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「0増6減」通過 身内の延命で決着とは

 迷走を続けた揚げ句に、「1票の格差」の是正に向けて衆院が出した結論は今回もまた、その場しのぎの対応策だった。

     衆院の選挙制度改革について、小選挙区を当面、「0増6減」する自民、公明の与党案が衆院本会議で可決された。与党案は参院審議を経て今国会中に成立する見通しだ。この決着を強く批判したい。

     再三指摘してきたように、与党案は議席配分に人口比をより反映させる仕組みとして衆院議長の諮問機関が答申したアダムズ方式の導入を2020年以降に先送りする策だ。

     なぜ先送りか。定数減の影響を受ける現職議員をできるだけ少なくしたいという自民党の事情以外に理由は考えられない。緊急課題である格差の抜本是正よりも身内の延命を優先したといっていい。

     同時に審議された民進党案は10年の国勢調査を基に直ちにアダムズ方式を取り入れ、小選挙区を「7増13減」する内容だ。この方が合理的なのは明らかであるにもかかわらず与党が数で押し切った形だ。

     本来、議員の選び方の基本となる選挙制度の改革は、少なくとも与党と主要野党が合意したうえで実現させるべきである。ところが、民進党にも当初からあきらめムードが漂い、先週の審議入り以降、1週間足らずで採決に至ったのは残念だ。

     最高裁は過去3回の衆院選について「違憲状態」と判断し、都道府県にまず各1議席配分する現行の「1人別枠方式」が「格差が生じる主因」と指摘して撤廃を求めてきた。

     このため国会審議では、与党案では別枠方式が残り、最高裁の要請に応えられないとの意見が野党から出たが、与党側は「段階的に措置を講じる」などと答えるだけだった。

     与党側は区割りを調整して「1票の格差」を2倍未満にすると強調。アダムズ方式先送りの理由については、10年の国勢調査は古い調査で、20年調査が直近だとも答弁した。これも「無理やりこじつけた説明」ではなかったろうか。

     与党案が成立しても、小選挙区の区割り見直し作業と有権者への周知期間が必要だ。熊本地震を受け、与党内では夏の参院選に合わせて衆院選を行う同日選は難しくなったとの見方が広がっているが、仮に年内に衆院選が行われる場合には現行制度のままでの選挙となる。

     しかも20年の国勢調査後にアダムズ方式を導入するといっても、実際の衆院選に適用されるのは22年以降となる見通しだ。その間、何回、衆院選があるか分からず、政治状況が変われば導入が再度先送りされる可能性も否定できない。有権者は今後も注視していくことが必要だ。

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