の立役者の一人になった人物だ。
マロフェーエフ氏の検閲ロビー団体「セーフ・インターネット・リーグ」は4月27日、中国のインターネット政策を統括する魯煒氏、中国のデジタルファイアウオールの建設を指揮した方浜興氏が率いる大規模な代表団をモスクワに迎える。ロシア側は、好ましくないサイトをフィルターにかけ、コンテンツが世間の目に触れないようにする中国のテクニックを学ぶことを期待している。
マロフェーエフ氏はインターネットが米国に支配されていると考えている。同氏の運動は、ロシアがインターネットに対して主権を行使するという大きな使命に応えるものだ。
「ロシア人は、自分たちが最初に宇宙に行ったとか、あるいは南極を発見したからといって、我々が獲得したんだからソ連の法律に基づいてそこへ飛ぶ必要があるなどとは決して考えなかった」。同氏はあるインタビューで、こう語った。「ところが米国人はカウボーイ的な態度を取る――『これから死ぬまで米国から規制する。そうしたいからだ』という態度だ」
■サイト禁止の必要性が差し迫る?
だが、批判的な向きにしてみると、非常に信心深いマロフェーエフ氏がポルノや自殺などに関する情報を載せたサイトを禁止しようとしているのは、反対意見を抑えるための隠れみのにすぎない。ロシアは今、原油安と西側諸国との隔絶によってもたらされた深刻な景気後退に耐えているため、そうしたサイトを禁止する必要性がいよいよ差し迫っているのかもしれない。
「議会選挙が近づいており、彼らはインターネットの問題の解決策を必要としている」。インターネットを統制しようとする近年のロシアをまとめた「ザ・レッド・ウェブ(赤いウェブ)」の著者、アンドレイ・ソルダトフ氏はこう言う。
ソルダトフ氏は、ウクライナ危機へのマロフェーエフ氏の関与にも類似点を見て取る。マロフェーエフ氏は、ロシアの支援を受けたウクライナ分離主義勢力を支援する重要な役割を果たした。「治安部隊が(マイダン)革命を止めるのに完全に失敗したから、(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンはウクライナをマロフェーエフにアウトソースした」(ソルダトフ氏)