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この生活いつまで 体調不良相次ぐ

被災から8日間階段の踊り場での避難生活を強いられた(左から)川端芙美子さん、美枝子さん、義弘さん=熊本県益城町の保健福祉センターで2016年4月22日、須賀川理撮影

 熊本地震で住宅に被害を受けた被災者の7割が避難生活の終わりにめどが立たないことが毎日新聞の100人アンケートで明らかになった。地震発生から28日で2週間。食料などの物資は避難所に届くようになった一方で、自宅を失った多くの被災者たちはプライバシーや寝床を十分に確保できていない。先行きの見えない中、体調を崩す被災者も相次いでおり、生活再建へ向けた道のりは長い。

 「家がぺしゃんとつぶれてしまってね」

 震度7を2回観測した熊本県益城(ましき)町の川端義弘さん(85)は、約600人が避難する保健福祉センターで涙を浮かべた。

 半世紀暮らした平屋建ての我が家。14日の最初の地震は持ちこたえたが、自宅前で妻芙美子さん(76)と次女の美枝子さん(53)と車中泊していた16日未明の「本震」により目の前で崩れ落ちた。その日の夕方、避難所となった福祉センターを訪れると、中はすでに避難者であふれ、踊り場にしか寝床を確保できなかった。

 体を「く」の字に曲げ、手すりにへばりつくように寝た。消灯後もトイレなどに向かう人がすぐそばを上り下りする。8日後に2階に新たなスペースを見つけたが、そこも階段を上った先の廊下。関節や筋肉がこわばり、芙美子さんは持病の腰痛が悪化した。歯のない川端さんは配給食の消化に胃薬が欠かせず、妻と娘の目にはやせてきたように映る。

 美枝子さんはアンケートへの回答で、「仮設住宅への入居」と「余震の終息」を避難生活の終わる条件とした。家の建て替えをしたいが、先立つものを確保できるか分からず、時期を見通せない。「生きていればいいこともある」と自らを励ますが、生活再建の具体的なイメージがわいてこない。

 震度6弱を観測した阿蘇市の元運転手、坂梨三郎さん(51)は、母春子さん(82)と市立一の宮小学校に避難している。体育館は別の避難者でいっぱいで、「余震の時にすぐに外に出られるように」と、あえて校舎の玄関に寝泊まりする。雨の夜は気温が10度近くまで下がり、毛布にくるまる母の体調が気がかりだ。

 屋根や壁が損壊した木造の自宅は修理すれば住めると思うが、阿蘇の外輪山のふもとにあり、土砂災害の危険性があるとして19日、避難勧告が発令された。「余震と雨が収まり、勧告が解除されれば」。アンケートでは自宅に戻る条件をそう書いたが、27日も被災地に無情の雨が降った。

 避難所を運営する自治体職員の疲労も日に日に濃くなっている。震度7を観測した西原村の山西小学校で避難者の対応に当たる村職員の男性(27)は「職員としてここに残るしかない」とアンケートに使命感を語った。

 だが、山西小には高齢の避難者が多く、夜中も認知症の住民の世話が続く。睡眠不足と頭痛に悩まされ、全壊した自宅の状況を確認する暇もない。被災者の一人としてこう自問してしまう。「この生活はいつまで続くのか」と。【比嘉洋、浅野孝仁、津島史人】

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