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<熊本地震>観光地、復活期すGW 景勝地、温泉、パーク…

毎日新聞 4月28日(木)21時45分配信

 熊本地震では阿蘇や熊本城など全国的に有名な観光地が大きな打撃を受けた。影響は熊本県内の被災地にとどまらず、中国人ら訪日外国人でにぎわっていた九州各地に広がっている。観光関係者は先行きに不安を抱えながらも、29日からのゴールデンウイーク(GW)を復活の足がかりにしたいと考える。

 広々とした草原で馬が草を食(は)む景色が国内外の観光客を魅了してきた、阿蘇を代表する景勝地・草千里ケ浜。周囲の道路には亀裂が走り、草千里を見下ろす展望台も崩れた。昨年9月の阿蘇山噴火で火口周辺は立ち入り禁止となっていたが、約3キロ離れた草千里も観光できなくなった。

 阿蘇草千里乗馬クラブのスタッフ、山口祐さん(38)は「噴火以降、徐々に日本人客も戻り始め、大型連休を控えて明るい兆しが見えたところだったのに」と肩を落とした。

 阿蘇地域には、来場者数が年間約400万人に上るテーマパーク「阿蘇ファームランド」など多くの観光施設があるが、軒並み休園や休止を余儀なくされた。復旧の見通しが立たない熊本城(熊本市)も2015年度に約177万人が訪れた熊本有数の観光地だ。

 影響は県外にも広がる。理由がここ数年、九州の観光客の大きなウエートを占めていた中国、韓国人ら外国人旅行者の減少だ。中国政府は16日、ホームページを通じて九州エリアへの渡航見合わせを呼びかけた。中国の大手旅行会社、中国国際旅行社福岡支店は「政府の呼びかけや地震のニュースで、九州全体を被災地と捉えて過剰に反応したキャンセル例もあった」と話す。

 中国、韓国人らに人気の別府温泉(大分県別府市)の市旅館ホテル組合連合会は「GWは毎年満員状態だったのに、今年は半数程度」と嘆く。福岡入国管理局はGW中の博多港の出入国者数を前年同期比43%減と見込む。

 一方で明るい兆しも見える。日本人だけでなく、外国人にも人気の黒川温泉(熊本県南小国町)。大きな被害はなく、29軒ある旅館が順次営業を再開し、GWは大半が営業予定だ。黒川温泉観光旅館協同組合は「地震直後は一気にキャンセルが入ったが、連休中の問い合わせも増えている」と話す。

 福岡の観光地を代表する太宰府天満宮(福岡県太宰府市)も一時打撃を受けた。しかし、博多港に寄港予定のクルーズ船にキャンセルは出ておらず、3000人級の船が到着した28日も参道に中国人客があふれた。境内の茶屋の男性代表(53)は「個人の外国人客は減ったが、クルーズ船の客は好調」と言う。家族ら16人で上海から来た女性(30)は「日本の建物は頑丈だから、心配していない」と笑顔を見せた。

 動物ショーが人気の阿蘇市のテーマパーク「阿蘇カドリー・ドミニオン」は27日、水道設備などの復旧が終わったことから5月1日の営業再開を決めた。27日の九州新幹線に続き、29日には九州道も全線開通の見通しだ。阿蘇カドリー・ドミニオンの広報担当者は「阿蘇地域の中心産業は観光。来ていただくことが復興の手助けになる」と話している。【浅野翔太郎、尾垣和幸、田中韻、土本匡孝】

最終更新:4月28日(木)23時2分

毎日新聞

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