読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

クジラのうた

動物関係がメインのブログです!生命がこの世で最も美しい!

【感想/動物の解放】動物虐待を維持するものは、無関心よりもむしろ無知である。【ピーター・シンガー】

動物関係 読書

いつかは読まなければいけないと思っていた本を読みました。

 

この動物の解放という本は、世界における動物福祉論の最大の画期となった本です。

 

この本がきっかけとなって多くの動物が救われてきたことは間違いありません。

 

特筆すべきは動物愛護の観点からではなく、

倫理観から動物を苦しみから解放すべきだと述べているところでしょうか。

 

まずは、著者の紹介から。

ピーターシンガー

1946年オーストラリアに生まれる。

2名のアメリカ大統領を輩出したプリンストン大学の現教授。

専門は応用倫理学。倫理学者、哲学者と呼ばれることも。

ザ・ニューヨーカー誌によって「最も影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、タイム誌によって「世界の最も影響力のある100人」の一人に選ばれたほどの人物。

 

紹介したように、著者は学者さんです。

応用倫理学とは倫理学の知識を利用して、倫理上の問題を提起・考察する学問です。

 

シンガーはペットを飼っていたことは無く、動物を溺愛したことは無いと述べています。

 

本書の中で、シンガーの立ち位置がよくわかるエピソードが紹介されています。

 

動物好きの女性に「動物に興味をお持ちではないのですか?」と質問された際に、

私たちは苦しみと悲惨の防止に興味を持っているのだということを説明しようとした。私たちは恣意的な差別に反対しているのであり、ヒト以外の生物に対しても不必要な苦しみを与えるのはまちがっていると考えているということ、そして私たちは動物たちが人類によって、無慈悲で残酷なやり方で搾取されていると信じており、このような状況を変えたいと思っていることを話した。

 とあります。

 

シンガーは抑圧と搾取に終止符を打たなければならないと考え、

基本的な倫理原則の適応範囲はヒトのみに限られるべきではないと考えています。

また、この本はシンガー同様の考えを持った人のために書かれた本です。

 

動物の解放という本について

シンガーがタイトルに解放という言葉を使ったことには意図があります。

それは、解放という名前を付けることによって、その他の解放運動(本書では、例として黒人解放運動を挙げています。)と動物解放運動を同列に置き、

動物の権利主張のための動物解放運動を促進することです。

 

先述したとおり、この本が動物の権利を向上させてきたことは間違いのない事実です。

しかしながらシンガーは本書の中で、他の解放運動と比較して動物解放運動には多くのハンディキャップがあることも述べています。

最初の、しかももっとも明白は障害は、搾取されているグループが自らの受けている扱いに対して、組織的な抵抗を行うことが出来ないという事実である。私たちは自らのために弁ずることのできないグループのために代弁しなければならない。

もし黒人たちが自ら立ち上がって要求することができなかったと仮定すれば、平等な権利を得るためにはもっと長い時間がかかっただろう、ということを考えてみれば、読者の皆さんにもこのハンディキャップがいかに深刻なものかわかっていただけるだろう。

動物解放運動の前途にとってさらに重要なことは、抑圧側(ヒト)のほとんどすべての成員が抑圧に直接関与しており、自らが受益者であることを知っているという事実である。

 非常にロジカルに動物たちの置かれている立場と我々の立場を対比させ、

その問題点を浮き彫りにしています。

 

動物虐待を維持するものは、無関心よりもむしろ無知である。

最後にこの本の序文を紹介します。

2008年に何千万人ものアメリカ人が、夕方のテレビのニュースに登場した、あまり体調が悪くて歩けない牛が蹴られたり、電流を通じた棒でショックを与えられたり、目を棒でつつかれたり、フォークリフトで押しのけられたりして、屠殺され食肉加工されるために追い立てられれて行くところを描いた隠し撮りビデオ映像を恐怖と不信感を抱いて見つめた。

中略

これやその他の動物虐待隠し撮りビデオによって喚起された広範な嫌悪感は、米国における大規模で制度化された動物虐待を維持するものが、動物への無関心よりもむしろ無知であることを示唆している。

我々は、スーパーやレストランに並ぶ肉や卵がどのような生産工程を経ているのか、

基本的には無知であり、無知であるが故に無関心です。

ただ、一たびそれらが目に触れさえすれば、無関心ではなくなることが示唆されているのです。

好意的に解釈すれば動物福祉にこれまで興味のなかった方でも、知る機会があれば、動物の解放の大きな原動力になりえるということだと思います。

 

おわりに

無知であることは悪ではないはずです。

知らないということは、ただそういう機会に恵まれなかっただけのはずです。

 

動物福祉にこれまで興味のなかった人たちにも現状を知ってもらい、

さらに大きな原動力となってもらえるよう、これからも努力していきたいと思います。

 

是非、皆様もできる範囲で構いませんので、

動物たちの置かれている状況を気にかけてみてあげてください。

 

よろしくお願いします。

 

 

動物の解放 改訂版

動物の解放 改訂版

 

 amazonのレビュー欄に、私の記事とは比較にならないくらいわかりやすく素晴らしいコメントが寄稿されています。

この本の理解の一助としてそちらもあわせてご覧ください。

 

また、私の尊敬するブロガー様も過去にこの本の事を記事にされております。

幅広い知識をもとにどのようにして動物解放運動が広がっていったのかを非常に分かりやすく解説してくださっています。

是非、こちらの記事も参考にしていただければと思います。

davitrice.hatenadiary.jp