住んでいる地域によって一票の価値に不平等が生じる。この理不尽を改めるためだったはずの衆院の選挙制度改革が、中途半端に終わることになった。

 衆院の特別委員会で審議された与野党二つの関連法案のうち自公案が賛成多数で可決され、衆院を通過した。参院審議をへて近く成立する。

 衆院定数は小選挙区で6、比例区で4削減され、小選挙区画の見直しで格差が2倍未満となるよう調整される。有識者の調査会が導入を求めた「アダムズ方式」に基づく定数配分の抜本見直しは、2020年の国勢調査以降に先送りされる。

 問題点は二つある。

 過去3回の衆院選での2倍以上の一票の格差を「違憲状態」とした最高裁は、「1人別枠」という定数配分方式の「速やかな撤廃」を求めている。自公案ではこの方式による配分が実質的に残ることになり、新方式に基づく選挙ができるのは22年以降になるという。それまでに衆院選は、少なくとも一度は必ず実施される。

 また、次の衆院選に向けても、新たな選挙区画で格差が是正されるのは来年以降だ。それまでに衆院が解散されれば、14年選挙の「違憲状態」と何も変わらないまま選挙が行われることになる。

 最高裁が、格差が2倍を超えた09年衆院選を「違憲状態」と判断したのは11年3月だ。この間、小選挙区定数を5減らす緊急避難策はとったが、抜本改革は手つかずだった。

 その後も各党協議で結論が出せず、有識者の調査会に検討を委ねたあげく、抜本的に制度が改まるのは判決から10年以上も先になる。この間、不利益をこうむるのは有権者だ。定数減による現職議員への影響を最小限にしようと、先送りを図った自民党の責任は大きい。

 衆院を通過した自公案は、付則で「望ましい選挙制度のあり方について、公正かつ効果的な代表という目的が実現されるよう、不断の見直しが行われるものとする」とうたっている。

 趣旨には賛同する。だが、あるべき制度の議論より、どうすれば自らに有利かの議論ばかりが目立った最大与党の姿を見せつけられれば、議員任せの「改革」には期待できない。

 衆参両院の役割分担も視野に入れた選挙制度や、不祥事が後を絶たない政治資金のあり方も含め、長期的で、幅広い視野の検討が必要だ。そのために、法に基づく首相の諮問機関である「選挙制度審議会」の再立ち上げを考えるべき時ではないか。