二ホンウナギ「輸入規制可能性も」 関係者に危機感
(2016/4/25 17:09)-
関係者によると、動向が注目された米国は今回の議案提出を見送る可能性が高く、欧州も現時点で目立った動きは見られない。ただ、経済産業省の担当者は「環境団体などの働き掛けがあれば、どこかの国が提出する可能性はある」と警戒する。締約国会議は約3年に一度の開催で、「今回の議案提出が見送られても根本的な解決にはならない」との声もある。
浜松市内の養鰻業の男性(56)は「ワシントン条約の影響は計り知れない。稚魚が不足すれば、消費者に安くておいしいウナギを提供できなくなる」と語り、資源保護の取り組みを継続する重要性を強調した。
■国内供給 輸入が半数
水産庁によると、昨年11月~今年2月に国内の養殖池に入れられた稚魚(シラスウナギ)15・1トンのうち、海外からの輸入量は約4割の6・0トン。成魚・加工品も含めた2014年の国内ウナギ供給量は3万7936トンで、輸入は半数を超える2万197トンに上った。同庁の担当者は「輸入がストップすれば、業界に甚大な影響が及ぶ」と指摘する。
07年の国内供給量は14年の3倍近い10万トン超。輸入は全体の8割を占めていた。だが、この年にヨーロッパウナギがワシントン条約の対象種となり、翌年の輸入量は大幅に減少した。09年から実際に国際取引の規制が始まると、輸入はさらに落ち込んだ。
流通量の減少は、ウナギの価格に直結する。総務省小売物価統計調査によると、07年の静岡市の「うなぎのかば焼き」(国産)は100グラム当たり562円。これに対し、14年は同1188円と2倍以上に高騰している。
浜松市内のうなぎ料理店主は「業界は値上げで仕事を維持してきたが、客離れも心配でこれ以上は値を上げられない」と苦しい胸の内を明かす。
<メモ>ワシントン条約締約国会議 次回は9月24日~10月5日、南アフリカで開催される。国際取引が規制される「付属書」への掲載は、締約国が150日前までに提案し、本会議で3分の2以上の賛成で決まる。付属書1に分類されると、学術利用以外の商業取引が全て禁止となる。付属書2では、科学的助言に基づく輸出国発行の許可証が必要。ヨーロッパウナギは付属書2に掲載された。
- 〔特集〕ウナギ・養鰻関連動向
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