神田うの、梅宮アンナ、藤原紀香
メディアからの取材に対し、詳細を口外しないように言われているので、と出席者の多くがまごついていた乙武洋匡の誕生会だったが、その詳細を口外してくれたのが神田うのだった。「仁美さんの株も上がりましたけど、こんな仁美さんを射止めた乙ちゃんの株も上がったと思います」(デイリーニュースonline)とのこと。一方、毎年多くの芸能人が招かれる安倍晋三首相主催の『桜を見る会』の前日、「明日はビックイベントがある~、ネイル赤だとまずい訳」とInstagramに書いたのは梅宮アンナだ。当日の模様を「総理とお話しましたよ~(o^^o)」「何を話したかは秘密うふふ…」とブログに記している。需要は生まれるものではなく、自分から作り出すものなのだ。勉強になる。
最近は、自分で自分をPRするツールをいくらでも設けられるようになったので、それをどう使い分けるべきかのテクニックがあちこちで披露されている。その手の情報は見ないようにしているが、それでも目に入ってくる。藤原紀香が2014年にブログを開設、芸能人のなかでは比較的遅かったが、そのタイトルが「氣愛と喜愛で♪ノリノリノリカ☆NORIKA’s sensation☆」だと分かれば、ただならぬ気配を察知、実際に綴られる文章も軒並みハイテンションで、咀嚼することができずに苦笑いで逃避する人が「痛々しい」という言葉を残していったのだった。こんなことで再度需要を取り戻せるはずがない、と低く見積もったようなのである。
スケール感の大きさを把握させないほどのスケール感
こんなに色々とPRするツールがあるのに、今さらブログ開設かよ、と思った我々が間違っている。藤原紀香は自己PRのプロである。彼女は、2001年の時点でオフィシャルホームページを3つ使い分けていた。誰もが自由にアクセスできるサイト、ファンクラブ専用のサイト「ノリカネスク」、加入手続きが必要な「ノリカネット」の3つだ。情報拡散にTwitterを使い、日記風の文章をブログに投稿し、本音をFacebookに綴るような使い分けを、もう15年も前に完成させていたことになる。その成熟の果てに「ノリノリノリカ」を放出してくるsensation。大きなスケール感に戸惑うのではなく、(言葉としてはやや矛盾するが)「スケール感の大きさを把握させないほどのスケール感」が藤原紀香にはある。問われることもないだろうが「藤原紀香にあって、神田うの、梅宮アンナにないものは」との問いへの正答はソレだろう。
女性の美しさは外見ではなくて内面から……というフレーズはそこかしこに流れているが、男性として見聞きしていても、そこに含まれるメッセージは概ね説教臭く感じられる。藤原紀香は違う。ニューヨークで出会ったデザイナーに「服やジュエリーは着ている人の内側を表し、高める。だから、大事なのはデザインより、着る人の内面」と言われたのを受けて、「『♪ぼろは着てても心の錦。どんな花よりキレイだぜ』と水前寺清子さんの歌にもあるように」と、「いっぽんどっこの唄」の歌詞を引用する(藤原紀香『藤原主義』)。この歌詞の後は「若いときゃ 二度ない どんとやれ 男なら 人のやれない ことをやれ」と続いていく。女性の内面を指摘した流れを、構わず豪快に崩していく。スケール感の大きさを把握させないほどのスケール感、とは、具体的に挙げるならば、こういうことである。
紀香は多面体
熊本地震を受けたブログが炎上したり、「梨園の妻」としての作法がなっていない、といった記事などで逆風が吹いている。有り体に言えば、空気が読めない、自己評価が高いのは確かなのだろう。自ら率先して、「雑誌を開けば『女性の生き方の見本』のように取り扱われ、藤原紀香はファッションリーダーといわれ、最先端を走っているように見える」であるとか、「仕事で会う方やファンのみなさんから、ありがたいことによく言われる。『いつもキレイですね』」(『藤原主義』)だとか、「いわゆる世間がそう呼んだ“NORIKAブーム”といわれる2000年前後のとき。NORIKAへア、NORIKAメイクの女子たちが街にあふれていた」(『藤原魂』)などと書く。でも、高止まりしない。紀香が引っ張り上げた紀香を、私は常にそれを客観的に見ていたからねと、別の紀香が下げてくる。紀香は多面体。ある紀香を別の紀香が運んでいく、この状態が長いこと維持されている。
片岡愛之助と結婚し、本当に「梨園の妻」ができるのかという査定を食らっているわけだが、この多面体に気づかずに表面だけをなぞると、早々に「ふさわしくない」との査定に至ってしまうのだろう。しかし、それだけで掴むべきではない。『週刊文春』(4月28日号)の記事「紀香大炎上」を読むと、あまりにもパワフルな談話が淡々と報告されている。愛之助が隠し子へのDNA鑑定を要求したことについて、編集部が愛之助側に回答を申し入れるも返答はなし。しかし、紀香からはあった。それだけでも痺れるが、そのコメントが「今後も愛之助氏について勉強し精進して行きたいと思います」なのである。
「痛々しい」のみで済ませるべきではない
最近じゃ、男が不倫をしたら何故か「私にも責任がありますんで」と妻に謝らせる人もいるなかで、結婚前の議題とはいえ、夫を「愛之助氏」と呼び、何を「勉強し」、どのように「精進」するのかを明らかにしない形で不穏なコメントを手短に残す。こうして「ノリノリノリカ」のスケール感が、ことあるごとにまた一段と膨らんでいく。更なる多面体構造を作り出していく紀香。危害を加えてくるわけではないからといって、「痛々しい」との査定のみで済ませていると、どこまでも膨らんでいくスケール感についていけなくなる。いや、だから、ついていかなくたっていいわけでしょ、という逃避は正しい。そのかわり、ミスマッチが強固になればなるほど、ノリノリノリカは自由を享受し続ける。
(イラスト:ハセガワシオリ)
栗原康 × 武田砂鉄トーク&サインイベント開催!
【開催日時】2016年05月05日(木・祝) 開場18 : 30 開演19 : 00
【場所】本屋B&B
【入場料】1500円+ 1 drink order
【予約】https://peatix.com/sales/event/163070/tickets?tick...
【イベント詳細】 http://bookandbeer.com/event/20160505_bt/
窪美澄 × 武田砂鉄トーク&サインイベント開催!
【開催日時】2016年05月13日(金) 開場18 : 30 開演19 : 00
【場所】MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店7階喫茶コーナーにて。
【入場料】1,000円(1ドリンク付)
【定員】40名
【受付】ご予約が必要です。7Fカウンター、若しくは、お電話にてご予約承ります。
【お問い合わせ先】MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店 電話:03-5456-2111
【イベント詳細】 http://www.kawade.co.jp/news/2016/04/513.html