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  ▽徳島の在特会訴訟「人種差別」認定 

 「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らが6年前、徳島県教職員組合で罵声を浴びせた行動をめぐり、県教組と当時の女性書記長(64)が在特会側に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁は25日、「人種差別」にあたると判断し、436万円の賠償を命じた。判決の報告集会では、長岡京市の会社員、三嶋あゆみさん(35)が作った横断幕が掲げられた。「差別を許さない社会を」。強い思いが原告の背中を押した。

  長岡京の女性が支援

 高裁判決によると、在特会会員らは2010年4月、日教組が集めた募金の一部を徳島県教組が四国朝鮮初中級学校(松山市)に寄付したことを非難するため徳島市の県教組事務所に立ち入り、書記長の名を連呼しながら拡声機で「朝鮮の犬」「非国民」などと怒鳴り、その動画をインターネットで公開した。高裁は、一連の行動が「いわれのないレッテル貼り」で「リンチ行為」だと指摘。在日の人たちへの支援活動を萎縮させる目的があり、人種差別にあたると強く非難した。

 三嶋さんは大学時代、社会問題を考える授業やサークルで在日朝鮮人の人権問題に関心を持つようになった。知人から在特会による京都朝鮮第一初級学校周辺での街宣活動を人種差別と認めた訴訟のことを聞き、デザイン会社勤務で培った技術を生かして京都訴訟の判決内容を易しく伝える冊子のデザインを手がけた。冊子は朝鮮学校の行事や講演会で配布されている。

 三嶋さんは京都訴訟の報告集会で徳島県教組の訴訟について知った。「こんなに苦しんでる人がいるのか。差別を許さないという思いを京都から届けたい」。昨年10月、「ヘイトクライムに負けない 共生の教育を拓く」と書いた横断幕をデザインした。縦約60センチ、横約2・5メートル。明るい赤と丸みのある字体で、明るさと温かみをだした。余白には、四国朝鮮初中級学校の児童や卒業生らが、徳島訴訟の原告を応援するメッセージを寄せ書きした。裁判の報告集会などで掲げられている。

 両訴訟の弁護団に参加している冨増四季(とみますしき)弁護士(京都弁護士会)は「横断幕は人のつながりを示す象徴。原告とともに朝鮮学校の子どもたちも心を痛めていたはず。いい判決を獲得できてよかった」。

 25日の判決を傍聴した三嶋さんは「原告が6年間どれだけつらい思いをしてきたのか、伝わってきた。だれもが安心して生きていける社会になっていけばいい」と話している。

  ■京都朝鮮学校をめぐる訴訟

 京都朝鮮学校をめぐる訴訟 京都朝鮮第一初級学校(現・京都朝鮮初級学校)側が在特会の会員らによって「朝鮮半島に帰れ」などと街宣活動を受けて名誉を毀損(き・そん)されたとして、在特会側に損害賠償などを求めた訴訟。京都地裁は2013年10月、「人種差別にあたる行為」として新たな街宣活動の差し止めや約1200万円の賠償を命令。二審・大阪高裁は14年7月、在特会側の控訴を棄却。最高裁が同12月、在特会側の上告を退け判決が確定した。