おおさか維新の会 政権と距離を保てるか
これで活路が開けるだろうか。維新の党を離党した橋下徹大阪市長、松井一郎大阪府知事らが国政政党「おおさか維新の会」の結成を宣言した。大阪を地盤とする維新の党の国会議員ら20人近くが参加、橋下氏が暫定的に党首に就く見通しだ。
この3年間、中央で勢力拡大を目指した橋下氏らの戦略は事実上、行き詰まった。党名に地名を冠し、大阪都構想への再挑戦を掲げるなど地域色を強調しての再出発だが、野党としての軸足に不安がつきまとう。
「維新の党は偽物になった。改革政党をもう一度作る」。橋下氏は離党した維新の党を記者会見で激しく批判、東京一極集中の打破を旗印に出直しを強調した。綱領案には大阪の副首都化や道州制実現、地方自治体の国政関与などが盛り込まれた。拠点の大阪や地方重視に加え、橋下、松井両氏を中心とする「純化路線」で心機一転を図る戦略だろう。
だが、2012年に橋下氏を代表とする国政政党「日本維新の会」を結成して以来、約3年間の総括を踏まえぬ出直しでは説得力を欠く。
橋下氏は石原慎太郎元東京都知事らの勢力や、江田憲司氏らの旧結いの党との合流や分離を繰り返したが結局、既成政党を脅かす大きな勢力は築けなかった。命綱だった都構想も、大阪市民が熟慮のうえ1票を投じた住民投票で否決された。
橋下、松井両氏は安倍晋三首相や菅義偉官房長官と近い関係にある。維新の党を分裂させた原因は、民主党との連携に柔軟な勢力との路線対立とみられている。今や「偽物」とすら呼んでいるが、維新の党の結党を主導し、さきの衆院選で議席を得た責任は重いはずだ。代表選などを通じた党内議論も尽くさぬまま、大阪府知事選、大阪市長選のダブル選挙に備えた足場固めを急いだとすれば、新党の大義に疑問符がつく。
政治家引退を表明している橋下氏が、年末に市長を退任するまで暫定的に党首として党のかじ取りを担い続けることにも違和感がある。都構想への再挑戦も、住民投票結果を謙虚に受け止めた判断とは言えまい。
松井氏は「維新の党はいつのまにか、何でも反対になった」と述べ、安倍政権と政策次第で協調する意欲をにじませる。国政に主張を反映させていくためには、官邸との近さが頼みというのが現実かもしれない。
第三極勢はこれまで与党との対立軸を打ち出せないまま、自壊を繰り返してきた。いくら中央集権の打破を訴えても、与党の補完勢力に陥るようでは存在感はすぐに色あせる。
国政政党として野党の立場を取る以上、政権と向き合う姿勢をはっきりと打ち出すべきだ。それが、橋下氏らが立ち返るべき原点であろう。