しかし、サンフレッチェの企画広報部担当者は、呆(あき)れた様子でこう反論する。
「8日に受け取った資料は、我々の発表に先回りするかのように、2月19日に作業部会が突如開いた会見で発表したものです。だから、我々もすでにその資料は入手していました。しかし、そこには各候補地でスタジアムを建設する際、どこからいくら調達するのかという金額さえ記載されていないし、旧市民球場跡地案の収容人数は3万人のまま。資料を持ってきた作業部会の方にそれを尋ねると、『3万人の収容はもう動かせない』と言うんです。
そんな相手に我々のプランの詳細を渡しても、どのように利用されるかわからないし、そもそもサンフレッチェがどんなスタジアムを建てたいのかについては、データ的な裏づけも含め、ホームページ上ですべて公開しています。これ以上、何を教えろというんですか?」
この堂々巡り、いかに決着をつければいいのか?
「行政の側は、なぜ旧市民球場跡地案を頑(かたく)ななまでに排除しようとするのか、逆になぜ問題が山積みのみなと公園にスタジアムを建てるべきと考え、そのスタジアムは具体的にどのようなプランで造られるのかについては何も発信していません。行政側は自分たちのビジョンをはっきり示し、堂々と論陣を張ってサンフレッチェと渡り合えばいいじゃないですか。密室での審議ではなく、県民、市民の誰にでもわかる、オープンな議論にしてもらいたいんです」(前出・中野氏)
幸い、風向きは変わりつつある。サンフレッチェ案の発表後、どうやら県庁や市役所にスタジアム建設に関する声が続々と寄せられているようで、作業部会の姿勢が以前とは違ってきているのだ。
「3万人という収容人数にサンフレッチェさんが不満を抱いていたことは我々も認識しています。それに対して作業部会の側が3万人にこだわっていては、いつまでも話が平行線なので、サンフレッチェ案の情報提供をしてもらった上で、柔軟に対応したいと考えています」(県・都市圏魅力づくり推進課)
「せっかくスタジアムを造るのなら、皆さんに喜んでもらえるものをと行政の側も思っています。ギスギスした対立の構造はこちらも望んでいません。サンフレッチェさんと一緒にやっていきたいんです」(市・スポーツ振興課)
となると、残るは行政トップの決断のみ。4者会談の実現に向け、どうする、湯崎英彦県知事? どうする、松井一實市長?
(取材協力/ボールルーム)